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「戦場のメリークリスマス」(1983)ネタバレあり

基本情報

『戦場のメリークリスマス』(せんじょうのメリークリスマス、英: Merry Christmas, Mr. Lawrence、欧州公開時の外国語題: Furyo)は、大島渚が監督した映画作品である。日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドの合作映画で、テレビ朝日製作の映画第1作でもある。1983年5月28日日本公開。英国アカデミー賞作曲賞受賞。
原作は南アフリカの作家、ローレンス・ヴァン・デル・ポストの短編集『影の獄にて』収録の「影さす牢格子」(1954年)と「種子と蒔く者」(1963年)に基づいている。 作者自身のインドネシアのジャワ島での、日本軍俘虜収容所体験を描いたものである。

ログライン

日本軍の捕虜になった英空軍ジョン・ロレンスは日本語を駆使して日本人のハラ軍曹、ヨノイ大尉と俘虜たちの対立を避けようとする。そこへ新たな俘虜、セリアズ少佐が入ることで、思わぬ交流と対立が生まれる。(ログライン書きづらい話です)

ストーリー

・ログラインがうまくまとまらないように、各キャラクターが複雑に絡み合う話。基本的に対立を避けようとするジョン、威信をかけて反抗する上官ヒックズリーとセリアズ、キャンプをうまくまとめようとするハラ・ヨノイの日本人サイドのゴールはあるが、同時にヨノイはセリアズに惹かれていったり、ハラとジョンの奇妙な関係など、一言で言い表せない、先が読めない展開となっている。
・思い通りにいかないモヤモヤが癖になる。ハラ軍曹もヨノイ大尉も行動に一貫性がないが、それは軍人としての自分と、個人としての自分の間で揺れ動いているためと言えるのかもしれない。

演技・演出

・北野武、坂本龍一、デヴィット・ボウイなどの起用、そして仲良く話しているかと思えば、次のシーンでは殴りつける先の読めないキャラクターが、逆に引き込まれる。
・全てを受け入れるようなローレンスの優しいまなざし。ちなみに彼は日本語が話せるのかと思ったら、全て音で覚えていたそう。すごい。。
・タイトルにもなっている通り、「メリークリスマス」という言葉に、弱みを見せないハラ軍曹の最後の懇願、そして軍人という立場からは決して交われない二人の気持ちが刺さる。
・行で断食をすることを理解するローレンスと、ヒーローキャラなのにそれをぶち壊すセリアズなど、スッキリしない展開が癖になる。

撮影

・じわじわとしたドリーと音楽により緊張感を出したり、ズームなども多用されている。
・独白のシーンでも細かく横ドリーが入っていたりする。もしかすると横ドリーって映像が同じだと脳が省エネモードに入ろうとするのを止める働きがあるんじゃなかろうか。
・ドリーアウトからの横パンなど、結構細かい動きがある。
・弟がいじめられている時に同じフレーム内で立っているセリアズのショットが素敵。

好きだったところ

・捕まってなお、セリアズとローレンスが冗談をいうところ。「散歩に行くぞ」「牛乳配達が来たようだ」「絨毯を取り戻しにきたな。」
・ハラ「お前はなぜ死なないんだ? 俺はお前が死ねば、もっと好きになったのに。お前ほどの将校が、自決せずになぜ恥に耐えるのだ。」
ロレンス「我々は、恥とは思わない。俘虜になるのは時の運だ。あなたとまた戦いたいし、最後には勝ちたい。」
・最後、ハラ軍曹が英語を学ぶところ。
・最後の「メリークリスマス、ミスターローレンス」
・不思議な音楽

自分だったらどう撮るか/盗めるポイント

・自分が借りを作るときにキーワードとしてセリフや動作を置き、最後にその借りを返してほしい時に同じことをする。(メリークリスマス→命を助けた、だから今度は助けてほしい)

画像引用元:
https://www.cinematary.com/writing/2020/6/15/merry-christmas-mr-lawrence-1983-by-nagisa-shima

追記:

以下のサイトにハラ軍曹についてのいい考察があったので共有します。
イギリス|なんで最後みんなハラ軍曹に同情してしまう理由がわからない...
アメリカ|彼は正義というシステムの一部であり、それは本人以上の強大なものだった。それが別の正義というシステムに破壊された時、何より尊ぶべき己れの行動指針に対して罪の意識を抱いたんだ。結末で酩酊する意識の中、ほんの束の間であってもハラは、ミスターローレンス側の文化を理解したんだ。それがこの映画のテーマであって、他文化への理解とそれによる自己認識なんだ。



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