旅の小エッセイ イタリア
1月31日に旅のスケッチをまとめた画集を刊行します。
そこに収録したエッセイ、6か国の思い出イタリア編です。
とある賞を受賞した。その授賞式がイタリアであるという。スーツを新調。
ドイツで乗り継ぎに失敗した。ゲート間が遠すぎた。乗るはずだった飛行機を見送る。
代替便の交渉は妻がしてくれた。十分時間はあったでしょうと係員が言っている。その横で僕は売店で買ったプレッツェルを食べていた。本場の味はめちゃくちゃ美味しい。代わりの飛行機は無料になった。
イタリアに深夜に到着。荷物が出てこない。システムがダウンしてどうしようもありませんとおじさんが言う。その背後の部屋には並んだスーツケースが見える。
ホテルに届けてくれるらしい。荷物無しでホテルへ。
ミラノはお洒落だった。服やモデルの撮影をそこかしこでしている。
ピザが美味しい。気分が高揚しスケッチも楽しい。ミラノを堪能した後、受賞会場のコモに移動。
コモはのどかな高級別荘地。夕食後に散策していると日本人グループをちらほら見かける。デザインについて話をしている。明日の授賞式に出るデザイナー達かもしれない。一様にタグを首から下げている。前夜祭があったのだろう。
翌朝、トイレに籠っていたら妻の大きな声が聞こえた。
授賞式は前夜であった。観光したい気分だったし、スーツをしまって出かける。
ロープウェイで山に登る。頂上からの眺めが良い。コモは湖に面した街。湖の上を飛空艇が飛んでいる。すごく絵になる。爽やかだ。
山頂のピザ屋で昼食。相変わらずピザが美味しい。ウェイトレスにあなたは絵描きですかと尋ねられる。スケッチ道具を見てそう思ったらしい。
「お願いがあります。小さな小さなサイズで良いのでユニコーンを描いてもらえませんか」とのこと。承諾すると、まあまあデカイ紙を持ってきた。何度も折りたたんで名刺くらいのサイズにしてユニコーンを描いて渡す。
下山中、売りに出ている別荘を見つける。価格の破壊力が凄い。
アジサイが美しい門の前で記念撮影をした。
話のネタに事欠かない旅だった。