みかんは腐らない
こんばんは。釘書房編集長です。
正味な話、地獄だ。俺の精神は限界に近付いている。
俺は毎日働きに出ている。不本意だが生きていくには金が必要だ。そして金を手にするには働かねばならない。社会の歯車の一部として身を粉にする日々を送っている。
そんな俺はいま人事課に配属されている。問題は同僚だ。一人はメンヘラデブスオバサン。その名の通りメンヘラでデブのおばさんだ。心が壊れ休職していた過去もあり頻繁に発狂し泡を吹いて倒れる。なんの誇張もなく泡を吹き倒れる人間を俺は初めて見た。
もう一匹はバケモノおばさん。声が異常に甲高く話し方から服装まであらゆる要素が異常に気持ち悪い。昭和の漫画に出てくる市役所のおっさんが手につける謎のファッションを愛用している時点で相当ヤバい奴なのだ。奴の電話の音声を聞かせたい。これが仕事の電話だなんて冗談だろうと笑うだろう。現実は易々とフィクションの悲劇を上回る。
そんなモンスター共はどこの部署も引き取り手がなく、人事課で面倒を見ている正真正銘のお荷物なのだ。
そして、その核弾頭が今机を並べている。
面白いもので、異常者も異常者を不快に思うらしく、日々この二匹の諍いが絶えない。
取れたてホヤホヤの話。
バケモノはろくな仕事を与えられていないのにアホみたいに残業する。先日は一日中座席表を眺めているだけなのに残業をしていた。帰れと言われてもあーだこーだぬかして残るので、前の課長は残業申請を却下していた。
そんなバケモノは忙しい自分をアピールしたいらしく、しばしば昼休みにカタカタと無駄に力強くキーボードを叩き休み時間が終わる頃に昼食を食べ始めるという奇行に及ぶ。
今回もいつものように休み時間が終わってもボリボリ飯を食っていたのだが、それを許さないのがもう一人の異常者であるメンヘラデブスオバサンである。
突然拳で机をドンッと叩きつけ、あのー!!もう昼休みは終わってるんですけどーー!!と物申す。異常者は異常者を恐れない。
一瞬たじろぐバケモノだがすぐさま、休み時間も仕事をしたので今食ってるのだと言い訳するが、それってもう無茶苦茶ですよね!!メンヘラデブスオバサンの怒号はとまらない。言っていることは正しいが、ここには狂人しかいない。周囲の人間は全力で気配を殺し空気と化す。
気まずくなったのかバケモノは飯を片付けると同時に物凄い勢いでキーボードを叩き出す。たぶん課長辺りに文句のメールを打ってるんだろうなと思ったら、案の定バケモノとメンヘラデブスオバサンから地獄のメールが課長には届いたらしい。
メンヘラデブスオバサンはというと、発狂した自分へ自己嫌悪し情緒が崩壊して隣の課の課長のところへ行き文句をたらたらと訴えた足でパワハラ相談員の元へ向かいギャーギャー喚き散らし、最終的に搬送され産業医の世話となった。
こんなことがしょっちゅうある。地獄だ。転職理由の第1位が人間関係というのも働いて痛いほど実感した。世の中にはろくでもない人間が多すぎる。人間が憎い。人間がいなければこの世界は格段に住みやすい。人間は死ぬべきなのだ。だから今夜も俺はホラー漫画を読む。人が死ぬ漫画を読むんだ。