メタボとロコモは運動で予防する
このブログでは、ストレチックス本部著書「70歳からのゆる~い筋トレ&ストレッチ」執筆者が、本で書いたことの要点や、書ききれなかったことを、お伝えしていきます。
今回のテーマは「メタボとロコモは運動で予防する」です。
●内臓脂肪と生活習慣病
▼メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドロームとは疾病名ではなく、病態を示している言葉です。
特に、肥満症、糖尿病、高血圧症、高脂血症などの相互関係から、脳卒中や虚血性心疾患(心筋梗塞)に陥り、重篤な合併症に進展することの可能性の高いことが明らかとなったため、この予防の重要性が指摘されるようになったわけです。
それぞれの生活習慣病における罹患リスクとして内臓脂肪の蓄積が、共通の要因としてあげられることが明らかとなりました。
そのため、内臓脂肪量を減少させることが、結果的にメタボリックシンドロームの予防につながっていくことになるのです。
▼減量への道のりは食事と運動
体に無理な負担を掛けずに体重を落としていくには、やはり運動と食事管理が欠かせません。
食事によるカロリー制限が身体において、タンパク質(主に筋肉)の分解を促進し、思ったより脂肪量の減量につながらないからです。
とにかく食べないといった方法を使うと筋タンパクの分解が促進し、結果的には体重の測定をすると減少傾向を示します。
一見、減量がうまくいっているように見えますが、メタボリックシンドローム予防の目的である内臓脂肪量の減少には効果的とはいい難いものです。
筋タンパク量の減少は基礎代謝の低下を引き起こすことが知られています。
基礎代謝が落ちればその後、脂肪をエネルギーとして使う能力も低下します。
数値として体重が減っていくのは望ましいですが、メタボリックシンドロームの予防を目指したはずにも関わらず、結果的に太りやすい体質に変化させてしまうということになってしまうわけです。
▼有酸素運動と筋力トレーニングをバランスよく
蓄積された内臓脂肪量を減少させるためにはウォーキングなど有酸素運動が効果的であることが考えられます。
有酸素運動は体脂肪を利用してエネルギーを供給する回路を使うもので、これを日常に取り入れるようにして身体活動量を増やすことは重要です。
しかし、有酸素運動による身体活動量の増加に併せて、食事のカロリー制限を実施すると筋タンパクの分解が促進されてしまうということが専門家の研究で出ています。
全体的な減量効果があるものの、食事制限から起こる筋量減少の抑制効果を有酸素運動はもっていないということです。
そこで必要になってくるのが筋力トレーニングです。
効果は筋肉量、筋力の維持や増加です。
40歳代以降、とくに下肢の筋肉量は年1%の割合で減少しているといわれています。
この現象が加齢による基礎代謝の低下と比例関係にあることも示されているものもあります。
メタボリックシンドローム予防の主な対象となる中年世代には減量による影響に加えて、加齢現象による筋力量の減少を防ぐためにも筋力トレーニングなど、筋肉量を維持、増大させることが可能な運動種目を行うことが非常に大切になります。
なお、筋力トレーニングそのものは内臓脂肪量を減少させることの即効性は大きくないという点があります。
▼メタボシックシンドロームはなぜ深刻なのか
メタボリックシンドロームは肥満、高脂血症、高血糖、高血圧といった動脈硬化の危険因子を複数併せもった状態です。
これらの危険因子がいくつも重なると、動脈硬化が促進され、結果として心疾患、脳血管疾患が引き起こることがわかっています。
なぜ深刻かというと、危険因子がそれぞれ軽度であってもいくつか重なることで、心・脳血管疾患のリスクが高まるということにあります。
また、高血糖、高脂血症、高血圧といった代謝異常の初期症状に特別な自覚症状がない場合が多いことがあげられます。
そして見た目が太っていなくても内臓脂肪が多いという場合もあり、気づいた頃にはすでに動脈硬化が進行しているというケースもしばしばあるといわれます。
これらは切り傷や打撲の様に痛みを感じないということが厄介なことなのです。
日本人におけるメタボリックシンドロームの診断基準は次の通りです。
内臓脂肪の蓄積をみるウエスト(臍部)周囲径と脂質異常、高血圧、高血糖のうち2つ以上の因子を併せもつとメタボリックシンドロームと診断しています。
※厚生労働省 e‐ヘルスネットより引用
2006年の国民健康・栄養調査によると40~74歳については男性では2人に1人、女性は5人に1人がメタボリックシンドローム、または予備軍に属すると出ています。
当時40歳だった方が17年たって、当時自分は当てはまらないと考えていた方が該当項目に近づいてきたということがあるかもしれません。
予防は将来へできる限り体の不具合なくいるための準備であると感じます。
食事も運動も頑張ろうという気持ちが出てきた方は、どの程度の内容が適切かを専門医、管理栄養士の方などにご相談の上、取り組むようにしましょう。
高血糖での糖尿病(予備軍)、高血圧がある場合など思わぬ体へ負担がかかることがあります。自身のもっている症状に注意をしながら行うことが大切です。
●運動不足と機能低下で体に起こること
▼運動不足はリスクの一つ
厚生労働省のリスク別の関連死亡者数、2007年のものによると、運動不足が喫煙や高血圧に続く、死亡原因の第3位になっています。
運動不足での死亡者数は年間約5万に及んでいました。
そして時は流れ2019年のデータになると、第10位まで順位を落としていました。
これは10年以上の間に、運動をはじめた、継続しているという方が多いということが予測されます。
ヨガ、ピラティス、ランニング、パーソナルトレーニングといった様々なブームのようなものがあったり、自宅でも動画配信などを参考に気軽に取り入れることが可能になってきたことが増えてきたように思います。
その後の新型コロナウィルスのパンデミックにより自宅にこもって運動をしなくなった、通っていたフィットネスクラブが閉鎖してそれ以来、運動習慣が滞ったという方も出ているかもしれません。
それでも人生100年時代、自分の体を自分で動かすといったことを考えると予防すべきことの一つがロコモティブシンドロームです。
▼ロコモティブシンドロームとは?
ロコモティブシンドロームは運動器症候群といわれるものです。
運動器の障害や衰えによって、歩行困難や要介護の状態になるリスクが高まる状態のことです。
日本整形外科学会が2007年に提唱して予防のための啓発活動が行われています。
運動器とは骨や筋肉、関節などの体を動かす機能、能力をもつものです。
それらに問題が起きる要因として、骨粗しょう症や加齢による筋力低下があげられます。
姿勢が悪くなったり、柔軟性が低下したりすると体の動きに不良を起こして移動機能が制限されていきます。
最終的に要介護状態になると考えられており、現状どの程度、体を操作することができるかを知ることが大切です。
▼ロコモチェックでロコモ度をチェック
ロコモティブシンドロームのチェックできる「ロコモチェック」を紹介します。
下に示したのが、日本整形外科学会などによってロコモチェックの内容です。
この7つの項目は筋肉や骨、関節などが衰えているサインであり、このうち1つでも当てはまればロコモティブシンドロームの心配があるとされています。
【ロコモチェック】
1-片足で靴下がはけない
2-家の中でつまずいたりすべったりする
3-階段をあがるのに手すりが必要である。
4-家のやや重い仕事が困難である。
(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)
5-2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
(1リットルの牛乳パック2個程度)
6-15分くらいつづけて歩くことができない。
7-横断歩道を青信号で渡りきれない
※日本整形外科学会 ロコモONLINEより
今はネットスーパーなどもあり、わざわざ重たいものを買いに行かなくてよい環境がありますが、しばらくやっていなかったときにその作業がつらく感じることがあるかもしれません。
ただ、日常でやらなくなっていることでいつの間にか衰えてしまっていることが危ういことなのか、運動器の衰えに合わせて体に負担を掛けないようにすることが安全なのかは難しいところだと思います。
▼加齢とともに起こるサルコペニア
ロコモティブシンドロームの一因に加齢による筋肉の衰えがあげられています。
この加齢から起こる筋力低下をサルコペニアといいます。
移動するためにはやはり足腰、下肢の筋肉ですが、20代後半から衰えがはじまるという研究もあります。
デスクワークが長く、歩く機会、運動不足があれば20代でも十分に起こることです。
そして日常の活動を支えるのは下肢だけでなく体全体であり、50代ぐらいを境に衰えが加速するといわれます。
年を取ってからでも筋肉は増えるということは研究として出ていますが、見た目でわかるような太くボリュームのある筋肉になるかは難しいのではと思います。
理由の1つはそこまでの負荷を体にかけることができなくなっているからです。
関節の負担や心肺機能の低下、血圧が高ければ力むような運動は控えなければなりません。
そして筋肉をつくる細胞の増殖能力が落ちていくことがあげられます。
筋繊維のそばには新たに筋繊維をつくり出すサテライト細胞というものがありますが、その数が減少し、活動も衰えていくといわれています。
▼サルコペニア肥満が危ない!
またサルコペニアからの延長のようですが、サルコペニア肥満という状態を指すものがあります。
予想ができるかもしれませんが、サルコペニアによる筋肉の減少、減少による身体活動の低下、それによりエネルギー消費は減り体脂肪が増えていくといった流れです。
脂肪が増えていけば糖尿病や高血圧といった生活習慣病のリスクも高まります。
これはロコモティブシンドロームの状態とメタボリックシンドロームの状態が同時に体に備わってしまうということです。
筋肉が脂肪に変わったというお話を聞くことがあるかもしれませんが、この2つは全くの別物です。
筋肉が落ちたことにより脂肪が蓄積されやすくなったということで、体重が変わらなくとも体を構成する割合が変わったということになります。
体形が若いころと変わらないという方も多いかもしれませんが、体重、筋肉量、体脂肪量、体脂肪率といったことに注意を向けていきましょう。
▼筋力トレーニングを少しずつ行ってみましょう
スクワット
椅子などの支えを使って立ちます。(バランスが悪くなければ支えはなくてもよい)
背筋をまっすぐ伸ばしてゆっくりしゃがんでお尻を下におろします。
床を踏むようにして元の位置まで立ち上がります。
呼吸:下に向かう時に吸って、立ち上がる時に吐きます。
まずは10回を3セット、合計30回ほどを目標にしてみましょう。
お尻や太ももの筋肉といった、下肢全体のエクササイズです。
椅子から立ち上があがる、座るときに体を支えるといった動作に使われます。
ニーアップ
ニーは膝という意味ですが、太ももを持ち上げます。
片手は椅子などで支えます。(バランスが悪くなければ支えはなくてもよい)
背筋をしっかり伸ばして片足を上に持ち上げます。
お腹の高さまでを目標にします。
持ち上げる足のつま先は上に向けましょう。
軸足は足の裏全体で床を踏みます。
軸足が曲がらないようにまっすぐに保ちましょう。
自然な呼吸で交互に太ももを上げる動きを30秒程度、3セットを目標に。
歩く時は片足に体重が乗ることで逆の足が持ち上がります。
持ち上げる側の足の筋力と、片足でバランスをとるためのエクササイズです。
メタボリックシンドロームもロコモティブシンドロームもその時になったら運動しようにならず、早い段階から意識的に運動をして体の動く能力を保っていくことが必要なことだと思います。
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ストレッチ専門店ストレチックス
https://stretchex.jp/
本部著書&公式ブログ 監修・執筆
本部研修トレーナー 渡辺 久進
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