五寸釘-心臓

修二と彰

ラーメンチャーハンセットが売りの店に行く。

メニューはラーメンとチャーハンセットのみ。ラーメンと炒飯への熱い思いを嫌でも感じる。

店は二人体制で、一人は配膳や会計をするバイトの若い女性、店主は調理担当だ。

この店の特徴として、まず料理が出てくるのが遅い。客の半分以上がセットを注文するのだが、この炒飯を作るのにかなりの時間がかかるのだ。

そして、絶対にラーメンを先に出す。これは譲れないこだわりらしい。それから炒飯を作るものだから、ラーメンを半分以上食べ終わった頃にようやく炒飯が到着する。

本当は同時に提供して欲しいものだが、出来立てを食べるためには仕方ない。やはり料理は出来立てが一番だ。

そんなことを考えながら待っていると、厨房がざわついている。

どうやら、勘違いで既に提供済みの炒飯を3つ余計に作ってしまったらしい。セットを待っている客は他にもいるので、そいつ等に出せばいいと思うが、思い出して欲しい。この店では絶対にラーメンを先に出す決まりなのだ。この炒飯を先に出すわけにはいかない。

どうするのか見守っていると、店主は炒飯を厨房の隅によけ、ラーメンを作り始めた。嫌な予感がする。いや、きっと俺の思い過ごしだ。これだけこだわりのある店だ。絶対に出来立ての炒飯を提供してくれる。俺は信じている。

しばらくしてラーメンが出来上がった。

嘘だろ。なんと店主は、セットを注文した客へラーメンと一緒にさっき間違えて作った既に冷めている炒飯を普通に出しやがった。まじかよ。こだわりとプライドはどうしたよ。なら先に出来立ての炒飯くれよ!!

俺もセットを頼んでるんだよ。どうしても出来立てが食いたい。冷めた炒飯は嫌だ。残りの冷え冷え炒飯はあと2つ。ようは、俺の前にセットを頼んだ客が2人いればいいんだよ。3人待ってるので、そのうち2人がセットを頼んでいれば俺は念願の熱々炒飯にありつけるのだ。頼む。産まれて初めて神に祈るよ。頼む!!

結論から言いますと、俺のところには最後の一番冷めた炒飯がやってきました。

ちくしょうめ!!!!なんなんだよ!!!!どうしてこうなるかね!!!!俺はただ美味しいラーメンチャーハンセットが食べたかっただけなのに!!!!こんな形でラーメンと炒飯を同時に提供して欲しくはなかったよ!!ファック!!ほんと人間は嫌い!!!!

しかも会計の時、俺の前のババアが永遠に100円玉を探してて超待たされるし!!!!会計前に整理しとけババア!!しかも500円玉の釣りが欲しくて、600円の会計に1,100円を出そうとしてるんだよ。もう大人しく400円で妥協しろや!!!!くそが!!!!

どちくしょうめら!!!!!!!!


ちなみに、ここはもともと夫婦でやってたんだけど、離婚してお互い別々にラーメンチャーハンセットの店をやってるらしい。

俺が行ったのは妻の店。夫の店は行ったことないが、聞くところによるとラーメンは妻、炒飯は夫の方が美味しいらしい。

離婚すんなや!!!!二人で作れば最高のラーメンチャーハンセットが完成するやんけ!!!!究極のセットのために感情は捨てろ!!復縁しろ!!!!

わーーーー!!!!!!!!


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