コロナの自粛は、日本の音楽業界に影響を及ぼしているのか?
100年に1度の世界の危機とも言われる新型コロナウイルスの問題は、エンタテインメント業界に暗い影を落としている。
特に興行業界は軒並み延期や中止に追い込まれ、その損失は甚大だ。
コロナで苦境に立たされる音楽サブスク?
そんな中、興行のみならず、今や音楽市場の要である『音楽サブスク』にも暗い影響があるということが以下の記事に書かれている。
曰く
コロナウイルスの影響が最も甚大な国のひとつであるイタリアでは、2019年2月時点でのSpotify上におけるトップ200の楽曲の再生回数は、1日あたり1,830万回でした。3月9日に同国首相が国内全土での移動制限を発表して以降、トップ200の曲の再生回数は最大でも1,440万回となっています。
どうやら、コロナ環境下で世界的に音楽サブスクの再生数が減少しているようだ。以下記事にも記したが、音楽サブスクは『再生数=売上』と考えていい。つまり再生数の減少は音楽ビジネスの売上低下を示す。
上記の記事はTOP200の再生数のみに絞って検証していたため、記事中にもある通り、全楽曲の再生数は減少していない可能性ももちろんある。しかし、少なくともヒット曲に関しては再生が減っているのは確かなのだ。
では日本ではどうなのか?イタリアのようにロックダウンこそ起きていないが、予断を許さない状況が数週間続き、在宅勤務や学校休校など有事であることに変わりない。
日本でもサブスクの再生数は下がっているのか?
日本で同じような方法で再生数変化を探るうえで、Spotifyの影響力が欧米と比べ低い日本では、以下オリコンのストリーミングランキングを活用してみた。
このランキングは、週ごとに更新される楽曲のランキングで、複数の音楽サブスクサービス(Apple Music、AWA、HMVmusic powered by KKBOX、Google Play Music、KKBOX、dミュージック月額コース、LINE MUSIC、Rakuten Music、RecMusic)の合算再生数を、最新週のみTOP20位まで表示してくれている。Spotifyが入っていないのは残念だが、ある程度網羅的なランキングだといえよう。
最新週のみ数字が表示されているが、個人的にこの数字を去年から収集していたので、TOP20位までの楽曲の再生数合計を算出し2-3月の数字を並べてみた。
日本でサブスク再生数はそこまで下がっていない…?
以下が2-3月の各週ごとのTOP20楽曲のサブスク再生数合算である。
雑感としては2-3月を通じ、総再生数は毎週4,000万回台を維持しており、再生数が大きく減少しているようには見えない。
ただ、安倍首相による臨時休校要請を含めた緊急記者会見が行われたのが2/29であり、それを境に日本全国の危機意識は大幅に高まった。
再生数自体も2/17-2/23週から2/24-3/1週にかけて減少しており、危機の高まりに応じて再生数が減少しているようにも見える。
この減少傾向は3/2-3/8週を底にして3/16-3/22にかけて反転、以後再び再生数は上昇していく。この流れも、会見以降自粛ムードが徐々に薄れていくことと一致している。
そして、そんな楽観ムードに冷や水をさす「東京オリンピック延期」が3/24に、「小池都知事の緊急会見」が3/25にあり、再び3/23-3/29の総再生数は減少に転じている。
以上見ると、日本では大幅に音楽サブスクの再生数が減少する状況は起きていないが、危機意識の高まりに応じて、多少再生数が減少する傾向がある、ということではないか。
(補足)Official髭男dism I LOVE...の影響
実はこの集計期間サブスクチャートでは1つの現象が起きていた。それはOfficial髭男dismの楽曲「I LOVE...」のヒットだ。
例えば、同楽曲が最高再生数を獲得した3/16-3/22週、TOP20の合計再生数が4,316万回に対し、I LOVE...は657万回と全体の15%を占めた。この週は主題歌になっていたドラマ「恋は続くよどこまでも」が最終回をむかえた週で、盛り上がりが最高潮に達していた。
斯様に、この楽曲はTOP20全体に対して過大な影響力を持っており、ドラマの盛り上がりと再生が連動するという、コロナとは無関係の動きをしていたと考えられるので、一旦その再生数を除いたうえで改めて合計再生数を週ごとに出してみた。
以下が、各週のTOP20再生数から「I LOVE...」を除いた時系列グラフである。
TOP20の時のグラフ同様、2/17-2/23週を境に再生数が減少に転じているが、大きな違いは、その減少傾向がその後も継続しているように見えることだ。特に3/16-3/22にかけての回復傾向が小さい。
危機だからこそサブスクを聞いてアーティストに還元しよう
I LOVE...のヒットを除くと、日本でもコロナの危機の高まりに応じて、サブスクの再生数が減少する傾向にあることがよりはっきりとわかった。
今は軽微だが、これが今後も続けばアーティストの収入にも大きな影響を及ぼす可能性がある。
重ねて言うが、サブスクは再生数=売上である。この音楽エンタテインメント業界の苦境に、アーティストをサポートする方法としてサブスクで楽曲を聞くことは最も簡単に行える支援の1つだろう。
危機を乗り越えるためのBGMとして、そして好きなアーティストのサポートとして音楽サブスクを大いに活用していきたいと思う。
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