関西のお寿司
昨日買ったスーパーのお寿司。ネタが美味しかった。
さて、老人は、寿司の食通ではないが
昔のお寿司を多少知っているので、今日はその話を。
今のお寿司は、新鮮なネタを愉しむように作られているものが多い。
それでも、お持ち帰りの寿司は、少し時間がたっても良いので
”当日中にお召し上がり下さい”
と書かれている。昨日の寿司も当日中はそこそこ美味しい。
これが、奥さんにつれてゆかれる大阪激戦区の天神橋筋になると
美味しさも、ネタの良さも一段階上がる。ネタはとろける様で、酢飯も柔らかく、行列をつくって待つ価値が充分ある。
一流どころが揃って競い合った結果の進化は
しかし逆に、数時間経つと、不味い。奥さんが家に持ち帰った寿司はネタが水っぽく酢飯も崩れてしまっていた。
江戸前の進化は、すぐに作ってすぐに食べる、究極のインスタント食品になったと云うことだろう。
と、ここで終わらないのが年寄りの繰り言。
実は、関西伝統の寿司は、翌日美味しいように作られていた。
ご主人が宴会の帰りに、料亭の女将に持たされる箱寿司は、遅くなって御免ねの一言と共に奥さんの手に渡り
翌日、婦女子のお昼ご飯になる。その日にはすこし角がたつが、半日経った頃に丁度味が染みこんで落ち着いて、甘めの味が女子の怒りを抑える効果を期待する。
現在も大阪寿司を名乗る店はあるが、”当日中にお召し上がり下さい”のシールが貼られていて、不調法。
本当の関西伝統の味がする寿司は、伏見稲荷駅から鳥居の間にある。参拝ついでに買って帰ると良い。関西一円のスーパーのバッテラも、最近は握り寿司に合わせたのか酢がきつくなったが、たまに良いものをみかける。旅行者や転勤された方は、関西の味が故郷と違う事を確認して愉しまれると良い。
和歌山は古いものが幾つか残る。一茶の寿司の一半の折り詰めを買って、行楽の昼食にするのが父親は好きであった。夏のカンカン照りのなか数時間たっても食中毒を起こさない。これが保存食の名残を残す関西の寿司の魅力である。
また、和歌山の沿岸部の家庭料理として作られる鯖のアセ寿司も、今はお店で食べられる。あ、めはりすしは寿司じゃないのでご注意。木こり達が食べるお昼までカビが生えないように高菜漬でくるんだおにぎりです。
ここで少し蘊蓄。寿司は本来発酵食品であり、酢酸ではなく、香物同様に乳酸の少し甘い酸味が本来の味。だから、東西を問わず古い寿司屋の酢飯は砂糖を多くしたり酢に火を入れて酸っぱさを抑えている。
最後に乳酸発酵の寿司。これも関西及び北陸で食べられる。
本来は和歌山市ではなく、有田あたりの郷土料理だが、JR和歌山駅の近鉄百貨店でも食べられる。注意事項は、冷やすこと。常温に1日さらすと、独特の匂いがきつくなる。保存時は低温で塩水に漬けられているので、出した直後や冷蔵庫の中では匂いは少なく、初心者でも食べられる。(古慣れと呼ばれる少し溶けたものは地元民でも慣れてないと難しい)
滋賀で食べるのがベストだろうが、京都は東寺の弘法市でも冬に出ている。
日本海沿岸の冬の名物がいずし。味がまた違うので、是非ご賞味あれ。
奈良の柿の葉すしも本来は馴れ寿司だそうですが、今は売ってません。
ちなみに、古書にある本来の馴れ寿司は、鮎で、拙の知るのは岐阜。