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「いじめられっ子」としての中国の自画像
「ウクライナ戦争の200日」という本を読みました。
最近はロシア関係でメディアにも多数出演している軍事評論家、Twitterでは丸の内炒飯OLとしても知られる小泉悠さんによる、ロシアおよび現在のロシア・ウクライナ戦争に関する対談本です。
さまざまなジャンル・業界の人々との多方面にわたるお話が展開されており、知的好奇心を満たしつつ、いまの戦争や世界に対する解像度を上げることができる、というおトクな本に感じました。それぞれの対談ごとにサクッと読めるようになっているのも、それほど読書家でない僕にはありがたかったです。
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たくさんの対談のなかでも特に僕が面白く読んだのは、翻訳家でテレビプロデューサーのマライ・メントラインさんと、中国関係を中心に活動しているルポライターの安田峰俊さん、そして小泉さんというお三方の対談です。
ロシアという国をめぐって、マライさんと安田さんがドイツと中国の視点を交えながら、今回戦争に向かったロシアが外の世界からどう見えているのかということを語るものになっていて、とても興味深かったです。
そして、対談内容の主旨とは少しズレてしまうのですが、僕がこの対談の中でいちばん印象に残ったのは、ロシアと中国が共通して抱える、西欧へのある種のコンプレックスやルサンチマンについて話が及んだ際の、安田さんによるこんな発言です。
(中国は、アヘン戦争以来の西欧へのルサンチマンを)まったく払拭できていません。客観的に見ると明らかに図体が大きないじめっ子の側なのですが、「大きな赤ん坊」(巨嬰国)と、反体制的な中国人自身が言うように、中国は自分の心の中の自画像が常にいじめられっ子なんです。
これ、本当にその通りだなあと思うと同時に、いまの中国の行動を読み解くにあたってとても重要なキーワードだと思います。
南シナ海に勝手にどんどん基地を作ったり、外交部のスポークスマンに諸外国への口撃をさせたりと、好戦的ないじめっ子そのものの中国ですが、その背後には大国として漕ぎ出したばかりの不安や、上述されているような西欧世界へのコンプレックスが強固に存在しています。
そして、そうしたコンプレックスを抱えながら、一方では「力こそがパワー」とでもいうべき、単純な力関係にもとづいて物事の序列が決まるという世界観のもと、経済的にも文化的にもこれだけ強くなったいまの中国は、なぜ世界から尊敬されないのかという矛盾を、世界に対して強く感じています。
これまでは、「強い」お前たちがさんざん俺たちのことを搾取し、いじめてきたじゃないか。でも、俺たちは弱かったから、仕方なくそれに従ってきた。それなのに、なぜお前たちは俺たちが強くなっても、まだ俺たちをいじめるのをやめようとしないんだ! ——これがおおむね、いまの中国に見えている自国と世界の姿です。
こういう世界観を理解すると、中国のやっていることが腑に落ちやすくなります。
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