価格戦略を知る者が「利益」を制す #3|価格シグナル
「第3章 価格シグナル戦略」を、主観的にまとめています。価格戦略上、重要なポイントをさくっと理解したい人におすすめです。
第3章 価格シグナル戦略
価格シグナル
価格に関する消費者の知識はいい加減である。顧客は経験から、適正価格と小売店を信じている。つまり、売り手の発する価格シグナルを暗黙に信じている。従って、価格シグナルをうまく活用すれば、顧客の信頼を集め、売上を高める手段となる。逆にその方法がまずいと、信用を失い、ブランド力を弱め、訴訟すら招きかねない。
価格シグナル1|セール表示
値段の側に「セール」と表示するだけで、値段は変えずとも50%売上が増える例もある。大体において、「セール」と表示されているものは通常より安いという経験則から、顧客は「セール」を信用する。
セール表示が多すぎれば、顧客も信用しなくなるので、乱用により、価格シグナルとしての効果は低下する。セール表示をした商品の割合が25〜30%を超えると、需要は明らかに低減し始める、セール表示の効果は弱まる。
価格シグナル2|マジックナンバー”9”
バーゲン対象商品に、「9」で終わる価格をつける。同じ商品でも、34ドル、39ドル、44ドルと値付けした場合、39ドルで他より30%の需要増となった。端数が注目されている。高級アパレルでは、正価は端数のない値付け、バーゲン品は99セントで終わる値付けをする事例もある。ただし、バーゲン品にかかわらず全商品の価格が9で終わる場合、既にセール表示されている場合、効果は低減する。
価格シグナル3|標識商品
すでに消費者が価格を把握している商品の価格は、セール表示、9で終わるなどの価格シグナルがなくとも判断できる。350ml缶コーラ、映画の入場料。消費者はこうしたベンチマーク価格をもつ商品の価格をもとに、その店全体の価格水準を判断する。従って、標識商品の価格を管理し、店全体が安いと印象付け、他の商品の売上を高めることができる。標識商品を選ぶポイントは3つ。「正確」顧客が正確な価格知識を持つ商品でないと無意味。「人気」人気商品ほど消費者の価格知識は正しく、大量に仕入れて卸値を下げさせれば利益も確保できよう「補完的」補完商品であると最適。あくまでも店全体が安い印象を作るのが大事なので、たまたま理由があって安いと勘ぐられるような、「特別入荷」などの表現は避け、「通常価格が安い」と謳い顧客の好印象を引き出すのが得策である。
価格シグナル4|最低価格保証
他店と同じ価格かそれ以下で売ると保証する。積極的に市場価格を調べ、自発的に返金するのは稀。実際には、価格を市場全体の価格のばらつきが減り、全体的に価格を押し上げる効果がある。消費者が正確な価格知識を持たない場合に有効。また競合他社の値下げを威嚇する効果がある。実際に保証を利用するのが難しすぎる場合や、PBや専売ブランドばかりを扱う店の場合は無効。全商品が他社と比較可能である必要はない。家電やマットレスなどメーカーが、納入先ごとに同一ブランドでも仕様を変え多数の変種を作ることで、消費者が保証を使いづらくする事例もある。
価格シグナルの有効性を測定する
消費者は商品と価格それぞれの情報を求めている。従って、小売企業は商品を管理すると同様、価格シグナルを管理する必要がある。どの商品が割安なのかを正しく伝えれば、顧客の信頼を獲得できる。そして「よそならもっと安いかも」という顧客の迷いを払拭することもできる。注意すべき課題は3つ。
価格シグナルの長期的な影響
利益を短期的に増やす価格設定が長期的に利益を損なう結果になる事例。顧客が将来も注文を繰り返してくれるのか。それともセール品だけを買って、その後はあまり注文しなくなるのか。一見客と常連客。最初に大きな割引にあった一見客はその後も注文を繰り返し多くの商品を購入したが、常連客は、セールの時には買い込むものの、注文回数と注文量は少なくなる。こういう現象に気づけないと、常連客には低すぎ、一見客には高すぎる価格を設定しかねない。店の高品質イメージへの影響
お買い得感や顧客の価格イメージを重視し、店の高品質イメージの維持を軽んじる傾向がある。収集したデータを利用する
効果的なテストと収集データの活用の両方が揃って初めて利益につながる。価格シグナルを提示した結果得られた売上の増減などのデータを社内に広めて、ビジネスを変える必要がある。どの商品に、全体の何割の商品に価格シグナルをつけるべきか。またセールの乱発を防ぎ、単店ではなくチェーン全体で売上を伸ばすことになるべく、全社的な方針を打ち出すなど価格シグナルを管理することは、長期的にビジネスを続け、大きな利益を得ることに通じる。
価格シグナルを活用すべきケース
価格シグナルは価格知識が少ないほど敏感に反応する。その商品を初めて買う人、その店を初めて利用する人、たまにしか買い物をしない人は大抵価格知識が乏しい。価格知識に乏しい人、価格水準を判別しづらい商品はアンケートで聞いてみると明確である。クイズのように、商品を見せて価格を当てさせるのだ。
たまにしか購入しない商品の場合
新しい顧客の場合
デザインがよく変わる商品の場合
価格が季節によって変動する場合
店によって品質やサイズが異なる場合
品質と分割払いの関係
価格水準を好印象に見せる努力と、全体の高品質なイメージを守る努力のバランスをとる。やたら値引きしては、需要の少ない店と品質を信用しなくなる場合がある。高級感が大事な業界ではセール表示が少ない。
高級ギフト・宝飾品店で、手数料や利息のない分割払いを導入しようと考えていた。分割払いを可能にしたカタログと、そうでないカタログを一定数の顧客に送ったところ、前者の売上が13%低かった。追跡調査で、分割払いが商品全体の高級感を損なっていた。