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「疑わしきは罰せよ」が招く未来

先日、珠海市での自動車による無差別暴走殺人事件の発生を受け、国家主席の支持のもとに凶悪犯罪対策が最重要マターになったことについて私見を述べました。その中で、こんなことを書きました。

もっとディストピア的な予測で行けば、「問題を起こしそうな人」の行動を事前に制限するようなことも起きるのではないかと思います。経済的な保証のない人や、精神的に異常を認められた人はどこそこに入るのは禁止とか、外から扉を溶接して家から一歩も出られないようにするとか、そういう措置です。

そして文章を書き終え、公開の直前くらいになった時に、こんな情報が流れてきました。

他のニュースソースからも確認したのですが、どうやらこの画像は広東省のある地域で社区(地域コミュニティ)の管理層に回った連絡らしく、「八失人員」や「三低三少」に該当する人物の状況を報告せよ、とあります。

「八失人員」「三低三少」というのは、経済的な苦境にあったり、精神に不調のある人、社会的関係から疎外されている人を指すようです。要はそうした人々は、今回のような事件を起こすリスクが潜在的に高いので、前もって把握が必要ということなのでしょう。

「状況を報告しろ」というだけであり、そこに具体的な措置が取られるかどうかは分からないのですが、発想としては僕の予想通りのことが、早くも具体的な動きとして出ているということになります。

なんというか、中国についてイヤなことにばっかり勘が回るようになってしまったな、と自分でも複雑な気分です。

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どれだけ厳しい措置が取られるかはまだわかりませんが、この「疑わしきは事前に罰せよ」式の対策が強化されていくとして、それで本当に凶悪犯罪は未然に防げるのでしょうか?

……どうもそうではないのではないのでは、というか、むしろ逆効果ではないかという予感がします。

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