おおむら
Twitterなどで公開した短歌、連作です。
第六回笹井宏之賞 応募作 顔の映っていない自撮りを何回かスワイプするだけの昼下がり 野良猫が一瞬だけは近づいて離れていった かぜのおとの巣 月マークが夜の晴れって知らなくてそんなのよくて肌の奥行き 小径で減速が早いのに漕ぐ使命感にかられない・アンド・ゴー 法のもとに 止まるべくして止まったりそうでなくても止まったりする 悪いことがあってパトランプが回る ノースリーブ 氷を齧る 高校の同級生と同じ名のアザラシが8秒で折り返す ぶどう狩り 抗うことが人生でニ回
晴れの日も折りたたみ傘折りたたむ 似た顔の喪服姿が乗車する 一人称治さずにいてほぐし水 スパゲッティ溢れている網タイツ 空もだんだん安全ではない ほぼ雨で眠っている曲線をなぞる 千里眼オレンジジュース飲み干して コンタクトいまだにひとつ嗅いでいる 夢だってわかっていたら含み綿 キョンシーがピアノを弾いて涙ぐむ 星占い一位になった爆弾魔 書道教室で行われる焚き火 舐瓜だけ真面目で少し抜けている 夢だった嵐由来のトウループ グッピーが同窓会に来ていない
嘘つきが歌ってくれた子守唄 火もなしに恋を再現する始末 目も脳も失っている掛け布団 背中から生えちゃいけない薫 鏡面にはだかが映る最後の日 家出からいちばん近い雨宿り 悉く一輪挿しかパラフィリア 夢で一起きて一ひき蚊を潰す 黒揚羽呼吸記号に間に合わず 美少年呼べばこたえる川回廊
走ったらいいのに がま口の財布が再度開く ひとりきりひとしきり蔓延る そんなに光に飢えているから 横断歩道が遠い ぜんぶがうっすらパフォーマンスのはずだ 歯医者が多い むりやり産まれたかもしれない
ぼんやりと船に絶望する僕ら 船は海を渡る乗り物 寂しい眠さは死にたさだから自動販売機で買うつめた~い水 行間を生き長らえた冬の鳥 腕を刻めど翼に遠く 無意識に選んでしまう生活に割れてくれない風船の匂い 嫌いにもならない破裂わたくしも少し大きなだけの雨粒 雨音のループに気づいてしまったら寒に銃剣刺すうしろから 同情で放り出された目の前のつるつるしているおっぱいあつい 痛くない切り傷のよう脱衣所で非喫煙者の咳き込みの音 照らされた範囲の熱に許されて電気ストーブ
血の星の肥大する光の中で切り刻まれた祈りの形 死んででも叶えたかった日常に "コーヒー" という苦い飲み物 酸素より重い分子のアノマリー 飾り気のない欠損事由 いつのまに縛られていて沈みゆく美しい日は過去の悪魔だ 半睡で悪魔の夢を手懐ける 消息不明、そしてその悪魔 チェンソーマンを読んだ。
シクラメン、カプセルホテルから出ると霊長類の狩りが怖いよ ハッハッハ、エターナルってかシクラメン ブレイブ・ブレイバー・冬の花 だよ 中学のジャージの名前しぶとく残る シクラメン、パジャマが欲しい 美しいとき笑っているのかシクラメン、根っからのいい奴なんだ 窓 シクラメン、手を繋ぐのは難しい("蒸散"を花っぽく言って気づく) シクラメン、もう泣かないよ 正しくは、君が死ぬことだって許すよ シクラメン、下着は触ったことがない なあ
気が触れたような風音 ビー玉の中昨日より綺麗に見える 日が落ちて誰かが闇を撃つまでの8を寝かせた無限のような 窓につま先立ちの魔女が洗濯物を嗅ぐのが映るのを見る ・・・ どうやって寝ようか迷う天井にむなしさの落書きが嵩んで 何もいない牧場 危ないな、どうすんだ急に俺が泣いちゃったらよ ラップバトルを聞き漁ったサーバログ すぐに鼻呼吸が苦しくなる 耳に水 アンチテーゼもありきたりになって1匹のキリギリス 脱いできたチアフルがまた冷めていく夜の見え
吊る用の首を1本持っていて歩行者天国に現れる 4次元の収穫祭にて揺るぎないメロウ・ゴースト 扉を開けて 駅前のウィザードとして夜のごとマクドナルドの新商品を 人間の仮装だろうか僕を見る群れがいつもより小雨のようで 1秒後、仮装じゃないんだ 誰も信じてくれないけど、 信じる間もないけどマジで
ややアイシテクノロジー 昼夜問わない生産は分業しよう 愛すべき無敵の怪物ジャヴァウォックやさしくはない決闘場へ 履歴書が母子手帳の国にあるお祈りメール ヴォーパル・ソード 頭痛が(で始めたせいで何もかも違和感だけを纏って)痛い どうぶつが着衣を始めたそのときに目覚めたようなそんな気がする 5W1H なんて素敵なカップルかしら......それとも暗号? 暇潰しが意地悪を産んだの ボイスアシスタントに美味を聞くような 朗読の、顔顰めても顰めても顰めたりないマ
はいはい同じ、同じだよ あくまでもお前が見てる世界だけどな 確実に存在するものが、存在しないことを演じる。それがアイドルだって わかったわかった、けどそれじゃ信じたぶんだけ偶像になってくじゃないか そう、存在感が強まるほど存在が薄まるんだ。だから会わない。 "知らない"や"目を合わせない"ってのが好きでそうじゃないと愛してしまうんだ本当は。
揺れる揺れる水面に花火残像の花火しずかに花火死にゆく ボーダーコリーの刺繍を胸にして昼に思うことを夜にも思う 熱病に罹患する夢 冬につららを舐めること夢にも思わない 高架下 手持ち花火を消す悪魔が命のギャップでわらわせにくる 109は大きなシンボル コンピュータグラフィックスにならない
あれもこれもバベル 青春バニーガールズはいつも笑顔で手を振る カミナリに怯えていないアイビョウが寂しいボクの腿を踏み抜く 瞬間 サイレンの音裏返って 喉に刺さって抜けない冷気 ドレスコード 土砂 シャイ 苺 ゴールの直前の空砲のリロード Burning eyes お腹が空いていてこのまま溶けてしまうだろうな 嘘冷蔵庫バニー 桜散らすため過ぎる季節にした不束 休みます バニーじゃないとバニーじゃない ライトアップされてる噴水 階段に座っていたら階段を登ってくる俺の
ほしをみるきみとほしをみる、ぜんぶぜんぶ、いやじゃないからだめなんだ ◇ぼくたちをとじこめているわくせいのどうしてかやるせないおんがく ころしてください、だれにでもたのめるおねがいは、きみにしかたのめない ◇しんぞうをとじこめているきんにくのどうしてもゆるせないおんがく ふたりはなりわいをみつけて、ふたりいがいのものをしり、ゆるし、たべる ◇よわむしをとじこめているぼくたちのゆうかんなおんがくのたましい ふたりはゆるされないことにきづき、たいじゅはかじつをみのらせた、ほ
80を過ぎた祖母が庭の紅葉で首を吊って4年になる。帰省先の岩手の実家には畑仕事や藁草履作りが趣味だった祖母のために設けられたプレハブ小屋がある。小屋の中でもテレビが見れるようにと地表200cm少しの高さに母屋から電線を走らせていた。この家を出て仙台で暮らすようになってから30センチ近く身長が伸びて、手を伸ばせば以前よりたゆみの増した電線に止まったコサナエトンボを捕まえることもできそうだと思った。電線とプレハブ小屋がなす弱々しい直角には大きな蜘蛛の巣が張っていて、気づかずに顔を
ビーサンを1年ぶりに出してみる なんかついてた石に命名する 伸びきったパーカーの袖口みたい どんな花にも日常が要る かごめ、かごめ、かごのなかのとりは。今日は微熱が早退理由 いくつもあるDisconnected 不安定な半径にかかるmusic Sorry, we're tourist too. 大きな大きな神社があると聞いた 僕が大きくなるからさ、そんな友達もういいんじゃないかな 本気で走ったら今抜いてった自転車くらい追い越せるんだって 良い映画だったと