価格戦略を知る者が「利益」を制す #8|プライシング改善のためにできること
「第8章 プライシングの創造知」を、主観的にまとめています。価格戦略上、重要なポイントをさくっと理解したい人におすすめです。
第8章 プライシングの創造知
ウェブロボットが価格戦争を混乱?
企業の成功は、検索botのプログラミングスキルに左右される。市場には、利益を最大化するために競合価格、価格感度、店舗検索bot利用状況など様々な指標を情報収集する試行錯誤型botと競合他社の価格だけを見るなど短絡的な指標で小刻みに価格を上げる単純なbotがある。前者のみの場合、「暗黙の談合」へと向かい、それぞれに高単価と健全な利益を維持しようとする。ただ、前者と後者が混じる場合には、前者は後者の餌食となる。また後者のみの場合、価格戦争が勃発し、botは価格引き下げを最低価格水準に到達するまで繰り返し、価格は一旦引き上げられた後に新たな価格戦争に突入するサイクルを繰り返す。回避策として、売り手・買い手・仲介の全ての機能を果たすエージェントへの進化、長期的利益最大化の学習能力の強化、商品の品質や露出状況などより詳細な情報を収集しプライシングに反映するエージェントの登場などがあり得る。インターネット上での効果的な競争を行うには、膨大な情報を活用し、シミュレーションを実施し、新しいメカニズムや戦略を打ち出すことが求められる。
価格主導のオンライン取引
インターネットの普及で、価格表は以前ほどの意味を持たず、適正価格は需要と供給のバランスにより決まる。従って、営業マンには「需要の創造」が求められる。付加価値がなければ誰も購入しない。オークション市場などインターネット取引の活発化は、日々の取引を拡大させる可能性とサプライチェーンの効率を高める。ダイナミックなプライシングが次の波となる。
高価格との遭遇を演出する
消費者が想定する商品価格は定まっておらず、同じカテゴリ/製品/ブランドの商品に異なる価格を提示すると消費者の支払い意向額も変わることは調査でも明らかである。だからこそ、類似商品や当該商品の「通常価格」を高めに設定することで、市場価格の認識を上向きに誘導しようとするのである。インターネットの普及で従来の方法は成り立たないが、関連のない商品の値段は購買意欲に影響することがわかっている。消費者の意識外で、偶発的価格が購買意欲を喚起する。高額商品を消費者の目につく配置したとたん、他のより気軽な料金を支払うことの負担を感じにくくなる。小売店の陳列、カタログ、請求書など様々な展開が考えられる。
偶発的価格|incidental price 購買の過程で遭遇する関連のない商品の値段
価格を下げるばかりが能ではない
価格を下げたがる要因としてヒステリシス*を信頼していること、客観的で理にかなった判断をしたいこと、会社の収益性を上げる複雑な要因のデータが不足していることが挙げられる。収益性に貢献する複雑なデータ例として、価格変更と売上高の関係、需要水準と原価との関連性、価格変更に対する競合他社の反応予想などが考えられる。容易に入手できるデータである、原価、売上、マーケットシェア、競合価格に、判断が左右されやすいのである。それを解消するために、販売支援システムによって、販売価格、原価、需要に関する情報を関連づけ、「マーケットの予想される反応」を考慮に入れた具体的なデータを示し、プライシング担当者が「あいまいさを残した正しい判断 vaguely right」をできるような環境を整えることが重要である。
ヒステリシス hysteresis |積極的な短期的な価格設定により、市場シェアを獲得することが収益性の永続的な向上につながるという市場発展のパタン
価格プロモーションで儲けるのは誰か
戦術として、クーポン配布や期間限定の値下げなどによる価格訴求型のプロモーションが為されると、短期、中期、長期でどのような効果があるのか。以下の典型例のように、ほとんどの価格プロモーションは一時的な効果しかもたらさない。従って、価格訴求プロモーションの展開は、どのような売上・収益へのインパクトを狙うかを綿密に計画・管理する必要がある。
価格訴求型プロモーション効果の典型例
1 週間セール期間中|当該商品の売上増加、当該小売店での同カテゴリ商品全体の売上は、当該商品に顧客が流れたことで平均単価が低減し、低減する。
セール後〜5 週間|セール終了に伴い、顧客が元の消費行動に戻るため、当該商品のメーカーには収益低減となる。
セール後 5 〜24 週間|小売店・メーカーともセール前の売上レベルに戻る