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ミッションレポート:「嫁にバレずにケンタッキーの新メニューを食せ!」

我が家では基本的に、マクドナルドやケンタッキーなどのファーストフードが禁止されています。

嫁は超・健康志向で食べるものにかなり気を遣っており、普段の食事は基本的に自炊、調味料もほとんど塩しか使わないほどの徹底ぶりです。「外で食べるものなんて、何が入ってるか、どんな手順で調理されているかわかったもんじゃない。少なくとも頻繁に食べるものではない」とは、嫁の弁です。ジャンクフードなどもってのほか、というわけです。

その生活のおかげで、僕自身すごく健康に過ごせてはいるので、不満があるわけではありません。

しかし、もともと日本にいたときは不摂生の極みのような生活をしていて、ジャンクフードは大好きです。また、禁止(厳密には絶対禁止ではないが許可制)にされてしまうと余計に恋しくなるというものです。そのため、チャンスがあればこっそり食ってやろうか、くらいのことは考えてしまうのです。

しかし、我が夫婦は2人とも基本在宅で仕事をしていることもあり、そのようなチャンスはそうそう巡ってきません。僕は悶々とした日々を過ごしていました。

転がり込んできたチャンスの誘惑

しかし今週のある日、嫁が買い物があるといって、一人で出かけて行きました。

僕は多少の背徳感がありつつも、ついついアプリでケンタッキーのメニューを確認してしまいました。するとそこには、見たことのないバーガーと、これまた美味そうなタルトの季節限定商品がメニューに並んでいました。

画像はともに中国ケンタッキーの公式微博アカウントより

葛藤する僕。黙って行くのは良くないよな。そもそも美味しいかどうかわかんないし。でも中国のケンタッキーってタルトがうまいんだよな。いやいや、こんなもん食ったら朝のジョギングが台無しだ。でもせっかく中国にいるんだからいろんなもんが食べたいよな。noteのネタにもなるかもしれないし。いやでも嫁が帰ってきたらまずいよな。でもさっき出たばかりだから大丈夫か。よし、行こう。

こうして天使と悪魔の戦いはあっさりと悪魔が勝利し、僕はいそいそと着替えて、家の外に出て行くのでした。

「ミッション:嫁にバレずにケンタッキーの新メニューを食せ!」の始まりです。

ミッションの全貌

家を出ること5分。僕は最寄りのケンタッキーにたどり着きました。僕の住んでいる鎮は都会なので、すぐ近くにケンタッキーがあるのです。

僕は嫁が急遽帰ってくるリスクを考慮し、店に滞在する時間を少しでも減らすために、事前にスマホアプリから注文を済ませていました。現代文明さまさまです。テクノロジーは戦争や犯罪など人間社会の「裏」から発達するものだと言いますが、きっとスマホでの食事の注文も、こうして配偶者にバレずにケンタッキーを食べたかった誰かが作ったのでしょう。知らんけど。

与太話はさておき、これで店に辿り着けば、待ち時間なしで新メニューにさっそくありつける……はずでした。

しかし店に入って注文状態を示すモニターを眺めると、「準備中」を示す画面に僕の注文番号がありました。ありゃ、まだできてないか。まあそういうこともあるかと思い、僕は掲示板が見える席に腰掛けました。

しかし待てど暮らせど、僕の番号は呼ばれません。少し、焦りが募ってきます。

10分ほどが過ぎ、さすがにおかしいと思った僕はカウンターにいる店員のおばちゃんに「この番号なんですけど、まだできないですか?」と声をかけました。

するとおばちゃんは、「あー、このタルト、今ないんですよ。20分くらいかかります」としれっと言い放ちました。動揺し、一気に心臓から大量の血液が全身に駆け巡るのを感じました。このままだと、嫁が帰ってきてしまう。

「じゃあタルトはいらないから、タルトだけ取り消しにしてください」と慌てて言うも、それはシステム上めんどいからいったん注文を全部取り消しにしてから注文し直してくれ、と言われてしまいます。

なんなんだよと思いながらも、揉めてもしょうがないので、タルトを抜いたバーガーとコーラとポテトのセットを改めて注文する僕。もう一度腰掛けて、高鳴った鼓動のまま、掲示板に出てきた新しい注文番号を睨みつけるように見続けました。

しかし、これがまた出てこない。見れば、カウンターにコーラとポテトは用意されています。どうやらバーガー待ちのようです。しびれを切らした僕はカウンターからポテトとコーラだけが置かれたトレイをひったくり、「バーガーができたら持ってきてください!」と先程のおばちゃんに言い放ちました。

ポテトをモソモソ食いながら、コーラでそれを流し込みます。もともと嫁がいない時を狙ってつまみ食い程度のつもりできたのに、どうして、こうも落ち着かない気持ちでポテトを食わなきゃならんのか。

そんなことを考えていると、スマホにメッセージが届きました。嫁からでした。

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