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我思ふ Pt.125 過去の古傷11

↑続き

翌日の夕方、私とギタリストの薄気味悪い笑顔が写るプリクラを数枚と、手紙を同封した封筒に、私は切手を貼った。
そしてポストへ投函。
運良くこの日は翌日出張の為、午前で仕事を終え退社した。
だからこうしてゆっくりと手紙を書く時間まであったわけである。

偉そうに手紙を書く…なんざほざいてみたが、内容は忘れちったわ。
とりあえず、プリクラに写る笑顔と同じくらい薄気味悪い事を書いてた気がすんな。

脳汁出過ぎてガンギマリしているとしか思えねぇ事を書いたような書いていないような…。

まぁもう時効だろう。


「美結…。」

私は思わず声を出してしまった。
そして美結へメールを飛ばした。

「美結、今ポストに入れたよ。早く美結の元へ届くといいな。」

うん、今こうして書きながら我思ふ。
この時の俺ぁ間違いなくガンギマリ中だな。

「早く美結の元へ届くといいな」だと?

正気じゃねぇよ。
そりゃそうだろ?
正気の私ならこう書く↓

「いやー美結に写真送ってもーた。やべー、やべーよ。ツラ見て、無かった事に…とかないよね?ね?どうしよどうしよ!ね、ね、嫌いにならんといてネ?」

それが何?
「早く届くといいな」だぁ?
どんだけうぬぼれとんじゃ。

届いて惚れ直せってか?
どのツラのどの口がほざいてんだ?
大体おめe…

まぁいい。
時効だ時効。

一分経過しない内に美結からの返信が来た。

「わーい!!たける様!!あたしも送ったぁあ!!でも…可愛くないかも…たける様が嫌いな顔だったらどうしよう…」

うん、美結の方が大人であり、冷静な気がするな。

そして私はこの時、根拠は無いが自信があった。
間違いなく美結は可愛いと。
だからそのままをメールにして伝えた。

「美結、そんなわけない。美結は絶対に可愛いし、俺が嫌いな顔なわけがない。よくわかんないけど自信があるんだよ。」

なぁにを言ってんだかよ。
痛ぇ…痛ぇよ…。

これに対して美結からの返信はすぐには来なかった。
電話する約束の時間、夜八時まではまだ時間はかなりある。
私はその場で、プリクラを一緒に撮ったギタリストに電話した。
今日は木曜日。
明日ギタリストは大阪の彼女に会いにいくのだ。
少し話が聞きたい。

心境もそうだが、交通費や宿泊費と場所など現実的な事も聞いておきたい。
私の生息域から大阪までと、東北のさくらんぼ県までの距離はさほど変わらない…と、この時は思っていたのだが、実際どうなんだろ。
とにかく彼が仲間内で遠距離恋愛のパイオニアだ。
諸々聞いておいて損は無いだろう。

「もしもーし。」

相変わらず0.5コールで出やがる。

「なぁ、大阪に明日発つんだろ?」

「あぁ、明日だな。どうした?」

「少し会えねぇか?飯奢るからよ。」

「そりゃありがてぇな。」

「明日の準備はできてんのか?」

「あぁ、別に。明日やりゃいいから。」

「あ、そうなの?まぁいいや。んじゃ家行くわ。支度しといて。」

「あいよ。」

この後の会食は実に為になった。
そして楽しかった。
なんだ、俺…ちゃんと若い頃楽しい事してるじゃねぇか。
忘れない、忘れられないほど楽しい事してんじゃん。

この会食で私は知る。
遠距離移動は何も新幹線、飛行機だけじゃないという事を。


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