パリ五輪 男子バレーボール 日本‐イタリア Match Report
今回は先日集計したパリ五輪のデータを用いて、マッチレポートを書いてみたいと思います。選んだのはタイトルにもあるように、パリ五輪の男子バレーボール、日本対イタリア戦になります。
結果は既にご存じの人のほうが多いかと思いますが、惜敗、しかし良い試合でした。
この試合の後、X(旧Twitter)では“サーブミス”が話題となっていました。多くの人が日本のサーブミスを非難していましたが、中にはハイキュー!!を引用しながら、攻めた結果であるとフォローしている人もいました。
この意見に自分も賛成なのですが、一方で、試合を見ていて感じたのは、“攻め手に欠けたためにリスクのあるサーブを打たされた感”です。なんというか、サービスエースでも取らないと、得点ができないようなプレッシャーをイタリアから感じました。そのため、上手くいけばサービスエースになるけれど、ミスになるリスクも大きいサーブで攻めざるを得ない状況に追い込まれたような感じです。
あくまで印象ですが、データを見ながら何か示唆するものはないか検証してみたいと思います。
日本のサーブミス
最初に確認するのは日本のサーブミスです。そもそも日本チームがサーブミスの多いチームだったのかということを確認しておきたいと思います。
以下の図1-1には、試合ごとの各チームのサービスエース率(Point%)とミス率(Error%)のデータを示します。
縦の軸がサービスエース率(Point%)、横の軸がミス率(Error%)になります。日本のデータは赤い●で、イタリア戦は◇で示しています。
日本のデータはイタリア戦を含め左寄りなので、それほどミスが多いチームとはいえません。プロットの右下、サービスエースが少なく、ミスが多い領域に日本の●が1つありますが、これはアメリカ戦の結果となります。
図1-1は試合全体の結果ですが、セットごとにデータを見た場合、良いセットと悪いセットの差が激しい場合も考えられます。以下の図1-2にセットごとの集計結果を示します。
データの見方は図1-1と同じです。セット単位のデータなのでプロットの数が増えましたが、日本のデータに極端なものがあるとはいえません。1点、イタリア戦の◇が右下のサービスエース率0%の所にあります。これは5セット目の記録になるのですが、これが強く印象に残った可能性は考えられます。
イタリアのサイドアウト率
次は、イタリア側のサイドアウト率を確認してみたいと思います。サイドアウト率とは、レセプションから始まるラリーでの得点率になります。イタリア戦で感じた日本のサーブ時の攻め手の無さが、イタリアのサイドアウト率の高さに現れているのではないかと考えたからです。
以下の図2-1には、試合ごとの各チームのサイドアウト率(Sideout%)とブレイク率(Break%)のデータを示します。ブレイク率(Break%)とは、サーブから始まるラリーでの得点率になります。
縦の軸にサイドアウト率(Sideout%)、横の軸にブレイク率(Break%)を取っています。イタリアのデータは緑の●、日本戦は◇で表しています。
イタリアのプロットは上のほうにあるので、サイドアウト率の高い、つまり日本から見れば、サーブから始まるラリーで得点するのが難しいチームといえます。
次に、セットごとのデータを見て行きたいのですが、サイドアウト率(Sideout%)の性質上、勝ったセットでは高く、負けたセットでは低くなりがちです。そこで、勝ったセットと負けたセットで別々にサイドアウト率(Sideout%)とブレイク率(Break%)を集計しました。以下の図2-2-1(勝)と図2-2-2(負)にデータを示します。
図2-2-1の勝ったセットでのサイドアウト率(Sideout%)を見ると、それほど際立って高いとはいえません。一方、図2-2-2の負けたセットを見ると、イタリアのサイドアウト率(Sideout%)はかなり上のほうに位置しているのがわかります。簡単にはセットを落とさない強さを見ることができます。1セットだけサイドアウト率(Sideout%)の低い◇がありますが、これは日本戦の1セット目で、ここから立て直したといえます。
日本のサーブとブレイク率
最後に、日本のサーブとブレイク率の関係を確認してみたいと思います。こちらは日本の4試合のサーブから始まるラリーでの結果を、サービスエースによる得点(Break:SERVE_Point)、その他の得点(Break:Other)、サーブミスによる失点(VS_Sideout: SERVE_Errors)、その他の失点(VS_Sideout: Other)の4種に分けて集計しました。データを以下の図3に示します。
日本の試合のセットごとに集計しています。黒い枠線のあるセットは日本が落としたセットになります。
右から5本の棒がイタリア戦になります。ここで注目したいのは、オレンジの部分(その他の得点)と、青の部分(その他の失点)の内訳です。
イタリア戦の青の部分(その他の失点)の部分は1から5セットでほぼ一定ですが、オレンジの部分はセットが進むごとに少なくなっています。これが意味する所は、サーブを除いた部分での得点が難しくなっていることを意味します。得点では競っていましたが、試合が進むごとに苦しくなっていったといえると思います。この状況を打開するには、ミスのリスクはあるものの強いサーブを打つしかないとなるのも自然かと思います。
まとめ
以上、日本のサーブとブレイク、イタリアのサイドアウトのデータを見てきましたが、試合中感じた攻め手の無さ、イタリアのプレッシャーを裏付けるようなデータを見ることができたと思います。
正直、日本代表がオリンピックにも出られずに苦しんでいた時期を知っている身としては、現状は満足とはいえなくとも悪くはないところまで這い上がってこれたと感じています。しかし、もっと上を目指したいというのも事実。
それでは日本はどこを改善すべきかというと、“サーブをミスしないように気をつけること”ではないですよね。
サービスエースが奪えれば上々、そうではない時にどうやってブレイクを増やしていくか、そこに課題があると思います。また、なんでイタリアはこんなにサイドアウトがとれるの?というところも研究が必要でしょう。
以上をマッチレポートとさせてもらいます。こんな感じで気になったところを簡単なところであれば、間接的にでも検証はできます。データについては下記にて共有できるようにしていますので、興味がある人はチャレンジしてもらえればと思います。
タイトル画像:いらすとや