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【絵本感想】『 かぜのでんわ 』



「 会えない想いを、風がつないでくれる 」




👑第12回ようちえん絵本大賞👑

作・絵:いもとようこ
出版社:金の星社



👀 読書感想 👀


『かぜのでんわ』は、山の上に置かれた不思議な電話を通じて、大切な人に想いを伝える物語です。

電話線が繋がっていないにもかかわらず、誰かに話すことで気持ちが届くと信じられており、次々と様々な動物たちがこの電話を訪れます。

最初にやってくるのは、たぬきの坊やです。
遠くへ行ったお兄ちゃんに、「早く帰ってきて」と一生懸命訴えかけます。

次に現れるのは、うさぎのお母さん。
亡くなった子どもに「元気にしてる?」と語りかけ、いつも通りの子守歌を優しく歌います。

その後、狐のお父さんが涙を流しながら、亡くなった家族に「ありがとう」と感謝の言葉を伝えます。

猫さんは神様に、命や死の意味を問いかけます。

どの登場人物も、それぞれ大切な人に何かを伝えようと必死です。

物語の終盤、電話を設置したくまのおじいさんが登場します。
雪の降る夜に電話のベルが鳴り、おじいさんは驚きながらもその音に導かれて山を登っていきます。
やがて電話の前にたどり着いたおじいさんが受話器を取ると…。


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この絵本を読んで感じたのは、人々が大切な人への想いをどれほど強く抱いているかということです。

たぬきの坊ややうさぎのお母さん、狐のお父さんたちは、もう会えなくなった家族に対して、言葉にできない悲しみや寂しさを抱えながらも、それでもその気持ちを電話で伝えようとします。

その行動がとても切なく、同時に心に温かいものを感じました。



特に印象に残ったのは、狐のお父さんのシーンです。

最初は怒りや悲しみでいっぱいですが、最後には「ありがとう」と感謝の言葉を伝えます。

人は別れの瞬間に何を感じ、何を伝えたいのか、その気持ちがリアルに伝わってきました。

大切な人に伝えたい想いが心の中で大きくなり、たとえ直接伝えることができなくても、その想いは消えることなく続いていく。

そんな風に、誰かを想い続けることの大切さを感じさせられる物語でした。


物語の中で描かれる風景や自然も、登場人物たちの心情をうまく表していて、特に雪が止み星が輝く場面は美しく、感動的でした。


この絵本を読んで、「もう会えない」という現実に向き合うときの切なさや寂しさが、胸にしみわたりました。

大切な人に伝えたいけれど、もう直接言えないことってありますよね。

でも、言葉にできなくても、その思いはどこかに届いているのかもしれないと思えたんです。


もう会えないけれど、気持ちを伝えたい大切な人がいますか?


もしそうなら、この物語がきっと、その想いにそっと寄り添ってくれるはずです。


この絵本、ぜひ『あとがき』まで読んでみてください。
私は、あとがきを読んだ瞬間、こらえていた感情が溢れてしまいました。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



■ SNSでの感想


つたえて、あのひとに……
やまのうえに 1だいの でんわが おいてあります。
きょうも だれかが やってきました。
せんのつなっがていない そのでんわで はなしをするために。

金の星社HPより引用

付録:その他のおすすめ感想文



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