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これまでの家づくりのメリット・デメリットと アフターコロナの注文住宅の考え方(14)

「躯体と内装を分ける」家づくりの実際の様子

今回のお二人の予算は3,200万円。物件(土地)の購入価格が取り壊し費用込みで1,580万円ですから、建物自体にかけられる予算は1,620万円しかありません。それでもリノベではなく、お客様が希望する新築の形が実現できたのは、繰り返しになりますが「躯体と内装を分ける」家づくりにしたからに他なりません。
コンセプトはローコストでありながらもZEHレベル以上の断熱性能、そしてDIYで変化できるように造作はシンプルに仕上げることです。
このコンセプトを元に、躯体工事と内装工事を分けて考えました。ローコストでもある程度の性能を求めようとすると、大手ハウスメーカーの販売する建売住宅を購入するのが常識でした。しかし、それでは間取りなどのデザインは画一的なものになってしまう。それが大手ハウスメーカーの建売住宅がローコストである最大の理由だからです。かといって間取りやデザインを自由設計にすると注文住宅扱いになり、ローコストでは難しい。しかし、躯体と内装を分けて考えることによって、ローコストでありながら自分の好きな間取りの家、自分らしい家づくりが可能になるのです。

お二人の家も、躯体部分は大型パネルを工場で作成し、基礎と建て方を専門の工務店に依頼しました。

大型パネルを現地まで運んで組み立てると、一日で玄関の取り付けまで終わり、ほぼ躯体が出来上がってしまいます。とは言っても、決して安普請ではありません。むしろ性能は良い。専門の工場で断熱材や窓も設置しているので、施工精度も非常に高いのです。
さらに第三者機関である「日本住宅保証検査機構(JIO)」に、基礎配筋や二次防水などの施工検査をしてもらいました。躯体と内装を扱う業者が異なると、万が一のトラブル時にどこに相談したら良いか不安という方もいらっしゃいますが。JIOに検査をお願いすることでしっかりとしたチェックが入ると同時に、10年間の保証も受けられるので安心です。

DIYしながら自分たちで仕上げていきたいということでしたので、内装部分はリフォームをメインにしながら建設業許可も持っている別の工務店に依頼しました。こういう工務店なら施工段階からDIYしやすいように仕上げてくれるので、お二人にとっても非常に心強いに違いありません。
ローコストで仕上げるために、設備にも気を配りました。今どきの水回り設備は基本性能もとても高いですから、なるべくシンプルでリーズナブルな設備を選びます。必要であれば、後からいつでも簡単に交換できるのですから。

このように、シンプルながらもしっかりとした性能の設備を取り付けました。

LDKを含めた各部屋の仕上がりも、このように非常にシンプル。ここまで仕上げておけば、後のDIYはプロ級の腕前がなくても大丈夫でしょう。
ここまでが、引き渡しの状態となります。着工から、屋根や外壁なども含めた躯体の仕上がりまでは1ヶ月。その後の設備や内装工事の完了までは2ヶ月。あっという間に性能の高い家が出来上がりました。

土地代が1,580万円で、建物の建設費用は外構費用を入れて1,600万円。見事にお二人の予算3,200万円以下で新築住宅を建てることができたのです。

「躯体と内装を分ける」のは理にかなった家づくり

ここで紹介したのは、「躯体と内装を分ける」家づくりの一つの事例に過ぎません。
当案件の依頼主は、自分たちでDIYして内装を仕上げたいという希望をお持ちの方でしたので、一般的な住宅の購入者像とはやや異なるかもしれません。
しかし、家づくりの基本的な考え方は全く変わりません。
土地に合ったシンプルで性能の高いデザインの躯体を工場で作り、専門の業者が現場で組み上げる。内装はリフォーム会社にお願いする。予算に余裕があるなら内装にこだわっても良いが、なるべくローコストにしたいなら、内装もなるべくシンプルにする。そして必要に応じて、少しずつ内装をリフォームしていく。自分でDIYできるならそうすれば良いし、できなければ、最初にお願いしたリフォーム会社と相談しながら進めていく。リフォーム会社も自分たちが手掛けた内装なので勝手が分かっているし、付き合いがあるためお互い安心して任せられる。結果として出来上がった家はシンプルだけれどもコスパがよく、性能が高くて住みやすい、となるわけです。

家族構成の変化や時代の変化など、家は長く住む間に変化していくものです。また将来的に家が負債になってはいけないと私は考えています。
日本人は家を建てる時に、どうしても自分好みに仕上げようと細部までこだわる傾向があります。一生で一番高い買い物なので仕方がないかもしれませんが、デザインなどにこだわりすぎると逆に売りにくくなってしまいます。日本人は趣味趣向が多様なため、自分が好きなデザインを他の人も気にいるとは限らないからです。個性的なデザインは、逆に家の資産価値を低めてしまう。
もちろん、ずっと住み続けるならそれでも良いかもしれませんが、将来はどうなるか分かりません。子どもたちがその家に住むとも限りませんし、自分たちも気が変わって別の土地に住みたくなるかもしれません。そうした時に備えるためにも、なるべく売りやすい家、つまりシンプルなデザインで万人受けする、かつ基本性能が高くて資産価値も高い(高く売れる)家を建てるのが、賢い選択と言えるのではないでしょうか。

「躯体と内装を分ける」新しい家づくりは何も特殊なものではなく、今の時代に合ったとても理にかなった方法なのです。

ローコストでも自分らしい家を建てたいなら、この「躯体と内装を分ける」家づくりを、私は自信を持っておすすめいたします。

次回が最終回になります。
「これからの家づくりについて」まとめです。

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