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成人の周期性片頭痛のお昼寝と発作の関連: 6週間前向きコホート研究


背景

 歴史的に見ても、臨床家は仮眠を片頭痛急性期の治療として認識してきた。しかし、仮眠と片頭痛発作の関連を研究した論文は少数で、また対象は小児に限定されていた。

 本研究では、以下を目的とした。

  1. 成人の周期性片頭痛(Episodic migraine; EM)の日記記述式・アクチグラフィーによる仮眠パターンの抽出

  2. 6週間にわたり、仮眠と片頭痛の頻度・持続時間・疼痛強度との関連の検討

 臨床的な印象から、昼寝の頻度が高いほど頭痛が大きくなると予想された。昼寝は睡眠障害の原因または結果である可能性があり、片頭痛患者は睡眠障害の共存が多いため、昼間の昼寝とその夜の睡眠結果との関連を追加的に検討した。


方法

 2016年3月〜2017年8月まで4ヶ所の施設で被験者を募集した。参加者は、一日2回の日記の記入と、6週間のアクチグラフィーの装着をお願いした。日記は特別の希望がない限りは、Research Electronic Data Capture (REDCap)にて電子ダイアリーを使用した。

 参加者は、研究開始1週間前にrun-in期間を設け、適切に日記・アクチグラフィーができているか確認した。


<介入基準>
・18歳以上
・3年以上の片頭痛歴と、研究開始3ヶ月前より少なくとも月2回以上の片頭痛発作がある
・英語が話せる
・インフォームドコンセントの取得

<除外基準>
・研究開始前3ヶ月間で頭痛発作が月15日以上ある
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群の高リスク、もしくは中等度・高度睡眠時無呼吸症候群の未治療
・慢性疼痛
・オピオイド使用中
・run-in期間に少なくとも4日日記の記載ができなかった


 126名がスクリーニングされ、101名が対象となった。アクチグラフのデータが21日未満だったため、3名が除外され98名となり、1名は夜勤があったため除外して、最終的な解析対象は97名となった。


<評価表>
・Headache Impact Test(HIT-6):点数が高いほど頭痛によって日常生活に支障をきたしている
・ピッツバーグ睡眠質問表(PSQI):6点以上は睡眠障害の疑いあり
・エプワース睡眠尺度(ESS):5点未満は日中の眠気少ない、5~10点は軽度、11点以上は日中の眠気強い


<睡眠評価>
 毎朝と毎夜、被験者は睡眠行動・時間・覚醒・使用薬物などの質問項目を含む日記の記載を求めた。
 アクチグラムは6週間、利き手ではない側の腕で24時間装着した。アクチグラフと日記データを用いて、総睡眠時間、中途覚醒(WASO)、睡眠効率(総睡眠時間/休息期間の割合)、睡眠潜時を算出した。


<仮眠:お昼寝>
 夕方の日記で「今日は昼寝をしたか、眠くなったか」(はい/いいえ)と質問し、「はい」の場合、「何回昼寝をしたか」、「最初の(2回目などの)昼寝は何時だったか」、「最初の(2回目などの)昼寝は何分だったか」によって昼寝を特定した。そして、日記に記録された昼寝時間から1時間以内にアクチグラフの活動カウントが10分以上低下した場合、技術者が手動で昼寝とした。昼寝の開始時刻と終了時刻は、アクチグラフから算出した。主睡眠時間外の活動量の減少や低下で、日記に昼寝の記録がない場合は、昼寝としてカウントされなかった。


<頭痛>
・頭痛の有無
・頭痛のはじまった時間
・頭痛が治まった時間、
・頭痛の持続時間
・最大疼痛の強さ(VAS0-100)
・薬の使用
・関連症状(例:羞明)
同じ日に2つの頭痛があった場合、頭痛の持続時間は最初の頭痛の始まりから2番目の頭痛の終わりまで、最大疼痛は報告された2つの痛みスコアのうち高いほうと定義した。



結果

 97名の参加者の平均年齢は35.1歳、88%が女性だった。平均月5回の頭痛発作があり、26%が予防薬を使用、平均HIT-6は60.9±6.0点と重度の分類である。
 13%でESSが10点以上と日中も強い眠気がある状態で、80%以上が研究中に少なくとも1回昼寝をしており、54%が1~3回/月、28%が4回/月以上の昼寝をした。

 4353日の調査日において、昼寝をした日は389日(8.9%)、頭痛の日は1059日(24.3%)で、平均8.2±4.7日/月の頭痛があった。
 1回以上の昼寝が記録された日は26日あった。平均昼寝時間は76.7±62.4分であった。昼寝は全曜日で見られ、最も多いのは日曜日(19.0%)、最も少ないのは水曜日(11.3%)であった。昼寝の平均発生時刻は14:40±3.3時、頭痛の平均発生時刻は12:48±5.3時だった。

 頭痛発生日の昼寝の頻度(75/817, 9.2%)は、頭痛がない日の昼寝の頻度とほとんど同様だった(279/3294, 8.5%: 95%CI 0.74, 1.3)。一方で、昼寝は頭痛がない日よりも頭痛2日目(35/242, 14.5%)に起きやすかった。昼寝と平均VASおよび持続時間に有意な関連はなかった。昼寝群と非昼寝群の比較では、昼寝群で発作日が平均1.1日多かった。

 昼寝翌日のアクチグラフと自己申告による睡眠特性を性別と年齢で調整して検討したところ、昼寝は総睡眠時間、睡眠潜時、WASO、睡眠効率の変化と関連しなかった。昼寝前夜の睡眠を調べた事後分析では、睡眠時間が1時間増えるごとに、その日の昼寝の発生確率が10~15%低くなることがわかった。
 自己報告によるWASO(中途覚醒)が30分増えるごとに、その日の昼寝の発生確率は11%高くなった。睡眠の質低下やアクチグラフで報告されたWASOと昼寝発生の間に統計的に有意な関連性はなかった
 
 

考察

 片頭痛のある成人97名を対象とした6週間の日記とアクチグラフによる前向き研究では、被験者は約9%の日に昼寝をしており、平均昼寝時間は1時間17分であった。参加者の約半数が月平均1~3回の昼寝をし、28%が月4回以上の昼寝をした。昼寝は頭痛が起きた2日目に最も多く(14.5%)、頭痛が起きない日に比べて頭痛2日目の昼寝確率は2倍高かった。
 また、観察期間中に1回以上昼寝をした参加者は、昼寝をしなかった参加者と比較して、1ヶ月あたりの頭痛日数が平均1.1日多くなっていた。

 調査期間中に少なくとも1回昼寝をすると、頭痛の頻度が高くなる結果だったが、平均昼寝開始時刻は平均頭痛開始時刻の約2時間後だった。これは、昼寝が頭痛を引き起こすのではなく、頭痛が昼寝をする可能性を高めることを示唆しているが、平均昼寝開始時刻が概日リズムと一致するため、このメカニズムの影響を強く受けている可能性がある。本研究の昼寝は頭痛が始まった後に起こりやすく、昼寝がその夜の睡眠特性を有意に悪化させることはないことが示唆された。


結語

EM成人を対象とした本調査では、昼寝の行動は米国の一般集団と同等であった。また、1日以上続く頭痛発作に対応して昼寝をする傾向が強かった。昼寝はその夜の睡眠特性には影響しなかった。


***自分メモ***
・7月の講演用に色々調べていたら出てきた論文
・お昼寝起きたら頭痛になってた!ってよく聞く気がしていたけど、実際は頭痛の方が先なのか
・アクチグラムという客観的な睡眠データを用いても、自己申告の因子の方が頭痛との関連が強いっていうのは、臨床を表している感じがあるし、納得感あり→だから患者さんのお話たくさん聞かなきゃだね
・なんとなくだけど、性差もあるんだろうなあ



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