田楽みそと一休寺納豆
土台レシピ4「田楽みそ」
蒸して、焼いて、炒めて…。 和洋中、どんな料理にも使える調味料
長野の山暮らしをはじめてもう33年になろうとしています。
寒さが厳しい冬のあいだは、直売所に行っても野菜は限られていて、ジャガイモや大根などをコソコソと買っては粗食の毎日です。
豆腐を揚げて田楽にしたり、人参でナムルを作ったり。中華セイロで蒸した冬野菜をドレッシングやタレで食べるだけでもごちそうです。
控えめな(質素)食卓の方が心が穏やになれるような気がしますし、一汁二菜ぐらいが胃にはちょうど良く、身体への負担が軽くて具合がいいのです。
田楽みそ。
この「土台」は、豆腐や野菜の田楽はもちろんですが、蒸し野菜、中華味噌炒め、酢味噌などに活用できるので、なるべく常備するようにしています。
例えば、
春は山菜や菜の花で「酢みそ」に。
夏は茄子、ピーマンなどで「中華みそ炒め」。
秋から冬にかけては大根や里芋などをふろふきにして田楽を。
豆腐&厚揚げは季節に関係なく田楽にします。
今の時期はふきのとうを炒めて、そこに田楽みそを加えて「ふき味噌」に。
田楽みそにネギや大葉を加えても。
油揚げの袋を開き、ネギを多めに入れた田楽みそを詰めて、焼き網やフライパンで焼くとオツな一品になります。
豆腐をフライパンで焼き、田楽みそを塗り、チーズをかけてオーブンで焼けば、ごはんと味噌汁にも合う一品に。
湯豆腐に田楽みそ+ネギミックスをのせて。味噌湯豆腐もいいものです。
田楽みそは白みそと赤みそ、どちらを使ってもおいしいけれど、私は赤みその田楽を好んで作ります。強そうな色なのに、口に入れると口当たりがやわらかく、そのアンバランスさがまた好きなのです。
舌は十人十色。味噌の好み、甘さの好みはみんな違いますから、味を見ながら(素描しながら)自分の味にすることが大事です。「ちょっと甘いかなぁ」ぐらいがちょうど良いバランスなのかなぁと個人的には思いますけれど。
市販の田楽みそはひどい甘さのものが多いので、全く基準にはなりません。自分の舌で感じる「ちょっと甘い」〜「わりと甘いけれどおいしい」ぐらいを目指してください。
下記のレシピは、長野県の味噌蔵の赤味噌と、オーガニックシュガーを使って、私好みの甘さにした田楽みそです。
他の味噌と砂糖であれば当然、味も甘さも違いますから、数字はアテにせず、味見をしながら自分の味を見つけてください。
1.すべての材料を小鍋に入れて、泡立て器などを使ってよく混ぜる。
2.コンロに置いて火をつける。最初は中火、沸騰したら弱火で、泡立て器で練り混ぜながら火を入れる。じっくり火を入れることで、保存性が高まる。
黄身が固まりやすいので、常に混ぜる。
3.混ぜたときに、泡立て器の線が出るぐらいになったら出来上がり。
*冷めると硬くなるので、若干柔らかい状態で火を止める。
*白味噌は甘いので、砂糖を抜くか減らして作る。
容器に入れて冷蔵庫で保存する。
陶器製の小壺がオススメ。保存状態にもよるが、2ヶ月ほど保つ。
プラスチック性の容器で保存するときは、田楽みその表面にラップをピッタリと密着させるとよい。プラスティック容器は小壺ほど長持ちしないので、早めに使うようにする。
作りはじめてから15分もかかりませんでした。
「豆腐田楽」を家庭で作る場合は、炭火焼きするわけにはいかないので、水分を十分取った豆腐をカットしてフライパンで両面焼き、田楽みそ(だしや日本酒で少しやわらかくすると使いやすい)をのせるか、ハケなどを使ってみそを豆腐に塗り、両面をさっと焼きます。
私はよく「揚げ豆腐田楽」を作ります。
揚げるというのは主婦がいちばん嫌がる調理法ですねぇ。でも揚げたての豆腐ほどおいしいものはありませんし、スーパーの厚揚げは硬くておいしくないので、素の料理には合わないのです。
豆腐を4等分してふきんに挟み、軽めのまな板をのせて30分ぐらい置いてから、180度〜190度の油で揚げます。豆腐屋の厚揚げのような’2度揚げ’はしません。
揚げ豆腐は定番の「醤油+生姜+大根おろし」で食べると最高ですけれど、田楽みそをつけて食べるとまたいいものです。
野菜の田楽は「ふろふき」にします。
ふろふきとは、カブ、大根、里芋などの野菜を煮たり、蒸したりしたものを言います。
煮る場合はだし汁で野菜をやわらかく煮ます。水と昆布で煮てもいいし、鰹と昆布だしでもいいですね。
蒸してもいいですね。中華セイロであれば、いったんコンロで蒸し、食卓でカセットコンロの上にセイロをのせて、弱火で温めながら熱々を食べるのもオツです。
長野県御牧村に住んでいた故・水上勉さんは、まず大根を味噌汁でやわらかく煮てから火で炙り、白味噌の田楽にしていたようです。
田楽みそを使った洋風料理としては「豆腐の味噌チーズ焼き」。
豆腐をフライパンで両面焼き、田楽みそを塗って、チーズをのせてオーブンで焼き上げたもので、オツな一品です。
調理法は人それぞれ。料理にルールはありませんから、どうしたら良き味になるのかを探っていくのが、本来の料理のあり方だと思います。
料理は自由にね。
さて、次は田楽みそを使った「中華みそ炒め」をご紹介します。野菜版の’回鍋肉’です。
具材は決まっていなくて、我が家では1種類〜3種類ぐらいの野菜とか、野菜プラス厚揚げ(or 油揚げ)とか、野菜室に眠っている食材を使うことが多いです。
夏の茄子のみそ炒め、秋のきのこのみそ炒め、冬の厚揚げと蓮根のみそ炒め、春キャベツと椎茸と油揚げなど、品を替えれば無限に作れます。
1.合わせ調味料をを混ぜわせておく。
2.食材は食べやすい大きさに切る。
3.鉄フライパンに油を大1ほど入れて強火で熱する。煙が出てきたら2.の食材をさっと炒める。あとで炒め合わせるので、ここでは8分ほど火が通ればよい。いったん取り出しておく。
火の通りにくい野菜を最初入れて、時間差で炒めると最後までパリッと感が残る。
4.鉄フライパンを一度洗い、強火で火をかける。水分が飛んだら油大1を入れる。煙が出てきたら弱火にし、薬味野菜と中華調味料を入れて炒める。
*我が家では、豆板醤は「ピーシェン豆板醤」(四川の豆板醤)、トウチジャンの代わりに「一休寺納豆」(下記参照)を使っている。
6.強火にし、炒めた食材を戻し、ジャジャっと10秒ほど炒め、1.の合わせ調味料を加えて水分がなくなるまで炒める。終始強火。
香りの強いごま油をひとまわしして火を止める。出来上がり。
豆板醤とトウチジャンがなければ、唐辛子を使ってください。
中華調味料がなくても構わないんです。それはそれでおいしい味噌炒めになりますから。
土台である「田楽みそ」。
そして土台を使った土台料理「味噌炒め」。
どちらも自分の料理を広げていける、しっかりした土台です。
こうしなさい、ではなく、これもあり、あれもあり、を自分で体感してみてください。
一休寺納豆について
「一休寺納豆」は数百年前から作られている発酵食品で、一休禅師がその製法を伝授されました。京都の「大徳寺納豆」は有名ですが、一休禅師が大徳寺に伝えたとされていて、一休寺納豆が本家本元です。
麹、はったい粉、大豆を1年間発酵させ、2年熟成させます。お寺のお店に並ぶまで3年かかるということです。しかも賞味期限がない!
味比べすると、大徳寺納豆より一休寺納豆の方が発酵と熟成度が長いため、コクと塩気が強く、深い味わいです。チーズと同じで発酵独特の香り!この香りだけでからだの細胞が活性するんじゃないかと思うほど個性的です。
一休寺で副住職と奥様にお目にかかったときに、この一休寺納豆を頂いたのですが、この独特の香りと塩気、そして強い旨味に圧倒されました。時間が経っても旨味がずっと口の中に残るんです。いや、旨味がどんどん増してくる感覚...。フランクな話、コンビニ弁当ばかり食べている人にはこの味は理解できないかもしれない。っていうか、味が分からないという人には、こういうものを舌に感じてもらって、ほんとうの旨味というものを舌に覚えさせるのって、案外いいんじゃないかって、本気で思いました。
トマトソースに一休寺納豆を入れると、まるでポルチーニ茸を入れたようなコクと香りに。
豆鼓代わりになるので、中華料理に。
日本酒や赤ワインの肴にも。
京都の料亭では蒸し物に使われることもあります。
一休寺納豆は京都「酬恩庵一休寺」で販売しています。
お寺のオンラインショップでも販売していますので、ぜひ!