星野リゾートを世界標準の経営理論で分析してみた
久しぶりの投稿になります。
今回は星野リゾートを分析してみました。
非上場企業のため、売上や利益などの定量的な分析や、IR情報からの分析が出来ず、難しかったです。
星野リゾートはGo Toトラベルを活用して、1度泊まったことがあるだけなのですが、分析してみると独自性の強い面白いホテルだということが見えてきたので、奮発して今度旅行に行く際には泊まってみたいと思います。
※各タイトルに振った番号は、世界標準の経営理論の本の中で章の番号になります。
1. SCP理論
・星野リゾート社長の星野 佳路氏は
コーネル大学で経営学を学んでおり、
SCP理論の提唱者マイケル・ポーターに影響を受けていると語っている。
戦略の基本概念はマイケル・ポーターの競争理論です。
生産性のフロンティアを達成し、トレードオフをともなう活動を選択しそれら活動間のフィット感を醸成する。
この理論に忠実であることを通して、競合他社に真似されにくいポジションを確保し、国際的に展開しているホテル運営会社が多く存在する中においても、収益率を高く維持しながら成長できると考えています。
戦略の基本概念はマイケル・ポーターの競争理論です。
生産性のフロンティアを達成し、トレードオフをともなう活動を選択しそれら活動間のフィット感を醸成する。
この理論に忠実であることを通して、競合他社に真似されにくいポジションを確保し、国際的に展開しているホテル運営会社が多く存在する中においても、収益率を高く維持しながら成長できると考えています。
・星野リゾートは、
日本の文化を現代風にアレンジし、
その土地の魅力(コンセプト)と掛け合わせることで、
独自のポジションニングを築いている。
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・例えば星野リゾートは破綻した北海道の星野リゾート トマム(現在の名称)の運営を引き継いだ。
もともとはスキーリゾートとして冬のスキーヤーを目当てとしたホテルだったが、雲海テラスを作り、従業員が発見した雲海という地元の魅力を活用することで、通年型のリゾートとして再生させている。
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3. RBV
・SCPの成立にはリソースの異質性と模倣困難性が不可欠だが、
この異質性を星野リゾートは実現している
一つがフラットな組織文化であり、それが現在の競争力の源泉です。
ケン・ブランチャード理論を踏襲し、社員一人一人の潜在力を引き出すチーム組織を目指しています。
それが、毎年新しい滞在魅力が現地から湧いて来る理由であり、集客力と顧客満足度を高く維持できるベースを構成しています。
もう一つのユニークな活動は、マルチタスクのサービスチームを志向し進化し続けている点です。
宿泊施設運営の生産性を高めていくためのこの手法は、労働時間が貴重な経営資源となる今後はさらに不可欠な要素になります。
マルチタスクはフラットな組織に依存し、フラットな組織はマルチタスクであることで維持される。
同じように補完関係にある活動を3つ選びフィット感を高めています。
これらの仕組みは、国際的な大手ホテル運営会社は決して真似をしてきません。
それは仕組みが機能しないと考えているからではなく、全世界に広がる運営組織でフラットな文化を今から醸成し、働き方をマルチタスクに変化させることは、得られるメリットよりもコストの方が大きいからなのです。
・星野リゾートは、
フラットな組織とマルチタスクを組み合わせたことで、
社員の潜在力や生産性を高めつつも、
他の企業に真似されない立ち位置を築いている。
6. 情報の経済学② エージェンシー理論
・100年続く同族企業であった星野リゾートを星野 佳路氏は継いでおり、
星野リゾートは所有と経営が一致する形になっているため、
株主と経営者の間でモラルハザード問題が発生しない。
・一方で同族経営のデメリットである、
一族による公私混同などの解決を図っている。
・所有と経営が一致しているという優位点を活かしつつ、
公私混同などの特有の問題を解決することが、
同族企業の経営のポイントになることが見えてくる。
星野社長は、事業継承後 社名を「星野リゾート」に改名し、組織内の一族による公私混同といった同族経営の悪い部分を正すだけでなく、経営方針や事業内容も大きく変革しました。
7. 取引費用理論
・星野リゾートはホテルの運営のみを担っている
施設を保有しないことで身軽な経営を実現し、
運営でお客様の満足度を高めることに集中できている。
製造業でいうファブレスメーカーに近い形をとっている。
・一方でホテルの施設そのものはホテルの特徴にもなり得るもので、
かつ施設のオーナー次第で運営を継続できない可能性があり、
取引費用が高くなっている。
・星野リゾートは2013年に星野リゾート投資法人を設立し、
施設のリート(不動産投資信託)を販売することで、
施設の所有権は一般投資家が持ちながらも、
ホテルの特徴出しや運営の継続リスクの低下に成功している。
19. モチベーション理論
・星野リゾートのスタッフはシングルタスクではなく、
マルチタスクを行っており業務に多様性がある。
また管理職は立候補制となっており自律性や有用性を感じやすい。
職務特性理論上はベンチャー企業のようにモチベーションが高まりやすい環境にある。
・星野リゾートは単に顧客を増やすや満足度を高めるではなく、
例えば「熟年女性のマルチオケージョン温泉旅館」などのコンセプトに基づき、
具体的な目標を設定しており、
ゴール設定理論上は従業員のモチベーションが高まりやすくなっている。
23. センスメイキング理論
・星野リゾートでは各ホテル毎にコンセプトがある。
そのコンセプトの作成に従業員自身がかかわりじっくりと話し合うことで、
従業員が深く腹落ちしたコンセプトが生まれて方向性が明確になり、
モチベーションも高めることができる。
コンセプトは、経営層が決めるのではなく、現場の従業員が主体性を持って決めることを重視されています。
例えば、2009年に運営を開始した「タラサ志摩」では、従業員の半数が参加したコンセプト委員会を設置し、結論が出るまで 7ヶ月を要したこともあったそうです。
これには 星野社長の考えとして、「従業員がコンセプトに共感していれば、そのコンセプトを実現しようと、自ずと"モチベーション"も上がるため、従業員がコンセプトを決めるべきだ」というものがあります。
これは、アメリカの経営学者ケン・ブランチャード氏とシェルダン・ボウルズ氏の書籍「1分間顧客サービス」の記述に基づいたものだそうです。』
・現在でこそ星野リゾートのブランド価値が高まり、
モチベーション高くコンセプト決めを行っていると思われるが、
ノウハウが確立するまでは苦戦していたと思われる
逆に難しいからこそ競争優位性につながっている。
32. レッドクイーン理論
・日本の旅館業界は、バブル期に厳しい競争にさらされ、
団体旅行客の獲得に向けて大型化などに邁進していった。
しかしバブル崩壊後に個人客中心の時代が来ると、
その新しい競争環境に適応できず、
大型化への投資が重荷となって苦しんだ。
ガラパゴス化の一種と言える。
・その中で星野リゾートは競争の軸を変え、
新しい環境に適応することができた。
●所感
・サービス業と経営理論は縁遠い気がしていたが、
経営理論通りに経営すれば業種は関係がないことを、
星野リゾートは証明した。
・星野リゾートというとおしゃれで高級なイメージが先行していたが、
その裏にあるコンセプトづくりや、リソースの異質性づくりがバックグラウンドに見えてくる。
・継続的なファン化を目指すためには、
小手先のおしゃれやマーケティングだけではなく、
会社として組織として取り組んでいくことが必須だということが学べる。
・星野 佳路氏はSCP理論の提唱者のポーターの影響を受けたそうだが、
リソースの重要性を体現したことで、図らずもバーニーのRBV理論の裏付けとなっている。
これはSCPとRBVのどちらが大事ということではなく、
SCPを成立させるためにRBVが大事だということを示す好例である。
・理論に則って経営を行っているという意味では、
キーエンスとは近いが、方向性は大きく異なっている。
言い換えると表層的な打ち手を見ると両社は大きく異なるが、
背景の理論的な考え方は共通しているといえる。
・星野 佳路氏のリーダーシップについても分析したかったが、情報が集まらず断念した。
社長以下はフラットなティール組織になっていると推察される。
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HAMACHIという活動を始めました。 まだ整備中ですが、良かったら覗いて見てください。 http://hamachi.life/hamachi-ssg/