『グッズメイカー』制作ノート
こんにちは。
Studio GGのShunです。
今回は『グッズメイカー』の制作ノートを公開したいと思います。
ゲームの概要はこちらをご覧下さい。
着想~制作の動機~
まず、初めの着眼点として、ワーカープレイスメントなど、ボードゲームらしいゲームはとても面白いのですが、箱が大きく、持ち歩くのが難しいことが気になっていました。しかし、小箱に入るようなゲームは10分程度で終わってしまい、プレイ感がさっぱりしすぎてしまいます。ですので、充実したプレイ感を抱けて、また気軽に持ち歩ける小箱のゲームがあると嬉しいという思いがありました。
そんな中、『オーマイグッズ!』というゲームをプレイしました。
(BoardGameGeekより)
1000円代という低価格、小箱のゲームでありながら、しっかり遊べ、あまりのコスパの良さに感動しました。
そして、まさにユーロ系の拡大再生産なカードゲームを小箱で遊べ、また多数の資源が出てくる点もとても魅力的だったのですが、
・カードの使い方やUIが煩雑
・ドローの影響が強く、選択肢が狭い
・リソースマネジメントしてる感じはあまりしない
と、気になる点もありました。
また、オーマイグッズは110枚のカードだけでできているゲームです。このゲームに触れたことで、小箱でできる充実したプレイ感のゲームの実装方法として、「カードだけで作る」ということが浮かびました。また、単純なドローのない、戦略性の強いゲームが作りたいと思いました。
ワーカープレイスメントをカードだけで実現
私は、小箱に入るカードだけで、ボードゲームらしいプレイ感を得る為には、以下のような要素を入れるといいのではないかと考えました。
・アクションの選択
・複数リソースの管理
・建物等による拡大再生産
これらの要素を導入するのに、最初に思いつくのが「ワーカープレイスメント」です。
私は広義のワーカープレイスメントの定義として、以下のように考えています。
・アクションのドラフトである
・他プレイヤーが選択しているアクションの選択に制約がかかる
・選択状態は解除され、同一アクションが複数回実行される
ワーカープレイスメントは一般的にアクションのドラフトをワーカーを置くというUIにより実装したメカニクスですが、同じことをアクションをカード化して、それを手番プレイヤーが獲得する形でも実装出来ます。(例:二人用カヴェルナ)
しかし、アクションをカード化しても、得られるリソースを別で管理する必要があり、これだけでは十分なコンポーネントの削減にはなっていません。
そこで、選択したことを表す為に獲得したカードが、アクションの結果得られるリソースを兼ねていれば、リソースを支払ってカードを獲得するだけで、アクションの実行が可能になると考えました。
別のアクションにより、資源を払うことでその選択が解除されるため、
私が先ほど述べた広義のワーカープレイスメントの定義
・アクションのドラフトである
・他プレイヤーが選択しているアクションの選択に制約がかかる
・選択状態は解除され、同一アクションが複数回実行される
をカードのみというコンポーネントで、クリアできました。
売却アクションの追加
しかし、この段階のアイデアでは、いくつかのリソースを使用するとしても、入手するカード=選択するアクションが1枚という制約がある為、手元のリソースが増え辛く、展開が地味になりがちです。
そこで、リソースを組み合わせる以外の変換として、価値を使った「売却アクション」を導入することにしました。
「売却アクション」では、各リソースに「価値」という別のパラメータを設けることで、価値が等価なもの同士の交換を可能にします。
これにより、高価値のリソースを低価値のリソース複数枚と交換出来るようになり、手札を一気に増やすアクションが取れるようになりました。
「生産アクション」によりリソースを組み合わせ資産価値を上げ、「売却アクション」により下位のリソースに戻す事で再度生産を可能にする、というループが出来上がったことで、ゲームの骨格が完成しました。
実際にプレイしてみたところ、生産と売却を回すゲームプレイは新鮮で面白く、この方向で行けそうだという感触を得ることができました。
資源山札の構成
一般的なワーカープレイスメントと違い、『グッズメイカー』では、アクションとなる資源カードが山札から公開されるようになっています。
これは、大量のアクションが場に並ぶのを防ぐ意味と、プレイ人数の変化に合わせたセットアップが煩雑になるのを防いでいます。
ワーカープレイスメントでは、プレイ人数の変化に対して、適度なインタラクションにするためには、アクションプレイスとなるカードの枚数を調整する必要があります。
しかし、全てのアクションの枚数をプレイ人数毎に変えるのは非常に大きな手間です。
山札を導入することで、場のカードの枚数は一定でありながら、プレイ人数によって山札の回転スピードが変わるので、プレイ人数の違いを吸収することが出来ます。
これは、『リトルタウンビルダーズ』で行っている調整に近いものです。2人プレイでは、より盤面に対する計画性が求められ、4人プレイではインタラクションが強くなることで、ゲーム中の思考の程度をコントロールしている訳です。
また、山札を導入することで、ゲームにある程度の乱数が導入され、ゲームにゆらぎを与えることが出来ます。
ワーカープレイスメント的に考えると、ワーカーを取り除いたアクションスペースが使えるようになるまで、ランダム性を伴うラグがあることになり、これはこれで新しいプレイ感を与える事ができるのではないかと考えました。
資源カードの山札は最初は全て同じ山だった(資源にランク付けをしていなかった)のですが、これだと、めくりによっては基礎資源から生産出来る資源が無く、資源チェーンが詰まるという問題がありました。
これは、『宝石の煌き』方式で、資源にランクをつけて、基礎資源のみから生産出来る資源をランク1、ランク1の資源を必要とする資源をランク2とすることで、必ず基礎資源からアクセス出来る資源が場に並ぶようにすることで解決しました。
建物(拡大要素)のアイデア
建物(拡大要素)はボードゲームの定番要素であるため、ゲームの考案時から入れたいと思っていました。
初期段階では、資源を作る為の条件となる建物を考えていました。(麦を作るには畑が必要、羊や牛を飼うには牧場が必要、等)
しかし、条件とほぼ等価な「公開コスト」(羊を見せて糸を獲得、等)が導入されたことにより、存在意義を見失いました。
このため、一時期建物なしのバージョンも検討されましたが、建物なしではゲームが変化に乏しいため、プレイ時間を短くせざるを得ず、当初想定していたボードゲーム的なプレイ感から遠ざかってしまいました。
このため、このゲームに適した拡大要素を探すため、様々なパターンを検討しました。
そこで、思いついたのが、「小人のアクション」です。
「小人のアクション」は、特定の資源の変換が、毎手番、自身のアクションとは別に実行できるという建物効果です。
建物のないゲームでは、目的に辿り着くまでの工程が長く、手間を感じる事があるため、これを加速するための追加アクションを建物が提供することで、ゲームに爽快感を足す事が出来ました。
「小人のアクション」はワーカープレイスメント的に考えると、特定のアクションのみが実行出来るワーカーのようなものであると言えます。
この「小人のアクション」は盤面に生産先の資源が出ていなければ実行出来ない為、単純に追加アクションを与える程、ゲームを加速させ過ぎず、実行出来るかどうかが不確定であるため、実行出来たときにとても嬉しいという良さもあります。
この「小人のアクション」が考案されたことにより、ゲームはほぼ現在の形になりました。
基本建物によるゲーム展開のコントロール
建物が与える小人のアクションは主に「生産アクション」と等価なアクションと資源を勝利点に変換するアクションがあります。
しかし、ゲーム序盤に勝利点に変換するアクションを持つ建物ばかりが並んでしまうと、ゲームの拡大再生産要素を損ねることになります。
これを解決するための方法として、勝利点に変換する建物を別山札から提供するという方法もあったのですが、ただでさえ資源が複数列に分かれており、さらに建物まで複数列にしてしまうと、場に並ぶカードが多くなりすぎて認知負荷が高くなりすぎでしまいます。
そこで、「基本建物」という低次の「生産アクション」を行うことができる建物を最初に並べることにしました。
これにより、序盤から勝利点に変換する建物ばかりになることなく、安定したゲーム展開を作ることができるとともに、序盤の戦略指針を立てやすくすることができました。
カードのUIデザイン
『グッズメイカー』には、カードのUIの面でもいくつかの工夫があります。
まず、手札となる資源カードに関しては、手札にあるときに一覧性が良いように左上に資源のアイコンとその価値を縦に並べています。
これにより、手札を広げた際に、所持している資源とその価値が一目でわかるようになっています。
また、場に並んでいる時に参照するコストはカード下に記載されており、コストを確認する際にも変換先の資源の価値がわかるように、コストのすぐ上にカード名と価値、勝利点等を並べています。
また、建物は自分の前に並べて置くため、並べた時に絵がつながるようなデザインにしています。
ゲーム全体としては、拡大再生産を伴うカードゲームとしては珍しく、カードテキストを使わないようになっており、初見でも取っつきやすくするとともに、海外展開がしやすいよう意識しています。
終わりに
以上が『グッズメイカー』の制作ノートになります。
楽しんで読んでいただけたなら幸いです。
『グッズメイカー』は値段やスペースに対する満足感を追求したゲームです。その小ささを生かして、ぜひ持ち歩いて隙あらば遊んでいただけたらと思います。
もし、まだプレイしたことがなく、この記事で興味を持った方は、Amazonで購入可能ですので、ぜひ手に取っていただければ嬉しいです。