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中国の「やらかし」外資企業が許され始めている? 件
X(Twitter)に、こんな中国語の記事が流れてきました。
店舗数を減らすなど、中国市場で長らく苦戦していたファストファッションのH&Mが、EC大手である拼多多への進出を決めたり、ライブコマースを本格的に展開するなど、奮闘しているという話です。まだ結果はともなっておらず追い風は吹いていませんが、どうなんでしょうね、と記事は論じています。
これを見て僕は、「お、ついにH&Mが『許された』のか?」と思いました。
どういうことかというと、H&Mは2021年に新疆綿問題(新疆ウイグル自治区で生産される綿の栽培や製造に、現地住民の強制労働が関わっているのではないかという問題)に懸念を表明したことで中国の政治的な怒りを買い、国内で強く糾弾されました。
それに共鳴した民間のほうでも、一部でH&Mの締め出しが起こりました。たとえば地図アプリでは、H&Mの店舗が検索できなくなりました。騒動の直後、H&Mの実店舗はどうなっているのだろうと近くの店を探そうとすると、検索結果が表示されずに首を傾げたことをよく覚えています。
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その後、実店舗に行っても普通に営業してはいたのですが、お客さんはあまりいませんでした。もともとファストファッションとしてはユニクロに遅れをとっており、店舗数も当時すでに減少傾向だったのに、泣きっ面に蜂を喰らった形です。
で、そんなH&Mが中国での再起をかけていろいろやっているという話ですが、そもそも拼多多への出店やライブコマースの参入というのも、いまの中国においては少し前までのトレンドというか、かなり周回遅れな感じがします。逆に「いままでなんでやってなかったの?」という感じです。
これは推測ですが、たぶんこれまでは新疆綿の問題でいろいろと動きが取りにくかったのが、近年になってようやく自由な活動が認められるようになったのではないでしょうか。だから僕は「許された」という表現を使いました。
ちなみにいま、当時と同じ地図アプリでH&Mを検索すると、普通に近隣の店舗が表示されました。
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僕は定期的にH&Mの検索を試してみていたのですが、記憶では2022年ごろ(コロナ期間くらいまで)は結果が表示されない、つまりまだ「お許し」が出ていなかったはずです。
それがなぜか、最近になって「許された」ために活動を活発化させている、と個人的には読みました。
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もう一つ、中国において最近「許された」っぽい企業があります。それは、ファッションブランドのドルチェ&ガッバーナ(以下、ドルガバ)です。
個人的に、記憶にある中では中国で起きた最大級の炎上事件である、2018年のドルガバの人種差別騒動。
上海でのファッションショーに向けたプロモーション映像が差別的ではないかと物議を醸す中、デザイナーのステファノ・ガッバーナ氏による中国人への侮蔑的な内容を含むDMが流出。謝罪するも14億の人民の怒りは収まらず、ショーに出演予定だった有名人が次々にボイコットを表明。ショーは中止となりました。
それだけではなく、主要なECサイトからはドルガバの製品が一掃され、ドルガバの中国語名である「杜嘉纳班」でも検索しても何も表示されない、という恐ろしい事態まで起きました。
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これも実店舗には影響がなかったのですが(当時は万が一に備えて警備が増やされたりはしたらしい)、ECサイトでの「村八分」の措置は、その後もかなり長く(知る限りではこれも2022年まで)続けられていたはずでした。
しかし、これも先ほど検索してみると、ちゃんと結果が表示されました。
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そればかりか、少し調べると上海に新しい店舗ができるとか、同社が中国の若手デザイナーを支援するとうかいう話が出てきます。
これらについて中国のSNSで調べると、若干の否定的な反応はあるものの、特に大きな騒ぎにはなっていません。いつのまにかドルガバにも「許され」が訪れていたようです。
かように、かつて中国でやらかした企業が数年の時を経て、「許される」ということが起きているようなのです。
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なぜいまになって「許され」が発生しているのかと考えると、単純かつ安易な推測ですが、やっぱり不景気が関係しているんじゃないかなーと思ったりします。
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