Sony復活を世界標準の経営理論で分析してみた

前提

・純利益推移
2012年:4,550億円の赤字(4期連続、累計9,000億円)
2021年:1兆1,718億円の黒字
https://www.nippon-num.com/corporation/electronics/6758.html
・2012年に社長に就任した平井社長の功績が大きいとされる
・テレビ事業の別会社化、パソコン事業の売却を実施
 商品販売後も、継続的に収益を上げる「リカーリングビジネス」
 ゲーム、音楽、映画などのソフト分野で確立した。

1. SCP理論

・2012年当時のソニーのエレキ事業は完全競争状態にあった
 パソコン事業は売却し、テレビ事業は高級路線に絞ることで、
 完全競争状態から脱することに成功した。
・4Kや有機EL市場ではNo.1のシェアとなっており、
 映像処理や音、UIなどに優れている。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2202/08/news066.html

2. SCPのフレームワーク

・2012年当時のテレビ事業は数を追いスケールメリットでコストで差別化する戦略をとっていたが、
 目標販売台数の半数もいかないこともあり、失敗していた
 ジェネリック戦略上は、コストで圧倒的に勝っているときのみ、
 コスト主導戦略は追求可能となっており、
 そうでない場合には差別化戦略が大事となっている
 こういった理論的背景を踏まえて差別化戦略へ移行したと思われる。


4. SCP対RBV

・家電業界の競争の型がチェンバレン型から移行していく中で苦戦していたソニーは、
 自らの競争の型をずらすことで復活した
・例えば参入障壁の高いIO型のゲームビジネスでは、
 買収などにより自社製のソフトを増やしさらに参入障壁を高めた
 それと同時にSeed Acceleration Program(SAP 現Sony Startup Acceleration Program)を
 スタートさせ不確実性の高い時代に試行錯誤でビジネスを進めていった。

7. 取引費用理論

・テレビ事業では、取引費用理論に基づき体制の刷新を行っている。
 事業全体を端から端まで、分解して分析し、
 最も大きなコストを占める液晶パネルを複数の企業から調達する機動的な体制へと転換した。
 さらに高コスト体質の海外販売会社の見直しを行っている。
 これにより大幅なコストダウンを実施することができた。

10. リアルオプション理論

・音楽事業での経験からリアルオプション理論的な投資戦略が実行されたと思われる。
 「レコード会社が新人を10組出したら、当たるのは2組。
  そんな、全部当てるような百戦錬磨のプロデューサーなんていない。
  だからチャレンジすべきだ
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2107/27/news075_2.html

12/13.知の探索・知の深化

・ソニーは若手エンジニアをスタートアップに派遣する仕組みをもっており、
 知の深化に優れた大企業の社員が、知の探索に優れたスタートアップでの経験を積めるようになっている。
ex. qrio,Safie

18. リーダーシップ理論

・平井社長は社員との対話を重視した、シェアードリーダーシップに近い形をとっていた。 
 これは組織内メンバーの知の交換が積極的に行われるようになるため、
 知識ビジネス産業において有効なリーダーシップである。
・SCE時代の人員削減の際には自らリストラを告げた。 
 また先述のSAPにおいても対話を重視した。
「若手社員を月イチペースでいろんな部門から10人前後集めて、お弁当を食べながら、好きに語ってもらっていました。」
https://japan.cnet.com/article/35138019/3/
・平井社長のリーダーシップは下記の通りであった。
 『第一に、リーダーはまずは聞き役に徹すること。
 第二に期限を区切ること。結論が出ない場合も、「いつまでに何をアップデートする」と決めなければならない。
 第三に、リーダー自身の口で方向性を決めること。そして一度決めたらぶれないこと。』
(ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」)


20. 認知バイアス理論

・平井社長は音楽事業、ゲーム事業を渡り歩いてきており、
 エレクトロニクス企業であったソニーの本流で出世コースをたどってきたわけではなかった。
 その結果過去の認知バイアスにとらわれずに意思決定を行うことができた。
・SCEの立て直しではボロボロの会社の再建を経験しており、
 修羅場体験を経験し、達観して判断ができるようになったと思われる。

23. センスメイキング理論

・2000年代に入ってからのソニーは、
 祖業のエレキが低迷し、金融事業で収益をあげるようになり、
 アイデンティティが揺らいでいた。
 ソニーらしさの解釈が異なり、足並みが揃っていなかった。
・平井社長はソニーのPurposeを「感動」として定め、足並みをそろえることに成功した。
 「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」
 https://www.sony.com/ja/SonyInfo/
・コンテンツが重視される今の時代にマッチしたPurposeになっている

30.組織エコロジー理論

・アニメや映画の製作会社の買収などにみられるように、
 平井社長以前からソニーはコンテンツを重視していた。
 コンテンツの時代が来るというメガトレンドを見ていたと思われる。
 先を行き過ぎたが、PlayStation3もホームエンターテイメントの中心になるように開発された。

●所感

・平井社長は社長を雲の上の存在とするのではなく、
 親しみやすい存在とすることで、社員の異見、情熱を引き出しソニーを復活させた。
 新しいリーダシップのリーダーの典型と言える。
 大量生産大量消費時代が終わる中で、求められるリーダーシップの形が変化していることを示している。
・スタートアップや小規模な企業では、
 ある製品やサービスがヒットすることで、
 それに引っ張っられて会社も成長軌道に乗るということがよくある。
 一方で大企業の再生、特にソニーのような多くの事業領域を抱えた企業の再生にあたっては、
 特定の製品やサービスをヒットさせても成長軌道に再び乗せることが難しい。
 企業風土や、組織、カルチャーを変えていくことが必要ということが見えてくる。
・EV参入やソニーのイメージセンサーといったホットな話題は分析しようとしてみたが、なかなか難しかった。

●参考資料

・ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」(平井一夫)
・「ソニー再生」で読み解く会社を立て直す社長の条件【テレ東経済ニュースアカデミー】【完全版】(テレ東BIZ)
https://www.youtube.com/watch?v=2P1ZtYzJk0s
・ソニー平井氏が実践した対話する経営者--麻倉怜士が聞くテレビ復活から今後のチャレンジまで(CENT Japan)
https://japan.cnet.com/article/35138019/
・経営者・平井一夫氏はソニーをどう復活させたのか 15年追ってきた記者が『ソニー再生』を読む(ITmedia NEWS)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2107/27/news075.html
・本当の復活と言えるのか? ソニー平井時代の業績を総括する(週刊アスキー)
https://weekly.ascii.jp/elem/000/001/632/1632619/
・ソニーについて(Sony)
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/
・”SONYは倒産する。しかし、そこから復活した理由があった。”ーー#世界最速で日経新聞を解説する男、南祐貴先生が解説するSONYの知られざる舞台裏(PENCIL by schoo)
https://pencil.schoo.jp/posts/6ybkZYq3


HAMACHIという活動を始めました。 まだ整備中ですが、良かったら覗いて見てください。 http://hamachi.life/hamachi-ssg/

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