Hush hush ―孤独は自立の親友なのだろうか？

街の灯りは遠く彼方で小さな星屑になり、ただの輝きの断片にしか見えない。どれほど大きな星も離れてしまえばただの屑でしかないと気づく。車の窓から流れる東京の残像は、ただ遠ざかり静かに夜に溶け込んでゆく。

さよなら、と呟きながらも、心のどこかに絡みついて離れない、名前のない感情が静かに胸底に横たわっている。誰かと分かち合うのとは違う、それは自分だけが触れる静かな秘密のような安らぎだ。逃れるのではなく、むしろ抱え込むべきものだと思えてくる。

孤独は自立の親友なのだろうか。

心の奥に形を持たない何かが静かに応える。たった一人で立つことの不安とその裏側に潜む小さな安らぎ。それらが寄せては返し、手の届かない場所でさざめく波のように心を撫でる。

窓から滑り込む風が頬を撫で、遠くで揺れる海の音が耳をくすぐる。夜の残り香は遠くへと押しやられ、潮の匂いがそれにとって代わる。熱に浮かされた夜の記憶も、無邪気に過ごした時間も、今はただ潮風にさらわれて滲み、過去の奥底へと沈んでいく。

今、舌を湿らせるのは夜の甘い幻ではなく、醒めゆく朝のコーヒーのかすかな苦さだ。その苦みだけが、自らの足で踏み出す背中をそっと押してくれる。その一杯が、夜と朝の境界にそっと線を引く。

夜が朝に溶け出し、夢の影が淡い光に染まり始めた頃、ふと思う――どこへ行こうとも、孤独はいつもそばにいて、でもそれでいいのだ、と。

また一日が、何気なくドアを開けるように始まろうとしていた。