鳥貴族はいますぐ中国に来たほうがいい
鳥貴族が台湾・香港に進出するというニュースが流れてきました。
これを見た僕の感想は、「なんで中国(大陸)には来ないの?」というものです。たぶん、鳥貴族がいまの中国に来たらめちゃめちゃ成功するんじゃないかと思うのです。
今日はそう思う理由を書いていきます。
コスパで無双せよ
中国の消費者がいま求めているのは、コスパです。その点において、日本の飲食企業は健闘しています。
たとえば上の記事で書いたサイゼリヤです。僕が行った店舗では、ショッピングモール内のレストランフロアで平日の昼間にもかかわらず、ガラガラの他店舗をよそに大繁盛していました。
ただ単に安いだけの食べ物なら中国にはいくらでもありますが、品質と値段のバランスが取れている、あるいは値段以上のクオリティを安定して供給できる外食チェーンというのはそれほど多くありません。その点において、長らく続いたデフレ社会で鍛えられた日本の企業は、中国の企業の先を行っています。
スシローもいま、中国で順調に店舗数を伸ばしています。僕の住む広東省では主要なショッピングモールにどんどん出店していて、しかもだいたいいつもお客さんが並んでいます。絶好調といっていいでしょう。
スシローの好調も、やはりコスパ重視になる中国においていち早く「寿司としては安く、しかもおいしい」というのをやったからです。
寿司を食べる習慣自体はずいぶん前から中国にもありましたが、中国の寿司屋はごく一部の高級店か、さもなければ変わり種の寿司ばかり出しているのに単価はやたらに高い(一皿25元≒500円とか)ところばかりでした。
その中でスシローは10元からのラインナップとそれに(いい意味で)見合わないクオリティで、他を寄せ付けない強さを見せています。コストコントロールのノウハウを持っているがゆえの強みでしょう。
鳥貴族もおそらく、そうした緻密なコストのコントロールで利益を伸ばしていった企業のひとつだと思います。そのノウハウを中国で発揮することができれば、未来からやってきた異世界転生ものの主人公のように無双できると思います。
「日式居酒屋」を駆逐できる
居酒屋という業態についても、一定の需要は見込めると思います。
街中にも、ショッピングモールなんかにも居酒屋風の日本料理屋が結構出店しています。一時期、中国では「孤独のグルメ」や「深夜食堂」などの作品のブームがあり、人々が日本の居酒屋カルチャーを知るようになったのに合わせて、多くの「日式居酒屋」が開かれました。いまはブーム自体は落ち着いていますが、ひとつの業態として定着しています。
それらの味やサービスのクオリティはピンキリですが、総じて値段は高く、「この味でこの値段かあ……」という思いをすることが多いです。
たとえば前に行ったこの若干怪しげな構えの店ですが、たしか嫁と2人でいろいろなものを頼んで250元(5000円)くらいしたかと思います。
居酒屋としては安そうに思いますが、僕ら夫婦は二人ともいっさいお酒を飲まずに普通に食事をしただけなので、それでこの値段か……という気分にはなりました。味もまずくはないのですが、決しておいしいわけでもなく、これなら他の店のほうがいいや、と正直に思いました(趣味である怪しい日本語が大量に収集できたので、食事とは別の意味で満足だったのですが)。
でも、そんな店でもお客さんはかなり入っていましたし、ちゃんと市場を持っていることがうかがえます。ここに高コスパの鳥貴族が殴り込みをかければ、かなりのシェアを取れるような予感がします。
ただ、中国の人々はそこまでお酒を飲まない(お酒を飲む需要は宴席などが主で、仕事帰りに同僚と一緒にちょっと一杯ひっかけて……というような習慣はあまりない)ので、おそらくは鳥貴族のようなフードメニューを激安で売ってお酒で利益を出すという利益構造のままだと、中国ではちょっと厳しいかもしれません。
ショッピングモールなどに入店して、家族連れなどに対応したうえで利益を取れるようにすれば、中途半端な「日式居酒屋」を駆逐できる可能性は十分あると思います。
反日リスクもそこまでではない
ほかの懸念点としては、いまの中国に広がる反日ムードとそれにともなうリスクが挙げられますが、それも基本的には心配するほどのことではないように思います。
わけのわからないイチャモンによって国粋主義者()に「日本を支持するのか!」といって燃やされかねない現在の中国ですが、別にその雰囲気があまねく全体に渡っているわけではないし、行き過ぎた、あるいはヘンテコな「愛国」行動に異を唱えるような風潮も最近は生まれ始めています。
中国にとって「国恥記念日」とされるような特別な日に目立ったことをしない、政治的なタームに触れないなど、こちらの日系企業なら基本としていることさえ押さえておけば、深刻な損害を受けるリスクはかなり低く抑えられるでしょう。
ぶっちゃけ、ほとんどの人にとっては日本の会社だろうがなんだろうが、安くてうまいものさえ提供してくれればいいというのが本音です。
現に、日本が福島第一原発の処理水の放出を開始したその日にスシローに行ったのですが、普段通りに賑わっていました。まさに「世界の海の安全が日本によって脅かされた!」とメディアやSNSが大騒ぎしているその最中に、です。結局、来る人は来るんですよね。
そんなわけで、鳥貴族は香港・台湾にとどまらず、すぐにでも中国大陸に進出すればいいのになーと思います。そのうちコスパ重視のデフレ商売が中国にも定着すると、取れるパイが少なくなるので、早めに来た方がいいですよ、たぶん。
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とまあ、僕みたいなド素人が提言しなくても、鳥貴族みたいな大企業のマーケティング部門はちゃんと考えた上で意思決定しているでしょう。だから釈迦に説法だとは思うのですが、もしかして関係者に届けば何かの参考にしてもらえるかなと思い、今日は書いてみた次第です。
海外進出は日本の外食産業にとって、ひとつの大きなテーマだと思います。いま中国はその意味でチャンスがあるような気がしているので、どんどん日本の会社が出てきてほしいですね。
ではまた。
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