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「Crenshaw」by Katherine Applegate / レビュー
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Crenshaw
by Katherine Applegate
【作品情報】
ジャンル:Middle Grade(8~12歳)以上
#フィクション #リアリズム #ミドルグレード
出版:2015年(Feiwel and Friends)
ISBN:978-1250091666
キーワード:
貧困、親子関係、成長物語、空想の友達、友情、猫、ホームレス
【あらすじ】
貧困家庭に育つ少年と空想の友達の苦境の乗り越え方。
動物研究者になることを夢見る10歳の少年Jackson。両親の収入が絶たれたため、持ち物を売り、空腹が続く生活を余儀なくされたが、アパートの家賃が払えず、ついには家族全員でホームレスとなる。そんな時、少年の前に二本足で立ってサーフィンをする巨大な黒猫が目の前に現れた。過去に会ったことがある空想の友達だ。だが科学的事実しか信じない少年は、猫が空想の友達だということを受け入れられない。この猫は空想か現実かーー。家族は日常を取り戻せるのだろうか…?
【感想】
著者は映画化もされている「One and Only Ivan」というデビュー作でニューベリー賞を受賞したKatherine Applegate。そちらも心をギュッとつかまれる作品でしたが、本作も(より強く)つかまれる感じでした。
読書メモで書きましたが本書はカバーデザインがかわいくて手に取りました。ゆかいな猫との友情物語かと思いきや(それも遠からず…でしたが)、空想の猫がしょっちゅう現れるようになった時期の少年の葛藤が描かれています。現実に起こり得るお話で、子どもを持つ親としても身につまされました。時々現れるCrenshawは、何をしてくれるでもなくあまり役に立たないものの、コミカルに描かれていて、どこか少年の緊張を和らげているようにも感じました。
本作は多くのシーンで、「感情の抑圧」が少年に与える影響がもたらすものを真っ向から提示しています。少年はCrenshawを要らない、消えろと思ってるのですが、それも抑圧された心を自覚していない、自分の弱さを認めたら負け、みたいな少年の心理状況を反映しているのかなと思います。
児童書ですが付箋だらけになり、親としても勉強になるなと感じた一冊でした。
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【お気に入りの引用】
My parents were optimists. They looked at half a glass of water and figured it was half full, not half empty. (40)
What I remember most of all is Crenshaw, riding on top of our minivan. I'd stare out the window at the world blurring past, and every so often I'd catch a glimpse of his tail, riding the wind like the end of a kite. I'd feel hopeful then, for a while at least, that things would get better, that maybe, just maybe, anything was possible. (135)
【訳書情報】
邦題:「クレンショーがあらわれて」
著者:キャサリン・アップルゲイト(2019年)
翻訳:こだまともこ
出版:フレーベル館
ISBN:978-4577048306