国産WEBTOON『神血の救世主』が1000万viewsを突破できた理由を原作者と担当編集に聞いてみた!-マーケティング編-
『神血の救世主』がLINEマンガで1000万viewsを突破しました!
こんにちは!Sudio No.9マーケティング担当のナカジマです。
早速ですが、Studio No.9オリジナルWEBTOON『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ~』がLINEマンガで1000万viewsを突破しました!いえーい👏👏 👏
『神血の救世主』てどんなマンガ?
▼1話はこちらから
2022年9月14日にリリースしてから約8ヶ月間経ち、気づけば連載も50話を超えました。
リリース当初、WEBTOON市場ではトップランカーを走っていたのは韓国で制作された作品でしたが、最近では日本のスタジオ作品もとっても元気。我がスタジオの『神血の救世主』も同じく、更新する度に最新話がLINEマンガのランキング上位に入るほど読者さんに愛してもらっています。LINEマンガユーザーの方ならこの真っ赤なサムネイル、見たことがある方も多いんじゃないかと思います。
そんな人気の秘密を、今回はマーケティング視点で原作・ネーム担当の江藤俊司さんと、担当編集の遠藤に制作秘話を聞いてみることで紐解いていきたいと思います!
①目指したのはレストランのハンバーグ!?
ナカジマ 『神血の救世主』はStuido No.9が最初にリリースしたWEBTOON作品。企画立ち上げ時にはどんなことを意識していましたか?
江藤(以下敬称略)WEBTOONという遊び場があったとしたら、そこに「仲間に入れてほしい、一緒に遊ぼう!」というリスペクトの気持ちで参加させてもらったほうがいいよねと小林さん(ナンバーナイン代表)と話していました。俺は今まで横読みの漫画を描いてきたけれど、WEBTOONは競技が違うので最初からオリジナルのプレー(横読みの文脈でWEBTOONを描くこと)をするのは良くないかなと感じていました。当時よく使っていた合言葉があって、「WEBTOON市場というレストランがあって、ハンバーグが食べたいって読者が集まってきているとしたら、その方々にちゃんとハンバーグを提供しよう!」と。
遠藤 そういったコンセプトを引き継ぎつつ、僕は3話目から担当編集としてジョインしましたが、編集者としてはそれまで横読みで異世界転生ものの作品を中心に担当していました。異世界転生もので読者の方に受け入れられた考え方はWEBTOONでも使えると思っていて、中でも”主人公アゲ”の部分は本作でも重点的にチェックしました。
細かい部分でいうと主人公に余裕を持たせるために、汗をかいている表情から汗マークをとるなど細かい部分まで話し合っていましたね。
②「WEBTOONあるある」と「読者満足度」を意識した初期リリース話
ナカジマ なるほど、まずはWEBTOONの市場に対してをリスペクトを持って企画していったということですね。具体的にどうやってハンバーグを作っていきましたか?
江藤 まずはとにかくWEBTOONの人気作品を分析してどんどん解像度を上げていきました。そして、WEBTOONとして不可欠な要素をリストアップして、ストーリーに落とし込んでいく。「いじめられっ子の主人公が覚醒する」とか「世界が一変してモンスターが暴れる」とか。リストにチェックを入れていく感じで連載開始時に一挙にリリースされる15話分までを作っていました。その中で「ジュリエッタ」のような"小者感"のあるキャラを登場させるというのも課題の一つでした。
遠藤 マンガを読んでいると、登場するキャラクターが「作者の方に似ているな」と感じることが度々あります。江藤さんは人生のプライオリティーが「友達」とずっと言っているくらい情に厚い方で、作中に登場するキャラクターも仲間思いのキャラクターばかりです。
ナカジマ (わかる…!)
遠藤 一方、自分の利益のために他人を蹴落としても構わないキャラとして描くべきだったのがジュリエッタでした。でも江藤さんが描くと憎たらしい小者キャラもなんだか憎めない感じになってしまいます。
江藤 ここは遠藤くんにジュリエッタの演技指導してもらったね。
遠藤 出したい読み味のために「こいつ絶対許せん…!」というキャラをノリノリで演技指導しました!
ナカジマ 結果的にチャーミングなアクセントもありつつ、読者さんに愛されるキャラになりましたね。
江藤 あとは、『神血の救世主』でどのように勝負していくかと考えた時、連載当初の僕たちには積み上げたブランド力のようなものはまだありませんでした。だから、読んでくださった方の満足度を上げていくことしか道がないと思っていました。LINEマンガさんのコメントを読んでいると最後の”引き”に反応している読者の方がほとんどだと感じたんです。だから1話ごとの中身をボリュームのあるストーリー構成にして満足度を上げつつ、毎話”引き”に全力投球する。それが『神血の救世主』のブランド価値をじわじわ上げていく方法だって信じてずっとやってきたので、そこは成功したと思っています。
ナカジマ これは個人的に気になってるだけですが、江藤さんはかなり読者視点・マーケティング思考で制作していると感じます。クリエーターとして葛藤などありませんでしたか?
江藤 それはなかったですね。LINEマンガさんってコメント欄があるんじゃないですか。そのコメント欄を見てコメントを書いて下さっている読者の方へ向けて作品を作っています。少年ジャンプ+(※『終極エンゲージ』)で連載していた時から、読者が一番大事だと感じていました。元々接客業を長くやっていたことも関係してたと思うのですが、自分の作家性よりもコメント欄のお客さんが満足してくれる方が嬉しい。なのでLINEマンガさんで連載が決まったときは、読者の方と一緒に作品を育てていけると思いました。作家さんによっては読者の反応を気にされる方もいると思うんですけど、逆にお客さんの顔、読者の顔が見える方が個人的には楽です。
③長く愛される作品にするために意識したのは「キャラクター作り」
ナカジマ 『神血の救世主』は特にキャラクターが魅力的だと言われているし、読者からも人気があるキャラクターが多いです。
江藤 色々な作家さんがおっしゃっていますが、キャラクターを考える際に「ギャップを作る」のが基本として言われており、俺もそう思っています。言い方は悪いのですがゴールドプレイヤーの中で人気キャラの敷島とか比良坂は、「読者の方に好きになっていただこう!」とかなり狙いを定めています。
ナカジマ 具体的にいうとどんなギャップですか?
江藤 愛されるギャップを作らないと駄目というのがまずありますね。この人に何をしてもらったら嬉しいかが大事だと思ってるんです。敷島は「怖い先輩」なのに「自分のことだけは特別かわいがってくれる」とギャップを感じるしうれしい。比良坂は「雲の上の存在だと思っていた人」なのに「実はものすごく親しみやすい特徴がある」というようなギャップが見られると嬉しい。
遠藤 強キャラなのに自分よりできないことがいっぱいあると途端にかわいく見えますよね。
江藤 WEBTOONでよく用いられる主人公の語り中心で話が進んでいく構成だと、主人公の内面を描くのが中心となり、キャラクターとしてのギャップが作りづらいと考えています。なので主人公は、読者の方に感情移入していただくキャラクターとして創っています。主人公は読者の憧れや自己投影できる器にして、あとは活躍させればいい。WEBTOONは主人公で差別化されていることが少なくて大きく分けると「善人型」「悪人型」の2パターンくらいしかない。そんな中で、主人公の透晴は白米、透晴と一緒に行動しているキャラはおかずというセットで行動させていって、美味しければOKと思うようになった。最初は主人公がナビゲーターで、セットで行動しているキャラを活躍させる。だけど最後にバチッとキメるのは主人公という流れにしています。
ナカジマ 言われてみると透晴と一緒にいると周りがキャラ立ちしますね。
江藤 そもそもWEBTOONはいつでも無料で読めてしまう分、定期的に読みに来てもらう習慣を作らなきゃいけないです。そのためにはキャラクターに会いに来てもらえる作品にしないといけないなって思っているんです。だからまた会いたいなって思うようなキャラを作れば作るほどを読者の皆さまに愛されるコンテンツになっていく。キャラクターIPは、「そのキャラを好きな自分が好き」とユーザーに思ってもらうことが究極の理想像。比良坂のことが好きな自分が好きってお客さんに思ってもらえるキャラを目指しています。
ナカジマ 「推しを応援している自分が好き」というのが推し活のインサイトとも言われていますよね。
江藤 だからキャラの一貫性はとっても大事にしています。制作には直接関係ないんですが、作家友達に「漫画には絶対にテーマがある」とずっと言われていて。それまで俺はテーマについて理屈で考えていて、自分の作品に一貫性があるとは思っていなかったんです。だけどある時「江藤さんは友達が一番大事っていう漫画しか描いてないじゃない」と言われて、作家としての価値がその時分かった。「友情」が自分の一番の強みで「友情」を表現するにはキャラクターが必要で、そのキャラを読者に愛してももらわないと意味がない。「友情」を表現するものとしてキャラ同士の友人関係を描かないといけないと思っています。
遠藤 漫画の創作論として「キャラクターが大事」っていうのは度々耳にしますが、編集を始めたての頃は「キャラが勝手に動き出す」みたいのがあんまりよくわかっていなかったんです。でも江藤さんと一緒に作品を創っているとその感覚がどんどん掴めてくる感触があります。「このキャラってこういう行動原理なはずだから、ここではこういう行動や発言をするほうが自然だと思います」というようなことを突き詰めて話し合ってますね。
江藤 キャラクターを愛してもらう上でそういった「なんとなく違和感を感じる」状態はよくない。今はキャラクターの行動をベースに考えて、そのキャラが活躍する事件を後から考えています。会いに行きたくなるキャラクターを創るためのエピソードや展開が大事なので、逆に展開って何でもいいんだというのが発見でした。
遠藤 そういった狙いが当たったのか、リリース3ヶ月が経ったタイミングでLINEマンガ男性1位を獲得できました。リリースしてから時間が経った作品がランキング1位を獲得するのは、WEBTOON作品では比較的珍しい例かなと思います。
江藤 社内で制作していることもあって、リリース3ヶ月後のタイミングに大きなプロモーションを実施すると早めに聞いていました。プロモーション時期に合わせてキャラを掘り下げする展開にし、ファンの定着を図ったのがしっかりと当たった。ここはプロモーションと作品の内容がバッチリマッチしたのがよかったですね。
ナカジマ チーム一丸となって作品を創っていった結果のランキング1位ですね。聞きたいことはまだまだたくさんありますが、今回はこの辺で!江藤さん、遠藤さんありがとうございました!
遠藤 今第二部が始まって、新キャラも続々登場しています!みなさん、今後とも『神血の救世主』をよろしくお願いします!
江藤 いつもご愛読ありがとうございます!!新章突入後も『神血の救世主』をよろしくお願いします!!
チーム一丸となって達成しました
このようにStudio No.9では江藤さん含め、線画担当の疾狼さん、背景担当の3rd Ieさん、着色担当の社内クリエーター、編集、マーケティングユニットが一つのチームになって作品を盛り上げています。誰が欠けても1000万viewsを達成できなかったと思います。
社内でも作品のファンが多く、有志で「神血を語る会」が開かれるほど。かくゆう私も比良坂推し!江藤さん、遠藤さんの打ち合わせの声が聞こえてくる度ネタバレにビクビクしています 笑
これからもどんどん面白い作品になっていくことは間違いなし!皆さま楽しみにしていてください!
次にくるマンガ大賞2023へのノミネートを目指しています!
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