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価格戦略を知る者が「利益」を制す #7|ポケット・プライス

『価格戦略を知る者が「利益」を制す』
DIAMOND ハーバード・ビジネスレビュー編集部 【編・訳】
第7章 ポケット・プライス:真実の取引価格

ダイヤモンド社(2005/03発売)

「第7章 ポケット・プライス:真実の取引価格」を、主観的にまとめています。価格戦略上、重要なポイントをさくっと理解したい人におすすめです。

第7章 ポケット・プライス:真実の取引価格

要約|価格戦略として、最終消費者の価格を上げるのではなく、個々の取引における価格体系を管理することで利益を改善できることを実例とともに論証する。具体的には、伝票価格と実際の「取引価格」とのギャップに着目し、全社でコミットして解消するポイントを解説する。

『価格戦略を知る者が「利益」を制す』ダイヤモンド社(2005/03発売)

プライシングの仕組み

プライシングは戦略的ポジショニングの大局的な観点と個別具体的な取引ごとなどミクロな観点が相互に関連し考えられる。
業界内の需給関係

供給の変化、需要の変化、コストの変化が業界の価格水準の変化に影響を及ぼす。市場価格全体への上げ・下げ圧力とその要因を理解すると、大まかな価格トレンドを予測し、自社の行動が業界の価格水準に及ぼす影響を察知できる。
製品のマーケティング戦略
競合他社との比較で、自社の製品と関連サービスにどのくらいの効用があるか、顧客の価格許容度を理解することで価格ポジショニングを微調整できる。以下の3点を把握する必要がある。
 顧客は製品・サービスのどの機能を重視しているか
 顧客はその機能に対してどのくらい余計に支払えるか
 自社・競合他社はその機能に対してどのくらい投資すべきか
取引ごとの価格管理
顧客ごと、取引ごとに異なる価格をいかに管理するか

利益改善機会を発見する

取引ごとの価格管理は、注文ごと、取引先ごとに最終的な手取り金額を適正化することに尽きる。とはいえ、実質的に日々の膨大かつ複雑な取引を全て仔細に把握するのは至難の技である。取引価格の実態を明示する手法がポケットプライスウォータフォールとポケットプライスバンドである。

- ポケットプライス・ウォーターフォール

ポケットプライスとは、取引1件において、企業に最終的に残った収入であり、取引の魅力度を測る適正な基準である。それに対し、伝票価格は消費者が購入する際に提示される価格を示す。ポケットプライスと伝票価格とのギャップを明らかにするのがポケットプライス・ウォーターフォールである。
伝票価格=基準価格 ー 各種割引

     各種割引例:オーダーサイズ割引、競合割引、販促割引
ポケットプライス=伝票価格 ー 個別取引外の割引 ー 各種費用
     個別取引外の割引例 支払条件割引、年間ボリュウム割引、
               取引条件以外の販促割引
     各種費用例:共同広告への協賛金、運送費、リベート

  • 参考|McKinsey Quarterly "The power of pricing", February 1, 2003 にあるポケットプライス・ウォーターフォール図でイメージ把握できます

  • 伝票価格からポケットプライスまで、業界により、26−28%の落ち込みが生じることは珍しくない。

    • ポケットプライスはなぜ変化するのか

    • ポケットプライスに至る各項目について、適正なルールがあるか

    • 取引先の購入判断に影響しない割引がなされているか

  • ポケットプライス・ウォーターフォールの最適化
    1と2を繰り返し、販売量を最大化しつつ、ポケットプライスを最適化する

    1. 価格を下げる|買い手がもっとも敏感な反応を示す項目を調整する

    2. 価格を上げる|買い手がもっとも気にしていない割引項目を調整する

- ポケットプライス・バンド

一製品の価格の幅。一製品のポケットプライスの最高と最低、バラエティを把握し、プライシングに活かす。

  • 商品により35%から500%に及ぶことがある。次の観点で分析すると、プライシングの最適化の一助となる

    • このような幅と形状を形成してしまった原因は何か

    • 高い割引率で販売されているのは全体の何パーセントか

    • 今以上の価格を払って良いと考えている顧客群は存在しているか

  • ポケットプライスバンドの最適化

    1. 過剰な割引を標準的な価格に戻す

    2. 過少な割引を標準的な割引にするプロモーションの展開

    3. 適正価格を管理するための割引上限や割引ルールを設定する。ポケットプライスのモニタリング方法を策定する

取引価格管理のポイント

プライシングをきめ細かく管理することで、どの企業でも利益改善機会と戦略的知見を得られる。戦略的にプライシングに取り組むうえで効果的な行動は3つの観点で考えられる。

1|ポケットプライスバンドの管理

ポケットプライスを正確に算出することで、誰をターゲットとしてプライシングを改善すべきかが明らかになる。それを具体化するのが肝要である。つまり、ポケットプライスバンドを明らかにしたら、両端に着目して、マーケティングと営業の施策を具体化する。マーケティング・営業は、高い方の顧客の取引量を増やす行動をするとともに、低い方の顧客の価格を向上策により高い方へとシフトさせ、場合によっては取引停止も含めて検討する。

2|ポケットプライス・ウォーターフォールの活用

ポケットプライス・ウォーターフォールを活用すると、平均ポケットプライスの変化と原因を項目ごとに即座に理解できる。つまり、価格を管理する上での課題が一目瞭然となる。加えて、顧客セグメントや流通チャネルにより、ポケットプライス・ウォーターフォールの各項目の重要度は異なる。顧客ごとに割引を最適化し、割引による売り上げ目標を設定するなど割引目的を明確化することで、プライシングも売上高利益率も改善できる。

3|組織的な取り組みと褒賞制度の改善

取引価格を徹底的に管理するためには、トップマネジメントがコミットすることが重要である。ポケットプライスを重要視していることを社内で明示し、その改善に対し褒賞を与えるのも有効である。営業担当者は、自社商品のメリット伝えるスポークスマンであり、価格の交渉者である。彼らは、高価格を設定するリスクを取るより、取引先に自社の割引限度いっぱいまで割引く傾向がある。彼ら全員に、ポケットプライスと目標を理解させるのには、平均価格以上の取引者を褒賞し、平均価格未満の取引者を厳罰に処すというインセンティブプランは有効である。

ISBN-10 ‏ : ‎ 4478502528
価格戦略を心理学で分析する。適正価格を科学的に導く。過当競争から抜け出す。「プライシング」は利益戦略である。
第1章 プライシングと消費者心理
第2章 新贅沢財のポテンシャル
第3章 価格シグナル戦略
第4章 価格戦争の正しい闘い方
第5章 eプライシング:「コストの透明性」に打ち勝つ
第6章 スマート・プライシングの技術
第7章 ポケット・プライス:真実の取引価格
第8章 プライシングの創造知

『価格戦略を知る者が「利益」を制す』ダイヤモンド社(2005/03発売)


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