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【映画】『劇場版モノノ怪 唐傘』 観る側だって、選ばれる。

終了直前、滑り込み!

上半期から、今年の映画1本は『劇場版 モノノ怪』に決めていたのに、7月突如『ルックバック』に浮気してしまった。
『ルックバック』が胸に刺さり過ぎて全く後悔は無いのだが、1年に映画2回は豪遊だろうかと思案すること1ヵ月。

しかし十数年ぶり『モノノ怪』シリーズの色彩豊か·ミステリアス·ちょっと不気味な世界観はぜひともスクリーンで体感したい。
公開終了前日に、ネットでチケット予約と座席指定を済ませて、滑り込みで映画館へ。


コアなファン多し、薬売りさん。

2006-2007年にフジテレビ深夜アニメ·ノイタミナ枠にて放送された『モノノ怪』シリーズ。
主に近世(江戸時代)を舞台に、ヒトの情念によって生まれる怪異(モノノ怪)が起こす事件を中心に物語が進み、モノノ怪と対峙する謎の薬売りが主人公。
和紙テクスチャーのカラフルな描写とユニークなキャラデザイン。不気味なムードを漂わせ、観るものを残さず異世界へ惹き込む。
些細な出来事が物語に及ぼす波紋や、登場人物の感情を、様々なメタファーをもって表現するので、完全には理解出来なくても「あれ?なんか変だな。」「何かとてつもなく悪いことが起きるかも。」と感覚的に察知できるのが面白い。

不気味なのにスタイリッシュ、サラッとしているようで泥々の人間模様、色とりどりの不調和が完全に調和している魅力溢れる作品だ。

一応、あらすじ

舞台は大奥
女たちの情念が渦巻く場所。

大奥とは、世を統べる〝天子様〟の世継ぎを産むために各地から美女・才女たちが集められた〝女の園〟であると同時に、重要な官僚機構でもある特別な場所。独自の掟が敷かれた〝社会〟でもあるこの異質な空間に、新人女中のアサ(黒沢ともよ)とカメ(悠木碧)が足を踏み入れる。
《中略》
そんな中、少しずつ、彼女たちを覆っていく〝何か〟。
夜ごと蓄積されていく女たちの情念、どこからともなく響いてくる唐傘がカラカラと回るような異音、取り憑かれたように理性を失っていく女中…。
ついに決定的な悲劇が起こり、薬売り(神谷浩史)はモノノ怪を追って大奥の中心まで進むが、モノノ怪を斬り祓うことができる退魔の剣は「形」「真」「理」の三様が揃わなければ、封印を解き抜くことが叶わない。薬売りが大奥に隠された恐ろしくも切ない真実に触れるとき、退魔と救済の儀が始まる──。

『劇場版 モノノ怪 唐傘』公式サイトより




圧巻の映像密度

さて『劇場版 モノノ怪』は、製作に携わった人の体調が心配になるくらい、シリーズ最高峰·豪華絢爛、圧巻の映像密度。
登場キャラクターもよく動き、観ていて本当にずっと楽しかった。
テレビ版(CV櫻井孝宏氏)とは薬売りさんの声優さんが変わっているが、CV神谷浩史氏は若さと身軽さと前向きさがあって、本作にマッチしている。

映像、音楽、キャラクターボイス、
映画というか、1つのアトラクションのようでもあった。


サーセン、わかりませんでした(⁠ ⁠;⁠∀⁠;⁠)

もう恥ずかしい限りなのだが、89分、けっこう集中して観たつもりである。振り落とされないように。
けれど多分私は、作品の粋を6割、いや半分ほどしか理解できなかったと思う。
唐傘に込められた意味、御水様の謎、天子様も含む大奥の泥沼……物語の大切な部分をことごとく掴み損ねているようだ。

私のモヤモヤは晴れることこそなかったが、紹介動画にて監督·中村健治氏が話していたことで、腑に落ちた。
監督の言を要約すると
「わかりやすさ×エンタメが売れる主流となっているなかで、本作は観るチカラや知識欲を問う内容になっている。甘いもの(わかりやすい作品)ばかり食べているのなら、そろそろしょっぱいもの(観察力·考察力が問われる作品)いかがですか?」ということらしい。

ちょっと、いやかなり痺れる。
クリエイターの心意気。

観る側だって、選ばれる。

「理解できない=つまらない」
と切り捨てるのは、簡単だ。
けれど、それだけでは世界は広がらない。

そしてクリエイターは、
何かを表現する人は、
万人に理解させてやる必要など無いのだ。
どうだお前の舌には合うか、と問うてみたっていい。

おみそれしました。
凡夫の身ながら、
来年公開·次回作も観に行きます。

いやでも難し過ぎるって、絶対。


【作品情報】
『劇場版モノノ怪 唐傘』
監督: 中村健治
製作: ツインエンジンEOTA


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