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映画だけじゃもったいない!原作『魔女の宅急便』の奥深い魅力【童話感想文】




「 映画とは別の角度で楽しむ、魔女キキのもう一つの世界 」




👑あの名作アニメ映画の原点👑

角野 栄子 作 / 林 明子
出版社:福音館書店



《 読書感想 》

『魔女の宅急便』シリーズは、一人の少女キキが自立し、成長していく姿を描いた物語です。その描写は、風が木々の間を通り抜けるような爽やかさがありながら、時にその風が大地を強く揺さぶるような力強さも感じさせます。1作目から最終巻まで、キキの人生がどのように形を変え、色を深めていくのかを見守るのは、読者にとってまさに冒険そのものでした。

第1作目『魔女の宅急便』では、キキが13歳で新たな街に飛び出し、魔女として、また一人の少女として奮闘する姿が印象的です。ほうきに乗って空を駆け、宅急便屋さんを始めるというユニークな設定は、読者に自由と可能性の広がりを感じさせます。こんな仕事ができるなんて楽しいだろうな、と自然に想像が膨らみます。パン屋のおソノさんや、好奇心旺盛な少年とんぼとの出会いは、温かさと希望を運んできてくれます。キキの少し不器用で真っ直ぐな性格は、とても愛らしく、応援せずにはいられません。

物語が進むにつれ、キキはさまざまな経験を重ね、大人の女性へと成長していきます。彼女がぶつかる壁や、悩む姿は私たち自身を映し出しているようで、思わず考えさせられます。その壁を乗り越えるたび、キキの中に何か新しいものが芽生える様子がとても鮮やかに描かれています。自立だけでなく、仲間や家族、地域社会とのつながりの中で成長していくキキの姿は、寄せては返す波のように穏やかでありながらも、強い意志を感じさせます。例えば、街のイベントで自分の魔法を役立てようと奮闘するシーンや、地域の人々と一緒に困難を乗り越える場面は、キキがただの"魔女"以上の存在になっていることを実感させてくれます。

第6作目『それぞれの旅立ち』では、キキは双子の母親となり、かつての彼女と同じ13歳の子どもたちの旅立ちを見守る立場にいます。親としての喜びや葛藤、そして未来への期待が、子どもたちの成長を見守る温かな眼差しや、時に彼らをそっと励ます描写を通して丁寧に描かれています。キキが少女時代から抱えていた純粋さや強さがまた違う形で表現されています。双子たちが自分の道を探し始める姿は、キキの冒険が次の世代に引き継がれたかのようで、読んでいて胸が熱くなりました。

この6冊を通じて、キキの成長はもちろん、彼女を取り巻く人々の優しさや絆が細やかに描かれています。特に、キキが見せる迷いや弱さは、読者に「完璧でなくてもいいんだ」という大切なメッセージを届けてくれます。例えば、キキが大切な荷物を届ける途中で困難に直面し、自分の力だけでは解決できず、地域の人々の助けを借りる場面は、試練の中で助け合いの大切さを学ぶ瞬間でした。また、新しいパン屋の手伝いを始めたとき、自分の不器用さに悩みながらも次第に上達していく姿は、努力と成長の喜びを鮮やかに描いています。このように、人生における試練や喜び、新しい扉を開く瞬間の美しさを教えてくれるこのシリーズは、優しい風に包まれるような心地良さを感じさせてくれる「成長の物語」です。

最後に、『魔女の宅急便』シリーズは、全ての読者にとって、人生を楽しむための小さなヒントを教えてくれる作品だと思います。キキと共に旅をすることで、私たちもまた新しい一歩を踏み出す勇気をもらえるのではないでしょうか。この物語がこれからも多くの人々に愛され続けることを、心から願っています。

今回は絵本ではなく、童話版の感想を書いてみました。

映画は大好きで何度も観ていたのですが、原作があるとは知りませんでした。

映画で描かれたキキの成長や冒険とはまた違う、原作ならではの深みや物語の広がりを感じられ、とても面白かったです。

映画と原作の違いを見つけながら読み進めるのも楽しいかもしれません。



そして、トンボとの恋の行方は…おっとネタバレ禁止ですね。
友情の中に芽生える微妙な感情がどう描かれているのか、読んでみてのお楽しみです。



ぜひ、原作の『魔女の宅急便』の世界を味わってみてください。





最後までお読みいただき、ありがとうございました。



■ ネットでの作品紹介・感想



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~ これまでの感想文 ~


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