上海お猫 医療・葬儀・介護 お財布事情
我が家には二匹の白猫がいた。正確には昨年2020年秋に1匹が亡くなり、もう1匹は糖尿病介護を受けながら、今日も自宅で機嫌よく餅のように寝転がっている。それぞれ享年14歳と、機嫌よく寝転がっている餅は15歳半。人間の年齢に換算すると72歳と78歳なので、すっかり人生の先輩である。人生経験では断然私の方が優っているのにやつらは年上なのだ。
奥が長介14歳で手前が菊次郎15歳半。見分け方は、無い。
人間同様、歳とともに高くなるのが病気のリスク。それと同時に飼い主が抱えるのは医療費の心配。いったいどのぐらいの費用がかかるのか、病院や症状によって医療費はさまざまだが、今回は我が家のケースをベースに様子を紹介してみる。
※記載されいてる価格は実際の状況を元にした参考価格です
長介の三臓器炎:医療費1
菊次郎と長介という二匹の白猫がゴロゴロしており、成り行きについては上記のリンク内容のとおり、よく分からないままうちに居ついてしまった。そのうちの一匹、長介が2020年春に異変が起こる。朝から水のような嘔吐を繰り返し病院で検査をすると、膵炎が原因による胆管肝炎が併発し胆管が塞がっている。猫に発生しやすい三臓器炎という症状である。
入院&対症療法で余命は半月、胆管にステント(金属管)を通す外科手術でも一般的に余命は半年ほどとなる。
入院から10日目、獣医と外科手術の判断をおこなう日に「胆管が通りました!みるみる回復してます!」と奇跡の連絡が入り、命と財布の安全確保にホッと胸をなでおろした。数日後に退院し、発生した費用は以下の通り。
・診察(複数回)
・入院(14日間)
・処方箋
・その他
合計:1万5千元(約25万7千円)
外科手術をおこなっていれば、医療費は1.5倍に膨れていたと思われる。コロナ禍で収入が激減している中、正直なところ痛い出費だったが、回復してくれたからまあいいかな、という感覚だった。
「居酒屋50回分か」
不思議なもので人は大金を居酒屋の回数で換算する。費用感が軽くなり不思議と気が楽になるのだ。だめだこりゃ。
長介の膵炎再発:葬儀費用
春の退院から元気に夏を越え、秋が本格化してきた2020年10月、膵炎が再発。至急診察を行い再入院するが非常に危険な状態であった。血液の状態を安定させ、三日目の山を越えれば回復の見込みがある状態まで持ちこたえたが、残念ながらここで14年間の生涯を閉じた。獣医師たちは懸命に何度も蘇生を試みたが、小さな心臓は再び動き出すことはなかった。死んだのである。数分間経ってからようやく希望ではなく事実として状況を飲み込めた。
ここからはすぐに葬儀の手配である。遺体を綺麗にしたら専用の袋に梱包、注文番号に紐付けられたQRコードをスマホで読み取り、依頼が完了したらQRコードを袋に貼り付け業者が引き取りに来る。引き取りの様子は写真をチャットで送ってもらえるので安心。遺骨は一週間後に業者が自宅へ届けてくれる。今回は単独火葬と足型を取ってもらった。火葬費用は以下の通り。
・単独火葬:1200元(遺骨引き渡し可)
・合同火葬:400元(遺骨引き渡し不可)
・記念品:数百元〜(足型などいろいろ)
足型はピッカピカで金メダルのようである。
日本側のクライアントとWeb会議の際に
「お!あそこに飾ってあるメダルはなんですか?」
去年亡くなった猫の足型です、ピカピカですよ(笑
「ああ…なんか…すみません…」
微妙な空気になってしまった。
菊次郎の膵炎:医療費2
一匹になりつつも相変わらずボテボテとしている菊次郎だったが、2021年春に長介と同様の嘔吐を繰り返し緊急入院。重度の脱水症状を起こしており検査をおこなったところ、またも膵炎である。慢性膵炎は中高齢以上の猫に発症しやすく、気づいた頃には重症化していることもあるため、特に注意が必要な病気である。
今回は三臓器炎にまでは至っていなかったが、生命活動が著しく低下しており、入院中に万が一のことが発生しても、病院側へ返金やクレームなど責め立てないよう誓約書へのサインが必要となる。
入院後一週間で危険な状態からは離脱し、膵炎によって発症した糖尿病のコントロールへ切り替えをおこなう。約二週間のコントロール期間中に、投与するインスリンの種類や量が決定し、入院20日目に退院。発生した費用は以下の通り。
・診察(複数回)
・入院(20日間)
・処方箋
・血糖値測定器
・その他
合計:1万8千元(約30万9千円)
そう、居酒屋60回分である。
菊次郎の糖尿病:介護費用
帰宅後、介護猫となってしまった菊次郎だったが、インスリン注射を行い血糖値コントロールさえ行っていればただの猫である。朝9時に血糖値測定採血と注射、13時に採血、21時に採血と注射。注射は慣れれば難しくはないが、低血糖症になるとコロッと逝ってしまうので、心の奥に常に小さなハラハラがつきまとっている。
これを毎日行うので長時間の外出が困難になったが、常時在宅勤務の私にとって大きな負担になることはなかった。フリーランス生活に感謝しつつも、これもしも会社員の人だったらどうなるのだろうと、存在しない他人の心配をよくしていたものである。
2021年7月以降は13時の血糖値測定が不要になり、12時間連続で外出できるようになったが、嬉しいことに忙しくて引きこもり生活である。
介護セットと費用は下記の通りである。
・インスリン注射:150元(300単位)
・採血用注射針:0元(50本)
・インスリン用注射針:190元(133本)
・アルコール消毒シート:27.8元(300枚)
・脱脂綿:8元(50g)
・採血用測定紙:500元(50枚入り)
一ヶ月あたりの費用は下記の通り。
・インスリン注射:0.5元×5単位=2.5元
・採血用注射針:0元×2本=0元
・インスリン用注射針:1.4元×2本=2.8元
・アルコール消毒シート:0.1元×4枚=0.4元
・脱脂綿:0.05元×4個=0.2元
・採血用測定紙:10元×2枚=20元
一日あたり合計:25.9元(約444円)
一ヶ月(30日)あたり合計:777元(約1万3千円)
一ヶ月あたりの費用が確変である。
私は日系の高級動物病院を利用しているので、相場としては高めとなっている。安い病院が良くないというわけではないが、診断結果があやふやなまま外科手術をおこなったり、不衛生な動物病院も存在しているため、お金で安心を購入しているような感覚である。
また、追加費用を支払わなければ遺骨は引き渡さないなど、悪徳葬儀会社も耳にすることがあるため、信頼できる病院から信頼できる葬儀会社を紹介してもらうのが最も安全なルートとなる。
中高齢化する前にペット保険に加入しておくのも一つの安全策かもしれない。
上海でのペットの医療費、葬儀費用、介護費用は高いと感じただろうか、思っていたより安く感じただろうか。状況によってはまとまった金額が急に必要になるため、中高齢ペットの飼い主は普段からの貯蓄を意識しておくと良いかもしれない。
また、私のように
コロナ禍仕事激減ペット医療貧乏症となった
飼い主の精神的な対処法として
大きな出費で心が酸っぱくなったら
「居酒屋の回数で換算」だ。