小説版『アヤカシバナシ』コイスルアイツ
都市伝説で聞き覚えがあると思うこの手の話、
ウソとも言い切れないし、本当かどうかは経験していないので何とも言えない、そういう曖昧な部分って、嫌な言い方だけれど、都市伝説しかり、怖い話しかり、とても必要だと思うのです。例えばUMAと呼ばれる生き物、居て欲しいけど見つかってほしくない、解明してはいけない、ロマンが無くなるから・・・そんな思いも、不謹慎ながらあるわけで・・・。
話が反れました、そんな聞き覚えのある都市伝説っていくつかあるのですが、私の知人が体験したと言う、よくあるよねってアヤカシバナシを1つ・・・。
知人の光一(仮名)は高校を卒業して、就職が決まった地方の会社の管理する寮へと単身旅立った。まぁよくある会社は都会にあるが、工場は地方の山奥で、寮に住みながら製造工程を1年こなすのだ。
光一は新入社員として【仕事を知る為の講習】の為であったのだが、光一本人は家から出られたのがとても嬉しく、都会の本社じゃないのかよ!と言う事もなく、日々粛々と業務をこなし、夜は繁華街で飲み歩いた。
数日後・・・
光一はいつもの朝を迎え、会社で支給してくれた自転車に乗り、寮を出た・・・真っ直ぐ進むと右手に古めのアパートの裏側が目に入る。その2階の窓、カーテンの隙間から可愛い女の子が見下ろしているのが見えるのだ。
『お!今日も目が合った!・・・気がする!』
光一はその女の子と毎朝目が合う気がするのが楽しみだった。しかし帰りは街灯もない田舎なので真っ暗で見えなかった。真っ暗なのは街灯が無いのもあるが、部屋の電気がついていないのである。光一はきっと遅くまで仕事なんだな。。。と思っていた。
そんな勝手な一人やりとりが何日、いや何週間続いただろうか・・・毎朝僕を待ってて見つめてくれるんだかから脈があるのに違いない!と鼻息を荒くして休みの日、小さな花束を購入し、彼女の家を訪ねた。それもどうかと思うが、田舎の広大な景色と環境が彼の背中を押したのかもしれない。
窓を見上げると、カーテンの隙間から背中が見えた。きっと僕が休みなの知ってるから気づいてないんだな・・・そう思い、玄関へ回った光一。
呼び鈴を押すがなかなか押せず、力を込めるとパチン!と固まっていた何かが取れたように勢いつき、めり込むほど押してしまった
【ポィ~ンプォ~ン・・・・】
電池が切れかけているのか、やたらと面白い音が鳴って、光一は噴き出した。『ははははは!』コンコン!『突然すみません!あの、ちょっとだけ良いですか』ドアをノックしながら声をかけてみたが返事が無かった。
ダメとは思いつつ古いアパートなので、ドアに着いた新聞差しを指で押し上げて覗き込もうとした瞬間、眼を刺すような異臭がした。たまらず走り出し、隣の部屋の呼び鈴を押した。
『すすすすすみません!隣の女性・・・あの・・・部屋が臭いんです』
『はぁ?』
ぶっきらぼうな男性が出てきて露骨に嫌な顔をする。
『あの!確認してもらえませんか?こっちです』
光一に手を引かれ、前のめりで強引に隣の部屋の前にトットット!と運ばれてきた、新聞差しを指で押し上げて鼻を近づけてクンクン・・・
『うわっ!くせぇ!!!!!!!!!!!!!!!!』
『ね!変ですよね!』
『死んでるんじゃねーだろうーな!警察呼ぶからそこに居ろ!』
『はい!お願いします!』
約20分後に警察が到着し、管理人も合流して彼女の部屋のドアを開けると、外に向けてドラゴンがゲップでもしたかのように、臭いの塊がドォオオン!と周囲に飛び出してきた。全員が鼻と口を覆い隠して部屋に入ると、寝室で首を吊って死んでいる彼女が居た。
光一が見ていた光景は首を吊って死んでいる彼女だったのだ。
今朝は腐敗が進み、自然に回転して窓に背を向けたのだろう。
開けると凄まじい臭いだが、そんなわけあるかと言う驚きの気持ちも手伝って、直ぐに臭いは感じなくなったそうだ、もちろんその感覚は人それぞれだが。
死人に恋をしていた光一。
もしかしたら彼女が呼び寄せたのかもしれませんね。