Vol.6 国内アパレルでも広がるBOPISの利用:WalmartのBOPIS事例
今回のBOPIS事例は、世界最大のスーパーマーケットチェーンWalmart(ウォルマート)を取り上げます。
BOPISはBuy-online-pickup-in-storeの略で、要はオンラインで注文して店舗で受け取るサービスを指します。小売業に従事されている方は、古くはclick-and-correctでも同じような構想があったのを覚えてらっしゃるかと思います。ユーザーの利用するデバイスがPCからスマートフォンに移行したことでこのトレンドは一層強くなりました。
※Patrick T. Fallon | Bloomberg | Getty Images引用
Walmartは、アメリカに本部を置く世界最大のスーパーマーケットチェーンであり、約60兆円(5591億5100万ドル)の売上を誇る巨大小売企業です。一時はECを展開するAmazonと比較されて、保守的な小売企業の印象がありましたが、近年は顧客接点改革としてデジタル投資を加速させています。その中心にあるのがBOPISです。CNBC(アメリカの経済ニュース専門放送局で、名前はConsumer News and Business Channelの略)によると、同社のBOPISによる売上は、2019年の72億ドルから2021年には204億ドルと3倍近く伸びており、これは2021年のアメリカのBOPISによる注文の25.4%を占める数字になっています。
重要な気づきとしては、Walmartではコロナ禍前からBOPISに取り組んでいたことが上げられます。以前のメールマガジンでも触れたとおり、アメリカでも2019年末の大手小売業500社のBOPIS提供率は6%に過ぎませんでした。コロナ禍を挟んで2020年末には43.7%に増加しています。Walmartは更に遡り、2013年には既に実店舗で試験運用を開始し、2017年には対応店舗を1000店舗にまで広げています。
つまり、BOPISが流行の言葉だから、BOPIS対応を拡大しているのではなく、あくまでも顧客中心にショッピング体験を改善しようとした結果、BOPISを進めていることになります。既に2013年段階から、消費者は来店前にインターネットを調べるのが日常的な行動になっています。インターネット上で店内の在庫を可視化するのであれば、そのまま店頭で受け取れる(BOPIS)ようにするのは、突飛な発想ではありません。
一方、アメリカのBOPIS市場の25%がWalmart1社に占められている事実も無視できるものではありません。この数字は、Walmartが占める、小売市場のシェア14%よりも大きいものになっています。既に消費者はスマートフォン上の情報で、店舗での買い物を決定するようになっています。
プラットフォームの消費者の囲い込みや、情報の表示領域の狭さから、一部のサービスによる寡占化をより招きやすいのも事実です。対抗する小売企業もバズワードに迷わされることなく、経済的なシステム開発やユーザー獲得を行う必要があります。
次号はAmazonが始めたBOPISサービス”Local Selling”を取り上げます。