中国の氷河期世代を家に縛っているのは誰?
今日は昨日書いたことの延長戦です。
親の意向で家にいる若者
昨日のマガジンの最後に、何をするでもなく就職を先に延ばしながら、留学の相談に来た20代半ばの子に「それで親は何も言わないの?」と質問した話を書いたのですが、いま考えればこれは愚問だった可能性があります。
というのも中国の親って、「絶対にいい会社に就職しろ」と圧をかけることはあっても、「すぐにでも就職しろ」ということはあまりないからです。
これも昨日書いたことですが、中国の人々のマインドは投資家的です。投資に大切なのが「資本をどのタイミングで、どこに投資するか」だとすれば、景況感が悪く好条件の仕事が得られない現在は、労働力という資本を市場に投入しても大きなリターンを得られる見込みがない。大環境が悪いと考えているのは、むしろ親のほうかもしれません。
さらにいえば、中国の親は子どもの教育も一種の投資として捉えている傾向があります。だとすれば、これまで手塩にかけていろんなリソースを投入して育ててきた「タネ銭」としての子どもが、それに見合うリターンを得られる仕事に就けないのであれば、それは投資の失敗ということになってしまいます。
だからこそ親たちは、さらにいいリターンを得やすいように更なる投資(=大学院や留学に金を出す)をしたり、とりあえずは家に置いて就職活動を続けさせたりします。
日本のように、「なんでもいいからとにかく働きなさい」と親がいうようなこともありません。
中国では日本ほど「昼間っから何もせずブラブラしている」みたいなことへの社会的なプレッシャーがないこともその理由かもしれませんが、それよりも親は子どもの仕事を「なんでもいいから」とはまったく思っていないことが大きいのではないかと思います。
それは上に書いたような投資としてリターンが見合っているかという問題のほか、仕事の種類に対する要求もあります。中国ではいわゆるホワイトカラーでない仕事や、肉体労働・感情労働のような仕事に対する偏見がものすごく強く残されています。
そのため、少し極端な言い方ですが、子どもが「間違って」その手の仕事に就くくらいなら、家でゲームでもしていてくれたほうがマシだ、というような考えの親が少なくありません。
そんな諸々を加味すると、若者が家にとどめ置かれているのは、むしろ親の考えによるところが大きいという可能性もあります。
いつかは壊れる共犯関係
かように中国の氷河期世代は、厳しい環境に出たくない本人の意向と、投資としての子どもから最大のリターンを得たい親の願望、その二者のある種の共犯関係によって「とりあえず働く」という行動を回避し、働くこと・社会に出ることを先延ばしにしているフシがあります。
もちろんそれは親・子ともに自由な選択の結果なので外野からとやかくいうことはできないのですが、やはりこれにも昨日の結論と同じように、本当にそれで大丈夫なのかというモヤモヤを感じてしまう自分がいます。
それは昨日と同じく、これから経済が大きく跳ねる可能性の極めて低い中国において、その選択には持続可能性がないのではないか……という点においてもそうなのですが、それとは別に、こうした親子の共犯関係がいつか壊れてしまう未来がありありと見えてしまうから、ということもあります。
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