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繁盛のために売らなくても良い商品を作る

宇宙一外食産業が好きな須田です。

通常飲食店のメニューは、お客様にご利用頂く為に作成するものですから、当然全ての商品を売るために作ります。

私もこの記事の中で、いかにして売上を取るのか、いかにしておすすめするのかをしつこいくらいにお伝えしてきましたが、今日は、逆に売らなくても良いメニューをあえて作りましょうというお話しをさせて頂きます。

今までお伝えしてきた内容とは真逆ですし、売らなくても良いとは、いったい何を言っているのかとお思いになると思います。

でも、売っちゃいけないと迄は言いませんが、売れなくても良い、売らなくても良いメニューをあえて作ることで、大きな効果を発揮することが出来ます。


以前、郊外のロードサイドのイタリアン業態のメニュー開発をお手伝いしたことがありました。

そのお店は、月商の60%以上を確保しているランチ帯の売上の底上げをして、より売上を高めて行きたいというのが狙いでした。

ディナー帯の集客に限界を感じていらっしゃるようで、ランチ帯をより強固なものにしようというお考えでした。

その案が正しいか否かはさておき、ランチ帯の売上を上げる方法を上げるために、現状を一つ一つ分析をするようにしました。

先ずターゲット分析ですが、何度もお伝えしているペルソナです。

ここではペルソナは明確でした。
現在、ランチ帯でご利用頂いているお客様の80%は近隣にお住いの30代から60代の主婦の方々でしたので、そのお客様の中から理想的なお客様をピックアップして決めました。

次に消費形態の調査です。


ABC分析を行い、Aランク商品は何なのか、その中から、販売個数でABCを出して、販売額でABCを出して、利益額でABCを出しました。

これにより、何が一番売れていて、何が一番稼いでいて、何が一番儲かっているのかを明確にしました。


次に、作業効率を検証しました。

商品提供に最も時間のかからない商品は何か、逆に最も時間のかかるものは何かをピックアップして、それら全ての商品を、今以上の提供時間の短縮は可能なのか机上で検証して頂きました。

具体的なキッチンオペレーションの再構築です。

よりスピーディーに提供するためにはどのような施策を行うのか、人員コントロールは、仕込みの見直しは、スピード化のための作業効率の再検証などを行いました。

最後に検証したのは、ホールオペレーションです。

ランチ帯のホールオペレーション現状と、課題点の洗い出し、人員の作業習熟度、解決課題などを明確にしました。

厨房の生産力が向上した場合、ホールの販売力は同等に上げられるのか、限られた時間内で商品を提供し切って消費の時間を確保しながら、より多くのお客様に本当に対応出来るのかを検証しました。


この一連の作業により、何を明確にしたかったのかと言いますと、ペルソナをより強固にすること、開発担当者は勿論の事、会社側にも共通認識を持って開発にあたってくれること、広義な意味でのお客様から具体的なペルソナ像にゴールを設定して、商品開発を行うことをご理解い頂きました。
次に、何が売上をとっているのか、利益は何が一番貢献しているのか、何が一番頼みやすいのかを理解していただき、消費の裏側にどのような顧客心理があるのかを検証して頂く基準を明確にしました。


数回に渡って検証作業を繰り返して行ったある時、社長が何かに気付いて面白いことをおっしゃいました、それは、

「ABCのこのAの商品だけを売れば、
他の商品はあってもなくても関係無いんですね! 
むしろこっちの商品は売らない方が儲かるんですね! 
今初めてこの一連の作業の意味を理解しました!」

3回目の会議の時だったと思います、やっと気付いて頂きました。

実は、ABC分析を正しく行えている企業は稀です。

販売数と売上と利益、この3つの要素でABC分析は行う必要があります。

どういうことかを説明しますと、
ある商品は販売数A、売上B、利益Bとなったとします。
この商品は多くのお客様がオーダーする商品で、オーダー数は圧倒的に多いですが、低単価な商品なので売上はそれほど大きくは無いですし、低単価商品なので利益額もそれほど大きな額ではありません。

一般的に、集客商品はこのカテゴリーになる場合が多いです。

次に、販売数B、売上A、利益Aの商品があったとします。
この商品はミドルレンジよりも少し高めの商品で、販売数はまぁまぁあり、単価が高いので売上には貢献しており、売価が多少高めなので大きな利益貢献を果たしています。

この商品が利益獲得商品となります。

このように、一般的な売上占有率のみのABC分析を行うことよりも、詳細なABC分析を実行することで販売数と販売額と利益額の関係が明確になります。

何で儲けていて、どの商品を改善すればより大きな利益が確保出来るのか、よりお客様に喜んで頂けるのかが明確になります。

この事例を踏まえて、これから今日のお話しの本質をお伝えします。

消費者の心理には常に比較することにより、ある特定の商品の価値を図りたいという心理があります。


比較理論に基づいた消費行動なのですが、他の商品と比べてその商品の価値を比較検討して、その商品を消費することで、自己の価値を認識するという心理が働きます。

こっちのランチセットは、この単品に何と何がプラスになっていて、どれくらいお得なのか、このセットとこっちのセットでは、どっちが楽しめるのか、これとあれではより満足感の高いのはどっちかなどと、常に比較しながらお客様はメニューを選んでいます

改めて感じてみてください、実はあなたも同様な感情と思考に従ってメニューを選んでいませんか!

知らず知らずに、経営者であり消費者であるあなたもそうしているはずですが、このことを認識して、自店のメニュー開発に反映させている方は稀です。

飲食業の経営者は、常に一番シビアな消費者である自分自身の消費動向と、その裏にある思考と感情を感じながら消費をすべきであると、私は常々感じております。


経営者はもっとこの感覚を研ぎ澄ますべきと感じております。

私自身も常に消費をするときに第三者的な視点で、思考と感情を感じながら生活しており、消費者の方々の一言や目つきや態度など観察しております。


ダン・ケネディは、クライアントから仕事のオーダーが入った時、先ず消費者としてそのクライアントの商品を体験して、同様にライバルの商品を体験して、同様のカテゴリーにある他の商品も体験し、徹底的に消費体験を行ったうえで販売戦略を検討したそうです。

経営者はこの感覚をもっと学ぶべき、養うべきであると思います。

又、消費者は併せて、その商品をオーダーすることにより、自分自身の価値観をも感じています。

良いと判断した商品を選ぶことにより、無駄使いをしなかった、損をしなかった、節約できた、より幸福度が高まったなど、より高い自尊感情を感じるなど、商品をオーダーすることによって自己価値を図っています。

ですから例えば、ママ友3名様がご来店すると、お友達の手前ちょっとだけ高めの商品を選ぶこともありますし、逆にちょっとだけお手頃な商品を選ぶことや、量が少なめで多品種で可愛く食べられそうな商品など、商品選択の基準がママ友との関係性と自己イメージにより影響されます。

商品選択には常に隠された裏の心理が影響しています。

何度もお伝えしている、「損したくない」「騙されたくない」「後悔したくない」、この三つの心理と紐づいて、自己価値の認識という心理もあります。


ですから、この消費者心理を理解して、あえて売らなくても良い商品、売れなくても良い商品を作ります。

私は、“見せメニュー”という言い方をしますが、見せるだけが目的のメニューをあえて作ります。

これは、ある商品を比較検討する際の対象となる、見るだけの商品のことを指します。

例えば、パスタセットを3種類用意したとします。
パスタセットAは¥980、パスタセットBは¥1,280、パスタセットCは¥1,680とします。
圧倒的に出るのは、お分かりの様にパスタセットBです。

この時の見せメニューは、パスタセットCです。
Bに対して、Aは¥300安くCは¥400も高い設定です。
Bを基準に考えると、Aは内容的に見劣りするようにし、逆にCは豪華すぎる内容にします。

これにより、一番価格と内容のバランスがとれていて損をしない、後悔しない、お得感が強い商品はBとなります。

なぜ、見せメニューがAではなくCなのかというと、価格訴求のお客様はAのオーダー率が高まります。
ランチを¥1,000以内で納めたいというモチベーションは常に存在しますので、Aは決して低くはないオーダー率になります。

Cは¥1,500を超える価格にすることで、1,500という数字が持っている心理的なハードルも関係して最もオーダー率が低くなる商品となりますので、見せメニューはCとなります。

Cを見せることで、意図的に¥1,000超えのBは販売しやすくなりなります。

Aに対して、たった¥300プラスするだけで、ここまで充実するなら満足度が高まるという心理が働いてBのオーダー率が高まりますが、同様に、Bに対して¥400のプラスは心理的ハードルが高まり、オーダー率は低くなります。


これらの施策によって、どのようなことが発生して、売上と利益にどう影響するのか、顧客心理にどのような影響を及ぼすことが可能なのか、意図的なメニュー戦略とはいったいどういうものなのかを、次回の記事で詳細に解説したいと思います。

因みに、事例でご紹介したイタリアン業態は、この理論を導入して、ランチ帯の売上が120%になりランチ帯の原価は1.5%下がりました。

そのノウハウを次回ご紹介させていただきます。

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