映画感想「ぼくの家族と祖国の戦争」
こんにちは。先日は、名古屋のミニシアター系映画館の伏見ミリオン座まで映画を観に行ってきました。
「ぼくの家族と祖国の戦争」
この映画は第二次世界大戦の終わる前、ナチス・ドイツに占領されたデンマークの地に何十万人というドイツ人難民が押し寄せたときから始まり。
その後のドイツ敗北とデンマーク解放を迎えた混乱期におけるひとつの家族の物語。ドイツ人隔離が行われて収容所が作られ、多くのひとびと、特に子どもたちが感染症や飢饉で亡くなった事実を題材にしたヒューマンドラマです。
主人公のセアン少年の視線で物語が展開されます。敵国の難民に、初めは否定的な態度だったものの飢えや病気に苦しむひとびとへ次第に救いの手を差し伸べる母や父。そのために、壮絶ないじめに遭うセアン少年を助けたのはドイツ難民の少女でした。
ナチス・ドイツの兵士に親を殺され、レジスタンスに入って復讐を誓う青年の行動もまた正義のひとつであり。激しい復讐心を敵国の難民であるナチの記章を外さない医師、ハインリヒに果たしたあとで、それで良かったかどうか? を胸に変わっていく心情の描き方も秀逸です。
敵国の人間をどう扱うか、助けると敗北する相手に対し恨みを晴らすために反撃し復讐するデンマークの流れの背徳行為になり、自分たちも攻撃されるという重い主人公家族の選択。
それは、今の時代もウクライナやパレスチナや、アフリカ、アラブ圏などさまざまな地域の難民の押し寄せるヨーロッパの悩みとも重なります。
ハッピーエンドではありませんが、家族が生きて離散せずに連れ立って歩くラストシーンは、その時代多くの家族が離れ離れになり生きて会うこともできないゲットーやガス室に送られたユダヤのひとびとや、この映画のドイツ難民の、感染症や飢饉で子どもたちや大切なひとを失った家族のなかで……。
仕事を無くし国を出ても家族はみんないることの幸せ、デンマークのヒュッゲとは何かを思わずにはいられません。
重めのテーマも受け入れられる方にはおすすめの良い映画です。スターキャット配給・第一号がこの作品。いわゆる安全パイのハッピーエンドではない、どちらかと言えば考えさせられる、それでいて批判的ではありますがバッドエンドでもない渋めの作品の選び方。
今後の配給会社としての展開、楽しみです。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。