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中国は「民主主義」ではないが、「民主的」ではある(かもしれない)話

今日も昨日のマガジンに引き続き中国に関するニュースを取り上げますが、こちらはまったく話題になっていない件です(少なくとも、X(Twitter)では誰も話題にしている人を見ませんでした)。

中国において、とある法律の草案が修正されたという話です。

修正されたのは「治安維持処罰法」という、現場の警察官が軽犯罪などを取り締まる際の対象を規定する法律ですが、去年9月に最初の改正案が出された時点で物議を醸していました。

批判の対象となったのは、「公共の場で中華民族の精神を損ねたり、感情を傷つける服装や表示を身に着けたり、他人に強制的に身に着けさせること」「中華民族の精神を貶め、中華民族の感情を傷つける物品や言論を作成、流布、宣伝、拡散すること」などに対する処罰を規定した部分です。

この「中華民族の感情」がうんぬんというのは本来、特に外交の場面などで中国が何かしらの非難や被害を被った(と中国側が主張する)際によく用いられるフレーズです。たとえば日本の公人が靖国神社に参拝することなどが「中華民族の感情を傷つける」行為にあたるとされます。

しかし、このフレーズが国内の法律に組み込まれそうになるや、いったい何が「中華民族の精神」を害する行為なのかが曖昧で、恣意的に運用されるのではないかという懸念が法律の専門家から出されました。それに追随して一般からのパブリックコメントも大量に集まり、立法側はこのフレーズを使わないということを決断せざるを得なくなりました。

中国の警察を含む治安維持部門は、ただでさえそのへんの人を「寻衅滋事罪」(騒動挑発罪)などといって適当な基準(浴衣を着てただけとか)でしょっぴいたりするので、人々も嫌気がさしています。

だからこそ「中華民族の感情」が警官の小銭稼ぎやポイント稼ぎに悪用される可能性に、すぐに思い至ったのでしょう。さすが中国人は、中国のことをよくわかっています。

他にもあるぞ、人民の怒りが政治を変えた例

ところで、冒頭に貼った日経の記事では「中国で国民から法案修正の要望が相次ぎ、内容の柱を改めるのは珍しい」とあるのですが、個人的にはそんなことはなく、法律の草案がパブリックコメントの段階で民衆の批判を浴び、引っ込められた例は他にも思いつきます。

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