なくて七草 花の名は。Vol.9
せりなずな
御形はこべら
仏の座
すずなすずしろ
これぞ七草
春の七草です。門外漢にはどこまでが草の名前?? 7つに分けられないけど?? と、なりそうです。カタカナにして区切りをつけると。セリ、ナズナ、ゴキョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、これぞ七草、となります。ただし、ストレートに標準和名そのままなのは、セリとナズナのみ。順にその素性を探ります。なお言わずもがな、春の七草は七草粥の材料にするもので、すべて食用になります。
セリは数少ない純日本原産の野菜(他にはフキやウドがあるくらい)です。別種のドクゼリと間違えなければ大丈夫。間違えたらそれはもう大変です。ナズナは別名がペンペングサ。どこにでも生えていますから、春の七草中、知名度ナンバーワンでしょう。ゴギョウはハハコグサの別名。ナズナ同様、どこにでも生えています。白い短毛に覆われた茎葉、黄色い花と、見わけも容易です。ヨモギのように草餅にも使われることがあります。
ハコベラはハコベ。ナズナ同様、これまた、どこにでも生えていて皆さんご存じのハコベ。ウサギやインコを飼っていると餌にしますよね。え、しない? すみません。柔らかくて人が食べても美味しそう。ところがこのハコベ、実は一筋縄ではないのです。直近の植物分類では近縁の2種、標準和名でコハコベとミドリハコベの総称または、どちらかの別称がハコベということになっています。コハコベは明治時代の外来種という説があって、どちらが七草のハコベなのか、専門家間で少々、揉めている様子。深入りすると大変かも。
必ず注釈がつくのはホトケノザです。標準和名でホトケノザという全然別の植物が存在するためです。食べられません。間違えて七草粥にしても、ドクゼリほどの害はなさそうですが。七草のホトケノザは、コオニタビラコ。別名、タビラコ。田平子と書きます。別種にオニタビラコ(鬼田平子)があり、それより小型だから小鬼田平子、なんですが。最初から単にタビラコでいいのにね? こうなってしまった経緯が何かあるんでしょうね。
スズナはカブ、スズシロはダイコンのこと。おや、これらは立派な野菜です。古代に渡来したとはいえ、海外原産の栽培植物なわけで。知ってしまうとなんだか違和感がありますね。セリは野菜としての生産量がわずかです。まだまだ野草として自生しているところが多いです。なので、スズナ、スズシロを除く5種は完全に「食べられる野草」です。プラス2種の野菜が、春の七草です。
年末ころから、七草粥として食べる用に、あるいはお正月も含めてお飾り用に、栽培された春の七草が販売されます。ダイコンが可愛らしく仕立てられて、小型のカブと並んで微笑ましいです。愛知県などが産地です。栽培にも出荷にも手間がかかるうえ、伝統文化への関心が薄れていることもあり、生産は年々減少しているとか。
七草、なくては困りますね。
秋の七草はまた、改めて。
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