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九州で立ち続けるアイドルたち〜ばってん少女隊9周年記念ライブ〜

ばってん少女隊の周年ライブは私にとって非日常である。
飛行機に乗って福岡空港に降り立つと、建物内にほのかに充満するとんこつラーメンの香りを鼻が拾う。
この香りを嗅ぐと、今年も福岡にやってきたなあという実感が一気に迫ってくるのだ。(ちなみに飛行機酔いした場合はなかなかつらいものがある香りである。)
非日常だけど、ルーティンも出来上がりつつあって不思議な気分である。ばっしょーの周年ライブの前日は屋台でおでんを食べて、ライブ後はもつ鍋を食べながらひたすら感慨に耽る。屋台で九州の出汁をすすると、ばっしょーの周年が実感を持って迫ってくる。パブロフのおでん。

演出ラボラトリー

ばっしょーのライブは、特にワンマンは実験性に満ちている。
新しい演出や組み合わせなどで「今回はこれで魅せます!」ということを提示してくる。その中でも周年ライブは新しい指針をより強めに提示してくることが多いので、いつも期待することをやめられない。

今回のライブは、今までの演出の練り直しや再現性を感じる演出だった。その演出の中で、いかにメンバーが新しい試みをしていけるか、という点に尽力しているように感じ取れた。
九祭パートは特出しており、2年前の九祭ライブにPARKGOLFさんのリミックスを加えて、各メンバーのソロダンスも挿入して、2年前のあの素晴らしい時間を再現すると同時にあの素晴らしい時間を越えんとする意気込みを感じた。
中野サンプラザはなくなってしまったけど、あの場所で作られたものはしっかり引き継がれていくんだなあ。

「和・華・蘭」はきいなちゃんのソロダンスが始まるかと思いきや、先陣を切るのはみゆちゃん。その後一小節ずつの音ズレが発生していて、トラブル…ではないよね?と不可思議に思っていると、終盤で披露されるきいなちゃんのソロダンスがそのズレを集約して元通りにする。
布2枚を操るきいなちゃんに見惚れている間に音ズレが収まってしまうので、あの時間はなんだったのか…という余韻だけが残る。
(みゆちゃん、きいなちゃんのソロダンスを通して一体どれだけの人が「布になりたい」と思ったのだろう)

「沸く星」では赤色に染まる照明の中で踊るメンバーが、照明の効果かいつもより手足が長く見えたことも相まって異星の踊りを見ている心地になった。
最後に沢山の紫色のライトが客席を向いてくるくる回った光景は、まるでUFOが大量に飛来してきたようで興奮した。
「Bright & Breezy」が始まっても背景の星空は引き継がれるが、「沸く星」の時には怪しく見えた星空が「Bright & Breezy」では澄んだ空に輝く星に見えて、全く同じ星空のはずなのに他の演出や曲でこんなに変わるものかと感動する。
この2曲はいつもよりハモリを増やしていたのだろうか?特に「Bright & Breezy」でちゃん瀬田の主旋律によりそうきいなちゃんの下ハモが美しくてうっとりしてしまった。
昨年末のヒナタベルライブでの「無敵のビーナス」のハモリを思い出して、あの時の実績を踏まえてハモリを増やしてるとかだったらよいな…と思ったり。
そしてちゃん瀬田のソロダンスがとても可愛かった!
今までは怒りや無表情に重きを置いていたが、今回はとにかくとにかくチャーミング。
傘に体重をかける仕草だったり、片足で傘を蹴り上げる仕草だったり、一つ一つに可愛さが溢れていて「ちゃんせたはかわいい!」と分かりきっていたことだけど改めて大声で叫びたい気持ちになった。
ちゃんせたはかわいい!!!

九祭パートの最後、「でんでらりゅーば!」では縦型MVが中央の大型スクリーンに映され、その横のスクリーンではMV映像を切り出して様々な展開が広がっていく。そしてその舞台の真ん中で踊るメンバー。
…と、とても贅沢で明るくて楽しいステージだったが、大雨による湿度と匂いでぐったり気味だった私はそこで処理落ちしてしまった。
楽しい、楽しいのはすごい分かるのだけど、ダウン気味の時にこの情報は処理できない!
(全体的に照明も強め激しめだったので余計に…)
漫然としか見れなかったのが悔やまれる。。
そんなわけで、個人所感として9周年ライブは「なんか…光が…強かったな…」という感想が最初に出てきてしまうのだが、世の中には『B'zはいつも最高なので、イマイチと思った時はB'z側じゃなくて私の方の体調が悪い』という御言葉がある。
その言葉を改めて己に刻み込みたい。


お衣装ボンバイエ

このライブでの特筆すべきところはお衣装!
ばっしょーの衣装は常に良い。今回もとても良いの更新をしてきた。
1着目のメンカラ和風衣装。巫女というよりはむしろお祓い棒などについている垂紙を彷彿とさせた。神具の擬人化。ばっしょーは鳥居や巫女姿も似合う。九州の神社とコラボしてくれないかなあ。
神々しいとかわいいの共存に、じっくり見たい!と思いつつも冒頭2曲でこの衣装は脱いでしまう。残念だけど、ばっしょー名物・舞台上での早着替えにワクワクさせられる自分もいる。

2着目は光沢のある黒基調のシックなメンカラ衣装。去年末からメンカラ衣装が増えてきて嬉しい限りである。遠目では同じフォルムに見えたが、絶対にメンバーごとに細かい個性を出しているはず!もっとまじまじと見たかったが、今後も着る機会が多そう(ちゃん瀬田談)とのことなので期待である。
色付き照明での演出が多かったため、あまりメンカラとして見れなかったのは残念…
この衣装の時に、ちゃん瀬田がすっごく前列の人たちを煽ってるなあと思って見ていて、顔を上げたらみゆちゃんだったことに驚いた。みゆちゃん、大きくなったねえ。

そして3着目。
「Just mean it!」でまず愛ちゃん、理子ちゃん、きいな姫、りるあちゃんの4人が登場して、パネルの光によって4人のシルエットが顕になった瞬間に思わず悲鳴をあげてしまった。
りるあちゃんの…タイトスカート……!
視覚情報を理解するのにこんなに時間がかかることがあるだろうか。
りるあちゃんのタイトスカート。
りるあちゃんのタイトスカート?
りるあちゃんの、タイトスカート!
初めて出会った時はまだ14歳であどけなさの残る女の子だったのに、いつの間にかタイトスカートが似合う女性になっていたんだね。
一方でヘアスタイルはツインテールのままで、かっこよさとかわいさが同居していて混乱の極みである。首から上、かわいい。首から下、かっこいい。全身、かっこかわいいいいい。
配信を見返してわかったが、この混乱はりるあちゃんの表情にも起因していたようだ。りるあちゃんはダンス曲の時のときににっこり笑っている印象が強い。踊りが激しければ激しいほど、思わず楽しさで笑顔になっていることが多い。
ところが今回の「Just mean it!」は、一曲通してダンスがかなり激しいものの、りるあちゃんは真剣な顔で踊り通しているのだ。各メンバーの見せ所でも、にっこり笑うというよりはにやっと不敵な笑みを見せていた。
タイトスカートに引っ張られ気味だが、ふと俯瞰すると黒のグローブを片手にはめていることに気づく。
片手にしかグローブをはめていないというアシンメトリーな光景に脳みそがくらくらする。
かつて、己の結婚式の時に私も片手グローブをしていた。5年越しに好きな子が同じセレクトをするなんて…人生の伏線回収である。
5年前の私、左手に封印されし魔物が解き放たれたんとするごっこをしている場合じゃないよ。
更に、アンコール時のメンバーによる客席練り歩きで真横をりるあちゃんが通った際に、首にチョーカーをしていることに気づいた。
リルアチャンノチョーカー…
新しい扉が開く音がしました。
私の中にあったりるあちゃん像をりるあちゃん本人が思いっきり壊していった。また恋心が盗まれてしまった。
りるあちゃんは俺の峰不二子だった……

りるあちゃんに混乱する中、更なる混乱に陥れたのはきいなちゃんだった。
きいなちゃんの太ももに走る一本のベルト。ガーターベルト!?という驚きと太ももが見えてる!いいの!?という焦りで混沌に突き落とされる。色気がすごい。目が剥がれない。気づいたらきいなちゃんを見ている。
似たシルエットの理子ちゃんを思わず見て、理子ちゃんはガーターベルトではないことに安心する。しかし、ショートパンツとロングブーツの隙間の絶対領域があまりにも良すぎて意味がわからない。深く考えることをやめてしまった。
(ばっしょーの感想で「絶対領域」の言葉を使う日が来るとは思わなかった)

極め付けはちゃん瀬田。
「でんでらりゅーば!」のイントロとともにちゃん瀬田とみゆちゃんが登場して、シルエットからちゃん瀬田がロングスカートを履いていることに、翻弄され続きだった私は少しほっとする。
しかし、フォーメーション展開で動いた瞬間、ちゃん瀬田の左の御御足が深めのスリットからぐわっと出てきて、思わず「ひえぇ」と声が出てしまった。まさかのチャイナ服仕様。

この衣装に対する感情を果たして言葉にしてもよいのか、と逡巡したが、ライブ明けのSHOWROOMでちゃん瀬田が率先してグフグフしてくれたので助かった。そして性癖発表ドラゴンという言葉を覚えた。
ばっしょー衣装展、いつか開催してほしいなあ。

福岡ロケーション

福岡、ばっしょーの地元で開催される周年ライブでの挨拶は、ばっしょーという組織が今どこを見つめているのかを知れる大切な機会である。

りるあちゃんが目に涙を溜めつつも言葉を詰まらせることなく語った「今もすっごく幸せだけど、りるあはもっともっと幸せになりたい」という発言は、ここ最近のりるあちゃんが見せるようになってきた貪欲さがぎゅっと詰められた言葉であった。
そしてこの言葉は、アンコールで真横を通ったりるあちゃんを(ぐったりして)漫然としか見れなかった私をぶん殴ってきた。私はなんでこんな貴重なタイミングに貪欲になれなかったのか?漫然としててもりるあちゃんは気づいてくれるとか思っていたのか?
前列の人にレスを送るりるあちゃんのつむじをぼんやりとしか見れなかった私にはガツンとくる言葉だった。
求めよ、さらば与えられん。

りるあちゃんはもう随分前から挨拶の時に泣かなくなったけど、私は毎回それに感激してつい泣いてしまう。

みゆちゃんの挨拶はりるあちゃんとの対比に位置していた。
「もっと幸せになりたい」と語るりるあちゃんに対して、みゆちゃんは「ライブに来る人を幸せにしたい」と話し、りるみゆで求めるのと与えるのがセットになっていることにほっこりした。良い同期だ。

周年ライブは理子ちゃんの言葉を聞きにきているといっても過言ではない。
「(東京じゃなくて)福岡でアイドルをやっていることを間違いだったと思われたくない。」という発言は、あえて強い言葉を使っているように思えた。
先陣の愛ちゃんの挨拶で、「この道だって決めたので進んでいくしかない。」という言葉にも気になったが、きっとこのグループは常々九州でアイドルとしてやっていくには・有名になるには、と議論しているんだろうなあ。
ばっしょーはずっと、少なくとも私が追いかけるようになってからは、具体的な会場の目標の話をしていない。(理子ちゃんやちゃん瀬田がPayPayドームの存在について触れることはあったが、グループの指針としては出ていないような…)
「あの会場でライブをやる」という目標とはまた別ベクトルで、福岡で、九州で活躍するといったより大きな枠組みで目指しているものがあるんだろうなあ、と思わされる。

福岡でのエンターテイメントを続けることの難しさに触れた一方、今までのライブより抽象度をあげてエンタメの作り方へのアプローチも感じるライブだった。

今のばっしょーの方向性は大好きだけど、地元という場所に縛られすぎないでほしいともちらりと思う。でも、ばっしょーがそれを楽しんでいる限りは自分も一緒にめいっぱい楽しみたい。

来年も私はきっと多大な期待を持って、ばっしょー10周年ライブに足を運ぶであろう。

後日譚



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