シグネチャーストーリーとは
「ものがたり」の強さ
昔むかし、あるところに…というのがストーリーである。「ものがたり」であって、事実を並べたものとは訳が違う。
ストーリーは、事実の羅列に比べて、あらゆる点で優っている。とにかくインパクトがあるのだ。露出を獲得したり、SNSで広まったり、情報伝達力があり、記憶に残りやすく、共感をよぶ、説得力があり、インスパイアしたりするなどなど。
この本では、企業が社内外に伝えたいことを、ストーリーの力で伝えることが最も有効なブランド戦略として、「シグネチャーストーリー」を創ることを推奨する本である。
シグネチャーストーリー
シグネチャーストーリーは、ブランド資産である。シグネチャーストーリーは、ブランドの高次の存在意義とリンクした伝えたいこと(ねらい)があり、役割があり、信憑性があり、惹きつけ、人を巻き込む力がある。
高次の存在意義
シグネチャーストーリーが伝える戦略的なメッセージは、ブランドのより本質的な、存在意義と繋がっている。つまり、3人のレンガ職人の寓話にある、親方の命に従って精緻にレンガを積み上げているのでもなく、レンガを積み上げて壁を作り、生活費を稼いでいるのでもなく、後世に残る大聖堂を創っていると誇らしげに答えると言うやつだ。大義や使命を感じさせる存在意義に基づいているストーリーだからこそ、聞いた人は、共感でき、自分ごととして人に語りたくなるのだ。
ねらい
顧客、従業員、経営陣を含む社内外に、ストーリーの強みを活かして戦略的なメッセージを伝える。戦略的なメッセージとはブランドヴィジョンや顧客との関係性、組織、価値観にかかわるメッセージである。メッセージは、直接語られるより、うさぎとカメやシンデレラのように、受け手が感じとる形で伝わることが多い。
役割
戦略的メッセージを伝達する役割がある。シグネチャーストーリーは、ブランドの露出機会を増やしたり、反論や疑いの余地を無くしたり、企業が長期的にコミットしていく過程で、企業ブランドの存続する方向性を示しさえする。短期的な広告キャンペーンで用いられる戦術的ストーリーとは次元が違い、ブランドの成長を促す役割も担うのだ。
信憑性
ストーリーが語り継がれるには、WOW!やつい話したくなる要素があるだけでなく、真実味が必要である。嘘っぽかったり、宣伝要素を感じさせるものは機能しない。
シグネチャーストーリーを作るヒント
大きく分けて、2つの作り方がある。一つは自分で作る。もう一つはすでにできているものを借りてくる。こちらは次作で詳述されるが、前者の方がよりパワフルだという。完璧な完成形を作るのは誰がどうしたって難しいので、全員にではなく、誰かに刺さるストーリーを創って露出してみるところから始める。歴史や価値観、何か語りたい事実があれば、ちょっとしたストーリーに仕立てる。
事実をストーリーにするとき、伝えたいことが浮き出るようにする。少なくとも事実を動機付けにつなげる。何か興味をひく文脈を紐付けることでもできる。
どのようにして、プログラムが始まったのか
どのようにして、新しい工程が優れた商品を生み出したのか
どのようにして、顧客が困難な課題を克服するのにその商品を使ったのか
ここまで書くと言わずもがなだが、シグネチャーストーリーという名称にも関わらず、たいてい、複数あることになる。そもそも何がシグネチャーストーリーとして機能するかはわからないし、流行りもある、同じ話をずっとしていても飽きられてしまうし、長期的に伝えていく中で、進化していく部分もある。軸となるプロットがあったり、伝えるターゲットによって強調すべきことが違ったり、、歴史的事実を並べるのと違って、自然にできるものではないので、試行錯誤して作り上げていくものなのだ。