売上が下降する原因は、ほぼ間違いなくコンセプト疲労です
宇宙一外食産業が好きな須田です。
変化することって少し怖いですよね。
私自身も変化することに抵抗があります。
よく友人からは、「止まると死ぬんでしょ!」とか、「動いていないと落ち着かなんでしょ!」などと言われますが、本当は不精な方です。
休日は、靴を履くことを酷くためらいます。
要するに外出したくないということですが、靴を履きたくありません。
勿論、何処かへ旅行に行きたいとも思いません。
若いころ、子供たちがいたころは、家族旅行をしたこともありますが、普段から日本全国、時には海外までも飛び回っているので、旅行をしたいとは思いません。
ずっと家にいて、じっとしていたい方です。
さて、この変化ということは、相当に厄介な代物です。
経営者によって、この変化に対する捉え方はまちまちです。
ある方は変化を積極的に起こしていきますし、また違った方は現状維持を望みます。
これは現状が好ましい状況下か、そうでないかにかかわらず、信条としてなのか信念としてなのか、変化に対する思考と行動に違いがあります。
これは私の個人的な私見ですが、コンサルティングをしていてとても感じることは、好ましい状況にある経営者の方ほど、変化を望んでいるような気がして、好ましくない状況の方ほど、実は変化を恐れているように感じます。
不思議な感覚なのですが、上手くいっているのだから現状維持でもいいんじゃないかと思いますが、上手くいっている経営者ほど変化を望んでいます。
おそらく変化とは、進化と捉えているように思えます。
現状以上の何かを求めて、今以上の成長を求めて自ら変わろうとしています。
変化変容の大切さを知っているように感じます。
当然、経営課題はステージの上昇によって、新たなテーマがどんどんめぐってきます。
私もその昔若いころには、ある高見まで行くと、そのステージに行くと課題は全て無くなって穏やかな環境になるんだろうと思っていました。
しかし、現実は全く違いました。
実態は真逆で、扱わなければならない課題は多くなるは、内容はどんどん複雑化するは、管理しなければならない範囲はますます拡大していくはと、想像していた穏やかな世界とは全く反対の状況に落ちいりました。
本当に落ちたという感じ、そこにハマったという沼にでも落ちたような感覚です。
ある時、大阪からの帰りの新幹線のグリーン車で、尊敬する先輩経営者に遭遇したことがありました。
その際に、ご相談し教えていただきましたが、「須田君、何もなく穏やかになる時を教えてあげようか、それは今生を去る時だよ。 要するに、死ぬまでこのバタバタは続くからね。そうやって経営者は鍛えられていくんですよ。」と。
そうかぁ、そうやって成長するんだと理解が出来て、ホッとしたのを覚えています。
素晴らしい方でしたが、早々に今生を卒業なさっていきました。 私同様に外食産業をこよなく愛し、成長を心から望んでいた方でした。
さて、話を戻しますが、経営課題はいずれにせよ巡ってきます。
やって来ないことは、あり得ません。
そこで、問題はこの経営課題に対して、どのように対処対応するのかです。
ここでいうどのようには、具体的な戦略とか戦術、はたまた外部に委託するなどの手段のお話しではなく、もっと根源的な心情のお話しです。
順番どおりにめぐってきた経営課題に対して、どんとこい!と前向きに積極的に向き合うのか、もう勘弁してよ、またかよ、もういいよぉ誰か助けてよ~と、向き合うのか、この違いです。
向き合わざるを得ない状況になるまで放置して、これ以上行くと危険な状況で向き合うのか、早々に課題・テーマとして向き合って終了させるのか、自ずと組織としてスピード感も、経営者自身の器の広がり方も違ってきます。
かくいう私も出来ているのかというと、正直に申し上げますとほど遠い状況です。 経営課題どころか、日々の出来事に翻弄されている始末です。
実態はと言うと、偉そうなことを言えるような状況ではございません。 ここで懺悔したいと思います。
私のことはさておき、このように課題に対しての向き合い方で、状況の変化するスピード感は随分と違ってきます。
特に店舗経営になると、一層変化のスピード感は違ってきます。
ここからが今回の本題ですが、仮に現在店舗の成績が好調だとして、その状況下で変化は必要か否かということを少し考えてみたいと思います。
仮に現在成績が不調であるならば、変化を自ら仕掛けないと、この先業績が益々悪化することが想像できるので、何か抜本的な手を打つことはどなたでも想像できると思います。
では、成績が好調の時に変化は必要か否かということですが、答えは必要です。
理由は一つだけ。
消費者は、必ず飽きるからです。
老舗と言われる企業が、日本にはとてつもなく多く存在しています。
世界でもトップクラスみたいです。
そもそも2,500年続いてる国が日本以外にないことも、大きな要因のひとつでありますが、兎に角、素晴らしく多いということです。
100年以上の歴史がある企業が日本においては、4万社を超えているそうです。
毎年1,000社ペースで増えているそうです。
中小企業が日本を支えているのが、この結果からも理解できますよね。
さて、ではなぜ100年も経営が継続し、そのような企業がどんどん生まれてくるのでしょうか。
答えは、自ら変化変容を受け入れているからです。
外食産業においては10年生存率が10%未満ですが、ではなぜ外食企業は10年も持たなくて、他の業種では100年以上継続する企業がこれほどまでに多いのか、この違いを考えてみたいと思います。
多くの企業では、時代の変化に合わせて、もしくは翻弄されて変化せざるを得なかった時期があります。
大きな文化的な変動であったり、戦争であったり、産業構造の変化や、ビジネスモデルそのものが崩壊してしまったりと、それは激動の出来事がありました。
その時に自らの在り方を変えることによって、消費者に必要とされる企業であり続けたということです。
トヨタ自動車も前身は織物機のメーカーでしたが、時代の変化をいち早くとらえて自動車産業に進出しました。
創業時の出来事として銀行に借り入れを申し込んだときに「織物屋には金を貸すが、自動車屋には金は貸さない!」と断られたそうです。
この出来事が奮起となって今があると、逸話として残っています。
外食産業では、ある有名な羊羹がありますが、おそらく皆さんどなたでもご存じだと思いますが、昔、何代目かの経営者の方がインタビューを受けた時のお話しをされていましたが、これまでに数えきれないほどの味替えを行って来ましたと、その時々のお客さまが望む味に対応するために、幾度となく味を変化せて来ましたと。
それをやってきたから、現在があるんだと仰っていました。
都内に有名なラーメン屋さんがあります。
コロナ期間中も、流石に短くはなっていましたが、それでも行列をしている有名店です。
創業の方はすでに他界なさっていますが、この創業者の方が著書の中で、これまで何度も味を変化させてきた。
学んでは味を変えてみて、お客様の様子を見て、また変えてと何度も繰り返してきたと書かれていました。
これからもこの味替えは行っていく、それこそがウチが生き残っていける理由であると書いてありました。
どちらも有名なお店なので、わざわざ商品を変化させなくても生き残って行けるだろうと考えてしまいそうですが、実はどこよりも変化させていました。
理由は先ほどもお伝えしましたが、消費者は飽きるからです。
飽きるようになっているんです。
どれだけ好きな味でも、毎日毎日食べていると必ず飽きてきます。
実際には毎日そのお店に行って同じ商品を食べることは稀ですが、でも、たまに行く程度だとしても飽きてきます。
このわずかな飽きが積み重なってくると、徐々に離客が進行していきます。
何も手を打たないと、おそらく毎月10%程度常連客は去って行っていると思います。
かつて、大きなチェーンを作りあげた経営者の方が仰ってましたが、データを見ると常連客の10%程度は毎月離れていき、それと同等数の新規のお客さまが10%ずつ増えていくようだと。
このようなデータをとるところが、先ず凄いですよね。
でも、このデータからもわかるように、商品を進化させないと必ず既存客のある一定数は離客していきます。
これらを踏まえて、私自身の経験と合わせてお伝えします。
先ず、好ましい状況を自ら引き寄せている経営者は、どうも変化を進化としてとらえているようです。
逆に、好ましくない状況を創り出している経営者は、変化を冒険と捉えているようです。
冒険というよりも、踏み出してはいけない未知の領域と感じていて、一種の危険な賭けのように感じています。
当たるか当たらないかわからないの博打のように感じていて、行動が出来なくなっています。
好ましい状況を引き寄せている経営者の方々に共通している考え方は、この状況がいつまでも継続するわけがない、絶対に状況が変化するから、事前にそこに対処しようと考えています
このように、そもそもの考え方が違っています。
この考え方の質の違いから、引き寄せる状況が違ってきます。
では次に、消費者はどのように感じているのかを、検証してみたいと思います。
常に消費者は新しい体験、今以上の経験を求めている傾向が強いです。
初めてのお店で美味しい料理を食べて、素敵なおもてなしを受けて感動します。
すると、その店での体験が素敵なので、何度か通うようになります。
時にはお友達を誘って、パートナーに紹介するなどして、何度か通うようになります。
でもある日、また違うお店で違う素敵な体験をします。
前回同様に何度か通っているうちに、また違うお店で素敵なことに巡り合います。
もうお分かりでしょうか、消費者は常に新しい体験をしていますし、素敵な体験を望んでいます。
例として挙げたこのストーリーで、最初に素敵な体験をしたお店は、次の素敵なお店が出現した段階で忘れ去られてしまいます。
次に思い出してくれて利用してもらうまでは、忘却の彼方に忘れ去られてしまっています。
よく、お客さまがお店を利用しなくなる理由のトップは、なんとなく忘れてしまうからというのを聞いたことがありませんか。
この“なんとなく忘れ去られてしまう”原因が、次の素敵なお店の出現です。
恋愛とまるで一緒と思いませんか?
あれほど好きだった彼氏が、分かれて時が過ぎて新しい彼氏ができた途端に、前の恋愛を忘れるように。
女性を例にしたことには、格段深い意図はありません。
ただ、どうも恋愛の傾向としては、女性は切り替えるのが上手なようで、男性は引きずる傾向が強いようだと、物の本に書いてあったことの受け売りです。
本題に戻りますが、そうなんです、消費者は常に楽しい素敵な体験を望んでいるんです。
言い換えれば、いつものお店であっても、小さな変化を望んでいるんです。
いつもあるメニューは安心で大好きですが、でもそのメニューばかリを頼むわけではありません。
時には違ったメニューも、ある日のその時の気分は、違う商品との出逢いを求めていることもあります。
このように消費者は変化を求めています。
一方、お店の経営者は変化を恐れてしまいます。
理由は、新しい出会いを求める消費者に対して、経営者が感じていることは、一度お客様に認めてもらいOKが出ていることを、自分から壊すことはないと感じています。
この感情があるから、思考が変化しません。
実態は、ただ変化が怖いだけなんです。
お客さまに一度これでいいと答えをもらっているものを、なぜ自分から壊す必要があるんだと感じています。
ですから、変化を恐れて現状に固執して、変わろうとしません。
それが、現状が好ましくなかったとしてもです。
少ない数ではありますが、今、支持してくれているお客さまがいるので、変えたくありません。
限られた少ないお客さまに支持されている実態があるからこそ、変わりたくありません。
でも、その少数のお客さまだけの支持ではやっていけないにもかかわらず、変わることを拒み、もっと多くのお客さまに支持されようとはしません。
いつかこのままでお客様の支持が増えることを望んで、自らは変わろうとしません。
ですから、リニューアルする際に「今のお客さまも大事にしたい」と、ほぼ価値がいなく行ってきます。
そのお客さまと別れて、もっと素敵なお客さんとの恋愛に意識が向きません。
分かれた元カレをいつまでも引きずって、次の恋愛に踏み出せないようでいるようなものです。
飲食店の業績が下降する理由は、例外なくコンセプト疲労です。
かつてヒットしたコンセプトが、商品が、時代の変化と共にどんどん疲労していき、元気がなくなってきても、まだイケると思いコンセプトを見直しません。
そしてついには強制終了となります。
コンセプト疲労しているお店は、ほぼ全てが店舗も老朽化しています。
コンセプト疲労が原因で客数が取れなく、店舗収支が悪化しているので、借り入れに不安があり、設備投資が出来ません。
そんな状況の中、気が付くと近隣に新しい素敵なお店が出店してきます。
時代に合った魅力的なコンセプトで、美味しそうな商品を掲げて出店してきました。
すると、数少ない支持してくれていたお客さままでも、その新店に取られてしまいます。
それでもまだ、「これはオープン景気だ、少ししたら戻ってきてくれる」と、希望的観測を捨てきれません。
断言はできませんが、確実に言えることは、今までのお客さまが戻ってきたとしても、ごくわずかであり利用頻度は更に減少すると想像ができます。
そして最後には・・・ と、言うことになります。
消費者は変化を望み、経営者は変化を怖がる。
単純な思考の違いであると理解ができれば、お客さまの望んでいる“カタチ”に自分を合わせるだけでいいことが理解できると思います。
自分の概念ではなく、お客さまが何を感じているのか、どのようなことを望んでいるのかを感じていけば、自ずと答えは見えて来ると思います。