「面白そう」「面白い」「面白かった」の関係とそのボトルネックの正体
こんにちは。
Studio GGのShunです。
かえるDさんのこちらの記事が面白かったので、「面白そう」と「面白い」、そして「面白かった」の違いに関して自分なりに考察を進めてみました。
※有料記事のネタバレは含みません。
※今回の記事は無料部分のみ読めばわかります。
「面白い」と「面白そう」と「面白かった」の関係
かえるDさんの記事では、「面白そう」「面白い」「面白かった」は以下のように定義されていました。
・「面白そう」はプレイ前の期待感
・「面白い」はプレイ中に感じていること
・「面白かった」はプレイ後にも残った記憶
コンシューマゲームやSteamのような、買い切り型の課金モデルでは、試しにやることはできないので、プレイする前のフェイズである「面白そう」が重要であり、
ソーシャルゲームのようなフリーToプレイのモデルでは、やってみてからお金を払うので、「面白そう」だけではダメで、「面白い」が重要だというお話でした。
かえるDさんの主張では、さらに「面白かった」と「面白かったの共有」を分けて語っていますが、私の考察ではこれらを「面白かった」→「面白そう」の間のボトルネックであるとして考察をしてみたところ、
「面白そう」「面白い」「面白かった」の関係と、ボトルネックの正体について整理できたと思うので、お話したいと思います。
※かえるDさんのモデルを参考に修正したモデル
ボトルネックの正体
ボトルネックの正体を理解するためには、
まず各々の課金モデルがパス上のどこで課金を要求するのかを考える必要があります。
さらに、課金以外にもユーザーの行動を必要とする部分では、その行動を促すエネルギーが必要となるため、ボトルネックとなり得ます。
以下では、それぞれのパスについて、ボトルネックになり得るものを考え、その正体を探っていきます。
「面白そう」→「面白い」のボトルネック
ここには、コンシューマゲームやSteam等の多くのパッケージ型販売のゲームにおける課金行動が含まれます。
そのため、この「価格」が大きなボトルネックとなります。
「高価格」なゲームを購入して次のフェイズに進むためには、それだけ強い「面白そう」が必要になるということです。
逆にフリーToプレイのゲームでは、初めは課金が必要でないため、非常にハードルが低くなります。よって、「面白そう」はそこまで重要でないと言えるでしょう。
「面白い」→「面白い」のボトルネック
ソーシャルゲームのアイテム課金等がこのパス上に含まれます。
重要なのは「価格」とそれによって得られる付加価値に対する期待感といえるでしょう。
「面白い」状態が続く事で、何度もボトルネックを越えさせる事ができ得るため、ループを回り続けるプレイヤーが生まれ、大量課金につながるという傾向も見えそうです。ガチャがこれに相当しそうですね。
「面白い」→「面白かった」のボトルネック
「面白い」と「面白かった」の間のパスは記憶に残るかどうかが鍵になります。
おそらくここに課金を置いているモデルはないでしょう。
そのため、このパスを上手く回す為には、記憶に残りやすいゲームにするという事が重要と言えます。
「面白い」けど、システムが既存の流用であり、目新しさがなかったりすると上手く記憶されません。意外性があったり、驚きがあったりすると記憶に残りやすいと思います。
また、シナリオや世界観といったものは記憶に残りやすい為、システムが平凡でもハードルを超えやすいといった傾向はありそうです。
「面白かった」→「面白い」のボトルネック
このパスは「面白かった」と感じた後、リプレイすることに対するボトルネックです
ゲームセンターのような都度課金のシステムやスタミナ等による回数制限に対する課金モデル場合、「価格」のハードルも発生します。
このボトルネックでは「価格」はもちろん、何度もプレイしたくなる「リプレイ性」が重要になります。
そのため、「面白かった」の中に「やり切っていない」と感じさせる事が重要です。
プレイヤースキルを伴う学習要素のあるゲーム、もしくは次は上手くいくのではないかと思わせる運要素のあるゲームがこのハードルを超えやすそうです。
「面白かった」→「面白そう」のボトルネック
ここは少し特殊なパスになっており、今までは一人の人の中で「面白そう」→「面白い」→「面白かった」と流れていきましたが、
このパスは「面白かった」から他人の「面白そう」に接続したり、前作の「面白かった」から次作の「面白そう」につながったりするパスを考えます。
他人の「面白かった」が「面白そう」に繋がるためには、レビューが重要になります。
このレビューを書かせるためのエネルギーがボトルネックになります。
強い「面白かった」を提供出来れば、熱狂的なレビューからの他人への「面白そう」に上手く接続できることでしょう。
もう一つが前作の「面白かった」が次作の「面白そう」に繋がるケースです。
ここを繋げる為には、ファン層の形成が重要になります。
前作の評判が良ければ、ファン層を形成することができ、次作を「面白そう」と思っていただける可能性が高いでしょう。
また、既存の評判のいい作品との類似性を主張することで、別の作品の「面白かった」を自作の「面白そう」に繋げることもできるでしょう。
この辺は、プロモーションテクニックとも言えそうです。
各モデルのボトルネックと重視すべきフェイズ
以下では、各販売モデル毎に最も大きなボトルネックと重視すべきフェイズについて考察していきます。
考察:コンシューマゲームモデル
コンシューマゲームモデルは、買い切り型コンテンツであるため、最も重要なボトルネックは「面白そう」→「面白い」の間にあります。
これを乗り越える為にはそれに十分なだけの「面白そう」を用意する必要があるといえるでしょう。
さらに「面白い」→「面白かった」→「面白そう」(他人)の接続を良くするため、記憶に残りそうな要素(目新しい体験や世界観)を提供し、レビューが上手く回ると「面白そう」が強化され、ボトルネックを越えやすくなるのではないでしょうか。
考察:ソーシャルゲームモデル
アイテム課金モデルでは、「面白そう」→「面白い」の間に課金のボトルネックがないため、とりあえず知られる事で流入を増やすことができるため、最初のフェイズで大事なのは認知になります。
つまり、とりあえず知ってもらって、触ってもらうという形のプロモーションが効果的と考えられます。
「面白い」→「面白い」のボトルネックを超える為に、「ゲームの面白さ」および、「課金によりゲームがより面白くなりそうな期待感の演出」が鍵になるでしょう。
スタミナ等の回数制限型の課金システムを採用している場合は、「面白かった」→「面白い」の接続となるリプレイ性が重要となります。運要素があったり、プレイヤースキルを問う形にするか、ストーリーを小出しにするなどにより、先に進みたくなる工夫が必要そうです。
考察:ボードゲームモデル
ボードゲームの課金モデルは買い切り型であると思いがちであるが、実はそうとは限りません。
オープン会やボードゲームカフェ等、購入せずともプレイできる環境の存在から「リプレイ課金モデル」とも言える特殊なモデルが加わり、買い切り型とリプレイ課金型の混在したモデルとであるといえるのではないでしょうか。
ボードゲームはどれも、先ほど言った「買い切り型 + リプレイ課金型」だと思うのですが、ゲームの重さによって比重が異なります。
価格が安く軽いゲームはゲーム会などで遊ばれやすいため、「リプレイ課金型」の比重が高く、価格が高く重いゲームはほぼ「買い切り型」中心となると考えられます。
「買い切り型」中心の重ゲーでは、「面白そう」が重要となるため、テーマやコンポーネントといった、見ただけでわかる「面白そう」さが重要になります。重ゲーはコンポーネントリッチなことが多いのはこのためですね。
そして、「リプレイ課金型」の比重がより高い軽ゲーでは、「面白かった」も重要になるため、目新しいシステムや体験がより重要と考えられます。
もちろん、双方を上手く高められれば、どちらの流入も増やせるため、より速くループを回せるでしょう。
まとめ
・「面白そう」はプレイ前の期待感、「面白い」はプレイ時の体感、「面白かった」はプレイ後の記憶。
・それぞれの間にあるパス上に課金を含むボトルネックが存在する。
・ボトルネックの前のフェイズにボトルネックを超えるだけのエネルギーが必要なので、そこを高める努力が大切。
・「面白い」→「面白かった」の間には記憶のボトルネック、「面白かった」→「面白そう」の間にはレビュー等による共有のボトルネックがある
・ボードゲームでは、「買い切り型」「リプレイ課金型」の2つのモデルを考慮し、対応する必要がある。
現在のゲームの販売モデルを考慮し、そのボトルネックと弱点を洗い出して置く事で、注力すべきポイントがわかります。
企画の段階でも、「面白そう」→「面白い」→「面白かった」→のループを上手く回せるよう設計することで、より良いゲーム設計が出来そうです。
今回、かえるDさんの記事をもとに「面白い」「面白そう」「面白かった」の関係について考察したので、備忘録的にまとめておきました。
少しでも、読んでいただいた方の思考の整理の手助けになれたなら嬉しいです。