【伊・コロナ記録メモ】 バールでコーヒー1杯飲むこともできなくなったワクチン非接種者
2021年クリスマス週から翌年にかけてのイタリア新規感染者。新聞には毎日ではないが、前年同日のデータも載せて比較できるようにしています。
12月19日(日)+24259人(死亡97人)
12月20日(月)+16213人(死亡137人)
12月21日(火)+30798(死亡153人)
12月22日(水)+36293(死亡146人)
12月23日(木)+44595(死亡168人)
12月24日(金)+50599(死亡141人)
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12月30日(木)+12万6888人(死亡156人)
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2022年1月4日(水)+17万844人(死亡259人、重症1392人)
<前年1月4日(月)+1万800人、死亡348人、重症2579人>
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2022年1月12日(水)+22万532人(死亡294人、重症1677人)
<前年1月11日(月)+1万4242人、死亡616人、重症2636人>
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2022年1月19日(水)+19万2320人(死亡380人、重症1688人)
<前年1月19日(火)+1万497人、死亡603人>
これでも、退任前のメルケル首相が「イタリアぐらい状況が落ち着いていたら安心できるのに‥」とドイツの感染悪化を嘆いたように、
イタリアのこの数字でもマシなほうなのだからつくづくヨーロッパは終わっているなと感じます。
欧州ではマシなほう
イタリアは欧州の中ではワクチン接種率が高いためか(と言っても日本とほぼ同じぐらい)、
11月ぐらいまで持ちこたえていたのですが、12月に入って陥落した感。1日当たりの死亡者数が100人を超えるようになってしまいました。
それでもメディアでは、
「去年(2020年)の今ごろより状況はいい」
「ヨーロッパの他の国に比べれば、まだ抑えられている」
などと言っています。
スーパーグリーンパス爆誕
イタリアでは、ワクチンパスポートのことを「グリーンパス」と呼んでいますが、12月に爆誕したのが「スーパーグリーンパス」。
それまでのグリーンパスは、ワクチン非接種者であっても直近の陰性証明があれば発行できました。
その場合のグリーンパスは有効期限がごく短いものですが、ともかくそれを提示すればレストラン等で飲食可能でした。
ところが「スーパーグリーンパス」は、ワクチン接種者にのみ発行されます。
そして、レストランやバール内での飲食にはこの「スーパーグリーンパス」の提示が必要。
つまり、ワクチン非接種者はバールでコーヒー1杯飲むこともできなくなりました。カウンターで立ち飲みも不可。
これ、すごいことではないでしょうか。
多くのイタリア人にとって、バールでコーヒーを飲むことはは間違いなく生活の一部であり文化です。
これこそ守るべき自由であり(マスクをしない自由なんてこれに比べればどうでもいい)、もっと声をあげるべきだと思うのですがそこまで反発があったようには見えませんでした。
ワクチン接種が始まったばかりの頃(2020年末)は、
「健康上の理由等で打てない人もいるのだから、そういう人が差別されるようなことがあってはならない」
といった声があったと記憶していますが、この数ヶ月(2022年10〜12月)はワクチン接種済みの人が7割以上とかなりの多数派になったことで、非接種者の人権についてほとんど語られなくなっています。
この1年半、コロナ対策の新たな制限が決まるたびに、毎週のようにイタリア各地でデモが行なわれてきたので、今回も抗議活動があったのでしょうが、興味のない人から見れば「またいつものデモか」という程度。
イタリアでは何かにつけてデモやストライキ(電車、バス、空港!)が行われますが、自分はつねづね冷ややかに眺めてきました。
でも今回のワクチン非接種者をとことん追い詰めていくやり方についてはさすがにやり過ぎのような気がするし、こういう時にこそ抗議活動をもっと行うべきでは?とも思います。
普段のどうでもいい(当事者から見れば重要なのかもしれませんが)デモ活動が多すぎて、肝心なときに有効な抗議手段として機能しなくなっているように感じます。
仏マクロン:ワクチン反対者を「うんざりさせたい」
2021年10月頃から、ワクチンパスがないと入れない場所(飲食店、オフィスなど)、できないこと(長距離列車や飛行機の利用など)が次々と追加されていき、ついに最終形態であるワクチン義務化に至ったわけですが、
「ワクチンパスがないと職場で働けない」とか「交通機関を利用できない」とか制限を強めてきたのは、こうすることでワクチン未接種者に接種を促すのが目的です。
つまり、ワクチンを打ちたくない人に「できれば打ちたくないけど、打たないと生活に支障が出る。しかたないから打つか」と思わせ陥落させるのが狙い。
この狙いは明らかですが、少なくとも公然とは「非接種者の皆さん、これからどんどん自由を奪っていきますよ、もうワクチン打つしかありませんよ」みたいな脅しめいたことを言う政治家はイタリアではいませんでした。
が、これをぶっちゃげたのが仏マクロン大統領。
2022年1月5日付の地元紙のインタビューで「ワクチン反対者をうんざりさせたい」と発言。
この「うんざりさせたい」と翻訳されている部分がフランス語では下品な俗語に由来する表現らしく、
野党や国民から批判されているそうです。
言葉のニュアンスについてはわかりませんが、イタリアの記事では「非接種者を怒らせたい(いらつかせたい)」ぐらいの翻訳になっていました。
非接種者が全て悪い?
私自身は2021年8月にワクチン接種が完了し、2022年2月には3回目接種を控えており、ワクチン反対者ではありません。
でも、主義や自分の考えからワクチンを打たない人がいるのは理解はできるし、綺麗ごとでもそういった少数者をある程度尊重しなければならないと思っています。(ジョコビッチのような振舞いをしない限りにおいては)
が、マクロン大統領が上記インタビュー内で言うには、
「重症病床の85%をワクチン未接種者が占めている」
わけで、こういうデータをもとにしてワクチン非接種者こそが元凶とする空気がイタリアにも間違いなくあります。
「問題なのは、ワクチン非接種者」
「最大の感染対策は依然としてワクチン」
と専門家も政治家も連呼。
東京オリンピック前の「安心・安全の・・」並みによく聞きます。
毎日100人以上亡くなっている状況に慣れてしまう最悪さ
日本でも最近は「毎日感染者数だけをことさら強調して報道するのは良くない」という声があるようです。
1日の感染者数に一喜一憂(?)する段階からそろそろ次にいこう、と。
確かにそうだろうと思うのですが、例えば東京の感染者が1日50人以下ぐらいだとやっぱり気分的に安心感があります。一時帰国していた2021年11月頃の状況がそうだったのでよく分かります。
これがヨーロッパの場合、感染者数よりも死亡者数を注視せざるを得ないので本当に最悪です。日本と比べ、文字通りケタ違いに多いからです。
波が来ると、毎日の集計として上がってくるのは100人を超える死亡者数で、これを毎日見ながら生活するのは本当にストレスです。
今回の波(2021年12月頃〜)は、前年の同時期に比べればそこまでひどくないと多くの人が言うわけですが、毎日100人以上亡くなる状況でも「マシ」になってしまっていることこそが問題です。
そういう状況を三たび(2020年3〜5月、2020年10月〜2021年3月、そして今回の2021年12月〜)招いてしまった責任の少なくない部分が国の指導者たちにはあるわけで、最近のワクチン非接種者への過剰な圧力は、そこに批判が向かわないように「すべてはワクチン非接種者が悪い」と責任転嫁しているように見えてしかたありません。
例えば、2021年の春から夏にかけて、イタリアやイギリス政府などは「マスク義務の解除」を公式にアナウンスしました。わざわざそんなことを宣言しなくたってどうせしなくなるんだから、、と思うわけです。
「日常を取り戻す」や「withコロナ」は結構ですが、欧州ではこれだけの被害を出したのだから徐々に慎重に段階的にそれをやっていったほうがいいに決まっています。
そうしてこなかったツケ、それにオミクロンの猛威が加わり、今の状況を招いているように自分には思え、全ての責任をワクチン非接種者に押し付けているかのような今の空気に「何だかなぁ。。」という感じです。
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