読書感想「マイクロスパイ・アンサンブル」
先日豊田市駅のくまざわ書店という、駅前の本屋さんで文芸ジャンルの週間ランキングに入っていて、デビュー作の「オーデュボンの祈り」から知っている伊坂幸太郎さんの今年4月に刊行された最新作をゲットしました。
昔の作品は「オーデュボンの祈り」「重力ピエロ」「ゴールデンスランバー」あたりをちょろっと買っていたくらいのニワカ伊坂読者なんですが、柴田錬三郎賞を獲得した「逆ソクラテス」でもう一度読む気になって、そのあたりに刊行された「フーガはユーガ」「クジラアタマの王様」「ペッパーズゴースト」そしてこの「マイクロスパイ・アンサンブル」を追いかけています。
「マイクロスパイ・アンサンブル」は猪苗代湖で行われる「オハラ☆ブレイク」という音楽&アートの祭典に、プレミア特典? として配布された小冊子に伊坂さんが書いていた小さな現代童話風のお話が元で、2015年から2021年までの7年間、一年に一度のイベントごとに綴られ、一年につき同じ主要な登場人物が物語に登場し、それぞれが現実の1年と同じようにお話の中でも1年があり、成長していくという筋立てになっています。
デビュー作からのことを思うと、「フーガはユーガ」はかなりデビュー作寄りの魂の苦しみの叫びに焦点をあてたところはいいものの、復讐譚なのでぎっしり重みがありすぎるかも、という一面もあり。「逆ソクラテス」ではそこが優しく柔らかい方向性に変わって、この「マイクロスパイ・アンサンブル」でもそのテイストが継承されているな、そして「フーガはユーガ」と「逆ソクラテス」で根底に流れている悲しみや苦しみの中に在る子どもたちや若い子たちへのエール、それがファンタジーとして見事に結実している作品と感じました。当方、優しく後味がいい作品が好きなので(笑)
また、音楽とアートのイベント「オハラ☆ブレイク」とタッグを組んでいるので、自分の世界だけの物語や語彙の構築ではなく、それこそアンサンブル、音楽者の作詞したことばや、猪苗代湖というイベント会場としての現実性の取り込みなど、小説と音楽やアートとのコラボを試みてもいる新しさもある作品です。
読んでスカッとできる伊坂節、そして元気をもらえる優しめな童話風のスパイアクションも加味されたファンタジーストーリー、とてもおすすめの作品です♪
※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーより麻木えまさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。