追記:台湾寺院略記と一般参拝方法〔台湾風習〕

前回の記事で、この地のお墓参りの仕方を紹介しましたが、ふいに思いついたことがあります。それは神廟や寺院の一般参拝方法です。少し違いがあると思います。

ところで、台湾一番多いお寺といえば観音寺でしょう。お寺の参拝方法も(道教の)神廟とほぼ同じですね。ただし、供物はお菓子やフルーツなど、とにかく菜食でなければならなりません。

一般参拝方法

  • 供物と冥銭を供える
    (冥銭や線香は既に寺院側が用意されました。賽銭を自由に寄付すれば使用できます)

  • 線香を焚く

  • 持ちながら祈り願う

  • 三回礼をして香炉に線香を挿す

  • 合掌しながら、また三回礼をする

  • 神仏に供物を食べる時間を与える
    待つ時間は人それぞれです。すぐに冥銭を燃やす人もいます)

  • 冥銭を取って三回礼をする

  • 境内に設置された金炉(冥銭の焼却炉)で燃やす

  • 供物を回収して家に帰る

以上、一般的な参拝方法であります。

道教と仏教の区別が曖昧
自分から見れば確かに建築も参拝方法もそっくりと思います。実はね、例えば、「文昌帝君」(学問の神様)や、「註生娘娘」(安産の神様)など、観音菩薩と共に祀る寺院もよく見られます。「神仏混祀」とも呼ぶのです。

強いて言えば護符や呪術を使うかどうか、
それが一番の違いかもしれないと思っています。
仏教は護符や呪術を使わないです。

そうだ。お寺か神廟かはともかく、そこに霊媒体質の者がいる可能性は高いです。神様に憑依され、その意志を伝える、もしくはお祓いをする。こういう人たちは「童乩」(タンキー)或いは「乩身」(ジシェン)と呼ばれています。若い者に限れないですよ。見た目はごく普通のおばさんでも「乩身」であるかもしれないぜ!まぁ、自称霊媒の詐欺師の場合も当然ありますけど。

ついでに、
「~堂*」「~庵」と言う名づけた施設は僧侶たちの修行場です。

「~観」は「道観」、つまり道士たちの修行場です。

ある意味で、その方が道教や(中華)仏教の本質に近いかもしれないと思っています。

*○○堂は時に書斎や堂号(宗族名)です。例えば、台湾の古民家の正門の上に「清河堂」と書かれた字が見えます。それは後者であります。先祖様は清河から来たということです。

そして、
~宮」:道教の寺院。
 例えば:城隍神(じょうこうしん)を祭る「池和宮」や、媽祖(まそ)を祭る「天后宮」など。
 城隍神は道教の神様で、上位の土地神であります。一般的に都市の守護神だと認識されています。あの世の市長ですね。
 媽祖は道教の神様で、海の神様です。人間から神格化された神様です。元々二十代の麗人でしたが、何故か台湾では穏やかで親しみやすいおばあちゃんのイメージです。媽祖を祭る寺院を「媽祖廟」とも呼ぶのです。

~廟」:宮より規模が小さい道教の寺院です。
 「土地公」と呼ばれる土地神が祭る「土地公廟」が台湾一番多い神廟だと認めます。日本の稲荷社に相当。でも、土地公は人間の霊から選ばれたそうです。あの世の村長またいな神様ですね。
 先祖様を祀るのは「家廟」
 「十八王公廟」や「有応公廟」はちょっと特別、病死や事故死や変死者の霊を祀る、っていうか、鎮めるために作られた寺院です。俗称「陰廟」、勝手に何かを願わないでください。

~祠」:
 神様に限りません。戦没者や事故死の霊や先祖様を祀る場所でも「~祠」を名付けます。例えば、
 土地公を祀る「福徳正神祠」(福徳正神は土地公の別名)
 英霊を祭る「忠烈祠」(日本の靖国神社に相当)
 病死や事故死の霊を祀る「万善祠」*御霊信仰の一種。
 先祖様を祀る「~氏家祠」。

~寺」:仏教の神様を祭る寺院です。「神仏混祀」の情況も多いです。仏教の神様が主祭神です。
~神社」:言わなくても神社は神社です。この前に神様を還らせた桃園神社を除いて、台湾屏東県に位置する「高士神社」は台湾唯一現役の神社となっています。といっても、かつての大戦で犠牲になった原住民族の英霊たちを祭る神社です。靖国神社と相当。

ところで、皆さんにこの本をお薦めします。
片岡巖著作「台湾風俗誌」(台湾日日新報社,1921)です。

台湾風俗誌 2020年南天書局復刻版

当時あらゆる台湾の風土習俗が収録され、戦前の日本語で書かれた事典です。辞書よりも分厚いですね。一応、日本の国立図書館や台湾の国家図書館のデジタルデータで閲覧可能だけれど、やはり自分は紙本のほうが慣れていますね。

以下は台湾風俗誌から切り抜いた画像です。
自分も

「台湾風俗誌」第十集 第一章「台湾の巫覡」第七節「符と呪」ページ932
「台湾風俗誌」第十集 第一章「台湾の巫覡」第七節「符と呪」ページ946
「台湾風俗誌」第十一集 第七章「宗教的営造物」ページ1082-1083
「台湾風俗誌」第十一集 第七章「宗教的営造物」ページ1084

注意:専門知識のない方は、くれぐれも呪符を描いて使おうとしないでください。

詳しく、ご趣味のある方はこちらへ
https://tm.ncl.edu.tw/article?u=008_104_000042&lang=chn
(リンク先:台湾の国家図書館データベース)

ところで、サブネーム写真に写るのは「行天宮」っていう道教の寺院です。関帝聖君を祭る神廟です。(俗称「関帝廟」)

というわけで、
もし何か間違ったことを言ったり、質問があれば教えて下さい。
では、また次回でお会いしましょう。

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