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LINE上場から考える、今後のLINEの成長に相当重要と思われる「ある要素」について。

2016年7月15日、LINE株式会社が東証一部に上場した。前日NYSEへの上場も果たし、無事日米同時上場を果たした。LINEに対して浅からぬ縁がある身として非常に感慨深かった。

初値は大方の予想を超えて、NYSEで公開価格の2割以上、東証でも3割以上上回った。投資家からの期待値は大変大きかったようだ。

この期待値を上回る成長を出来るかは、すべてLINEのこれからの展開にかかっている。その成長ドライバーは、ひとつには世界市場でのユーザー数の伸長、そしてもうひとつは既存市場での更なるマネタイズだろう。

特に既存市場でのマネタイズは、今回投資家からの評価の一因だったと思われる、世界で有数の「マネタイズに成功した」メッセンジャーアプリとしての面目を保つためにも極めて重要と考えられる。

|LINEの今後の成長を握るビジネスとは?

2016年1月に発表されたLINEの15年度通期売上高は1207億円。この売上を構成する中核事業は、スタンプ販売、ゲーム内課金、広告の3つである。

中でも広告売上は前年の27%から30%へと、その売上全体に占める構成比を伸ばしている。このところLINEは、タイムラインへの運用型の広告配信やチャットボットなど、新たな広告メニューの開発に余念がなく、マネタイズの拡大に向けて広告ビジネスの強化を図っているのは間違いがない。

LINEが高いシェアを持つ市場は日本、台湾、タイ、インドネシアの4つであり、この4市場での広告ビジネスの拡大がLINEのビジネス全体の成長ドライバーと考えていいだろう。

|LINEの高シェア市場は広告ビジネス拡大に不利?

上の表は、電通イージスグループが13年5月に発表した全世界の主要国国別広告費総額から抜粋して作成したものだ。(https://ja.scribd.com/document/230930680/Aegis-Global-Advertising-Expenditure-Report-May-2013)
※1:各国集計方法やその精度が異なる感じなので、あくまで数値は目安。
※2:恐らく1の要因で2014年以降のレポートでは広告費総額が開示されていないため、2013年のレポートを使用。

LINEの主要市場である日本、台湾、タイ、インドネシアに加えて、 LINEの競合であるWeChat、そしてWhatsAppの各主要市場である中国、アメリカ、イギリスも記してある。

LINEの主要市場は日本以外の3国の広告市場規模を足しても、日本の3割に満たない。対してWeChatが持つ中国は既に日本の1.5倍、WhatsAppが持つアメリカは約4倍、イギリスも日本の半分程度の広告市場規模を持っている。

現状は、広告プロダクトや販売組織の強さでLINEが最も先を進んでいるのは間違いない。しかし中国を独占市場として様々な施策を展開するWeChat、既にfacebookとして多くの広告主と関係を結び、兄弟メッセンジャーであるfacebook messengerが広告ビジネスに打って出ようしているWhatsAppが、そのビジネスの深度の点でLINEに追いつくのも時間の問題ではないか。

|国が伸びればLINEは伸びる?

では、LINEの広告ビジネスの(特に長期的に見た)成長性は競合と比較して劣後しているのか?あるいは、投資家が期待する事業の伸びを、LINEは今後もコンスタントに見せていけるのだろうか?

身も蓋もない言い方になるが、各国の広告市場の成長にかかっていると言えるだろう。

何よりLINEが重点市場とする日本以外の3カ国は、成長途上のマーケットだ。

上の表は、先ほどの各国の2013年度総広告費を人口で割った数値である。インターネット業界における「ユーザー一人当たり単価 ARPU』に倣い「広告費ARPU(Average Revenue Per User)」と呼んでみる。さしずめ、国民一人当たり(に企業が払っている)広告費だ。
※1:各国人口の出典はこちら(http://matome.naver.jp/odai/2142455039205358701?&page=3)
※2:インターネット業界で使われるもう1つの指標にARPPUがあり、こちらはAverage Revenue Per Paid User。本件にあてはめるとさしずめ広告到達可能人口当たり広告費だが、こちらは各国定義が難しく今回は算出しなかった。

LINEの日本以外の重点市場は、台湾ですらUSD100に満たない広告費ARPUであり、USD300越えの日本水準までまだ大きく伸びる余地を残している。インドネシアは未だUSD20台ととりわけ低いが、逆に考えれば、日本水準まで15倍も伸びる余地を残している。そう考えると、中国は人口の大きさと広告費ARPUの伸びの余地を考えると、脅威としか言いようがない。

更に上の表は、各国の広告費ARPUにそれぞれの1人当たり名目GDPを対置させ、散布図化させたものである。見れば一目瞭然であるが、両指標は相関しているように見える。この事実を信じれば、1国の経済的な成熟度が高まれば、その国の広告市場の規模はリニアに拡大するはずである。

|LINEの成長=アジアの成長

LINEはいうまでもなくスマホを基軸としたビジネスを展開している。

スマホビジネス自体が発展途上のビジネスであり、法規制の影響を受けにくい新興国でのポテンシャルが高い。加えて、アジアの新興国にとってスマホは、初めて誰もが保有したデジタルデバイスだ。

そういう意味でスマホビジネスは、アジアの新興国を経済成長させる、そのポテンシャルの源泉とも言える。つまりLINEの成長はアジアの成長に、アジアの成長はLINEの成長に返ってくるはずだ。

LINEがアジアの成長を刺激し、それがLINEの成長に返ってくることを期待したい。

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