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料理の物差し

土台レシピ11・シャクシュカ

目次
味を翻訳する
 ・数字を過信しない
 ・舌で読む 
 ・物差しは1mmずつ
土台レシピ11・シャクシュカ

味を翻訳する

料理するときに、数字は盲点です。

「レシピ通りに作ったらおいしくなかった。」
というのはよくあること。舌の感覚はみんな違うし、調味料が違えば当然、味に影響します。家族構成や年齢によっても味つけは変わりますし、甘みの強い料理を好む人もいれば、薄味や辛味が好きな人もいる。男子は往々にして濃い味を好むし、私の知り合いには砂糖を全く使わない人もいます。
環境に応じて味を翻訳するのが、台所に立つ人の仕事ですね。

それにはレシピの分量や調理時間など、数字に安心しないこと。つまり、過信はしてはいけないということです。

とにかく同じ料理を何度となく作り、手の感覚、音、香り、目、舌などの「料理感覚」を掴んでいく。それしか方法はないと思っていい。
ぼーっと料理をしていたら料理感覚はつかめませんから集中して。「ながら料理」は禁物です。

ひとつひとつの動きや味を意識をしていくこと。

これがポイントです。

失敗したら覚えておく。
薄かったな。濃かったな。火を入れすぎたな。
〇〇を足せばもっとおいしかったかもしれない。
自分が思い描く味にどれだけ近づいたんだろう。
煮込み時間はもう少し長いほうがいいかもしれない。
など、次に何ができるかをチェックします。

良いひと皿になったときも覚えておく。
どんな風に調理したのか。
何がおいしくさせたのか。
何を変えたらおいしくなったのか。
ざっとでいいから分析しておきます。

料理は火加減とか、油や水分の量で、びっくりするほど仕上がりが変わることもありますから、何気ない動きが実はおいしく(または不味く)なるポイントかもしれません。

私は自分が作成したレシピにメモをしておきます。何度も書き足すので日付も記しておいて、最後に書いたメモが分かるようにします。
また「今度は〇〇しよう」など、次に作るときのヒントも書き記しておきます。そうやって、ひとつの料理の歴史を作っていくんですね。

レストランで食べたときも同じです。味を自分なりに解釈してみます。舌で読むわけです。外食は味つけの勉強になりますから、どうおいしいのか、自分とどう違うのか。逆にどうしておいしくないのか。そういうところを見ていきます。

ときに私は図々しくシェフに聞くこともあります。
バリ島では厨房に入って料理を教えてもらったこともありますし、イタリアでは飛び込みで料理を教わったこともあります。

みんなが「おいしい」と言っているのに、自分はそう感じないときもありますよね。それでいいのです。感じたまま、ありのままを自分自身に伝える。

やわらかい、硬い。
濃い、薄い。
はっきりした味、ボケた味。
甘い、辛い。
沁みる、心地いい、深みがある。
濃くておいしいのか、不味いのか。
薄くておいしいのか、不味いのか。
舌の奥で引っかかる。
塩味のバランスがいい(悪い)。
素材の味がうまく出ている(出ていない)、など。

「おいしい」という表現だけじゃなくて、感じた味をほかの言葉で表現してみます。

舌と脳をつなげる感じでしょうか。
そうやって時間をかけて舌の能力を伸ばしていく。1mmずつでいい。それが自分の物差しになっていきます。

長年料理しているベテランの人と初心者では、当然、物差しは違います。けれど、初心者は初心者なりの物差しで測っていけばいいし、長年料理していても、物差しがない人もいます。
今日から「自分の物差し」で測っていけばいいのです。

家の料理というのは超個人的なことです。外食産業とは目的が違う。不特定多数の人を「おいしい」と言わせなくていいんです。周りの人たちを幸せにしていくことが目的だから。
そういう身近な幸せが私は好きだし、それが本来の料理のあり方だと思います。

土台レシピ11・シャクシュカ

カレーとトマトソースを合わせたような
「シャクシュカ」

さて、今日はちょっと変わった料理をご紹介します。
「シャクシュカ」
シャクシュカはトマト & 卵料理です。元祖はチュニジアと言われていて、それがアラブ国家や南ヨーロッパに広がっていきました。イスラエル、エジプト、イタリア、スペインなど、国によって少しずつ作り方が違います(名称も違います)。
ソーセージ、魚、葉物、パプリカ、茄子、ズッキーニなどの野菜…。自由にいろいろな食材を入れます。
一般的には朝食として食べられていますが、夕食のメイン料理としてアレンジしました。豆をいれて、カレーのようにごはんと食べてよし、もちろんパンと一緒に食べてもおいしい、我が家の定番料理です。

この料理を端的に表すと「スパイシートマトソース with 目玉焼きのせ」という感じでしょうか。
スパイスが入ったトマトソースがベース。そこに好きな食材を入れ、トッピングに卵を割って火を入れます。

生トマトを使ってもよいのですが、今回はトマト缶を使って、いつでも簡単に作れるようにしました。
生トマトを使うときは湯剥きをして刻み、鍋で水分を飛ばしながら煮詰めておきましょう(日本のトマトは水っぽいので)。

トマトソース+スパイス+食材+目玉焼き=シャクシュカ

という方程式になります。
さぁ、作ってみましょう。

シャクシュカ(3〜4人)
ニンニク ひとかけ(みじん切り)
玉ねぎ(小) 1個(みじん切り)
野菜:パプリカ(オススメ!)、キノコ、ズッキーニ、茄子(焼き茄子を入れるのがベスト!)など、トマトソースに合う野菜1〜2種類を両手一杯ぐらい。
煮豆:ひよこ豆(オススメ)、白いんげん豆、金時豆など、1カップ
トマト缶 1個
唐辛子 1本(半分に切って種を出す)
クミンパウダー 大1
コリアンダー、パプリカパウダー 各小1・1/2
卵 3〜4個
塩、こしょう 適量
パセリ(あれば仕上げに)

1.フライパンにオリーブオイル大3〜4を熱し、ニンニクを入れる(ニンニクは焦げやすいので弱火にする)。

2.ニンニクの香りが立ってきたら玉ねぎと唐辛子を入れて炒める(中火)。

玉ねぎに甘みが出て
やわらかくなるまでじっくりと

3.玉ねぎの色がきつね色になって、油が浮いてくるようになったら、一旦火を止め、スパイス3種を入れ、再び火をつけて、弱火で1〜2分炒める。*スパイスは焦げると苦くなるので、焦げないように注意。

スパイスを弱火で1〜2分炒める
焦げないように注意する

4.野菜を加えて炒める(野菜によっては柔らかくなるまで時間がかかるので、蓋をして蒸し煮にする)。

食材は好きなものを
今回はパプリカ。蓋をして蒸し焼きする

5.トマト缶を手で潰し、加える。

6.煮豆を加えて10分ほど煮込み(中火)、塩、こしょうで味つけする。*蓋はせずに水分を飛ばすように煮込む。
10分というのはあくまで目安。水分が飛んで油が浮くようになってきたらOK。

トマトソース+スパイス+食材=ベースの出来上がり
そこに卵を割って入れる

7.スプーンで凹みを作り、そこへ卵を割って入れる。

8.蓋をして、弱めの中火で卵が半熟ぐらいになるまで火を入れて出来上がり。パセリがあれば散らす。

フライパンのまま食卓へ


私が好んで使う食材は、ひよこ豆、パプリカ、焼き茄子。今回もその3種を入れました。ひよこ豆1カップ、パプリカ半個、茄子2本。
豆が入ると満足感があるので、私は必ず入れますが、豆がないときは他の食材を使ってください。

豆の中でも大好きな「ひよこ豆」は、私は土鍋で多めに煮て、小分けにして冷凍しておきます。
シャクシュカのほか、カレーやファラフェル(中東の揚げ物)、サラダなどに使えるので重宝しています。

茄子は網で焼いて皮を剥きカットし、トマト缶を入れたあとに加えます。スモーク風味が加わり、一段とおいしいシャクシュカになります。

焼き茄子は網で焼くとスモーキーな香りに

ポイント
・食材は何を使ってもおいしいですが、トマトと合うものは何か、を考えて選んでください。ほうれん草などの葉物もおいしいですし、意外にアボカドもおいしいです!

・生野菜をトマトソースと一緒に煮込んでもやわらかくなりません。トマト缶を入れる前に、野菜をやわらかくなるまで蒸し焼きして、しっかりとやわらかくしてください。

オリーブオイル大3〜4というのは、少し多いと感じるかもしれません。けれどオイルでおいしさを引き出す料理というのは色々あって、無闇にオイルを減らすと、おいしさが半減することはよくあります。ジレンマではありますけれど…。
トマトソースとカレー、どちらもオイルを大さじ3は入れますね。特にカレーはオイルにスパイスの香りを移すことで香りも味もぐんとよくなりますから。
騙されたと思ってシャクシュカも、オリーブオイル大3〜4で作ってみてください。もちろん諸事情で油をあまり使えない場合は少なめに。

「物差し」というは、たくさん作って失敗して、おいしく作れたときには食べる人と一緒に喜びながら、ゆっくり育んでいくことで、伸びていくのだと思います。

自分の「おいしい」はどこなのか。
それが物差しの出発点なのだと思います。

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