川島のりかずフォーエバー

最初に言っておくが、これは酔っ払いの駄文なので、真に受けないで欲しいし、実在の人物や団体などとは関係のない一個人の妄想だと思って欲しい。

川島のりかず「フランケンシュタインの男」が復刻された。

そもそも川島のりかずとは、言葉足らずで恐縮だが、怪奇漫画を主軸に出版していた今は亡きひばり書房という出版社の後世に登場し、数々の描き下ろし単行本を残し消息を絶ったカルト漫画家である。
なお、ひばり書房が最後に出版した本が川島のりかず「中学生殺人事件」なのだが、本作はフリマアプリやオークションでは30万円程度で取引されている。

出版社も虫の息で1,000部程度しか刷られなかったと言われているが、それにしても高い。高すぎる。存在価値は置いといて、内容からすればもっと面白い川島のりかず作品が多々あるので、価格を引き上げている層には一度冷静になって貰いたい。

では、最もお金をかけるべきである川島のりかず作品は何なのか。もちろん「フランケンシュタインの男」である。世間的な評価は高くない川島のりかず作品だが、その中でも群を抜いた大傑作、それが「フランケンシュタインの男」に他ならない。
一介のホラー漫画の域には留まらない作品であり、作者の得意とする残酷描写が皆無な稀有な作品であり、万人に薦めることのできるポテンシャルがある。純粋な人間の狂気が昭和の空気をまとい見事に形を成すのだ。

80年代の発売当時、話題にならないのがよく理解できる。当時のホラー漫画は専ら少女向けだ。川島のりかず作品には、大人にならないと理解できない感情が多すぎる。ひばり書房編集長の胸には響いたと思うが、読者である少女達にはどのように映っていたのだろうか。ここは当事者の話を是非聞いてみたい。

そもそもなぜ川島のりかずが令和の世に蘇ったのか。

再評価に伴うここ数年の単行本の高騰である。

出版社だって儲けてなんぼ。出版不況のこのご時世によくわからない昭和の歴史に埋もれた作品を復刻している余裕なんてあるはずがない。「フランケンシュタインの男」が復刻したのは、川島のりかずを復刻のラインまで引き上げたファン達の尽力によるものである。

90年代に川島のりかず作品を含めたひばり書房の作品を批評家が取り上げる流れはあった。しかしそれは、ツッコミどころ満載のとんでも作品としてだ。その際に、「スカム(ごみくず)ホラー」という不名誉な呼び名が付けられる。そして、それが今でも浸透しているのだ。

私はスカムホラー呼ばわりされているひばりヒットコミックス作品をスカムだとは思わない。単語が前後してしまったが、ひばりヒットコミックスとは川島のりかずも含め80年代頃にひばり書房から出ていたレーベルだ。今ではあり得ないが、当時は描き下ろした作品を単行本として出版していた。

後付けを見るにそのペースはどう考えても異常なのだが、のりかずはどんな気持ちで狂った作品を生み出し続けたのだろう。叶わぬが本人と語り合いたってみたい。
そのような形式で発表されたのだ、全てを傑作とは言えない。それでも俺の脳髄を破壊する傑作が幾つもある。それを全てスカムホラーとして扱うのが気に食わない。

実際、スカムホラーとしての記事が載った時代に、川島のりかず作品は高騰していない。スカムホラー呼ばわりした記事を読むのはマニアで、そこからさらに本を購入する物好きなんて極僅かだ。出版からたった10年後に変な漫画がありましたと言われて、好事家がそこに使うお金は果たしてあるのか。一般層なんてもってのほかだ。

彼等は結局、川島のりかずに何の影響も与えていない。俺が川島のりかずを買い始めたのは二千年中頃だが、ほぼ全ての作品が千円あれば買えた。買えなかったのは「首を切られたいじめっ子」「母さんが抱いた生首」「フランケンシュタインの男」のみ。

スカムホラーだなんて蔑称を通じていくら紹介したところで読者の心は動かせないのだと強く思う。その作品に惚れ込んでこそ無上の賛辞が生まれ、人々の心を打つのだ。

その結果が、「フランケンシュタインの男」復刻だと俺は思っている。真に作品を面白いと思った者、読みたいと思った者、皆の想いが見事に形を成したのだ。

読みましょう、川島のりかず「フランケンシュタインの男」を。

復刻したので定価で買えます。


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