怒りがあるときに脳で起こること
このブログでは、ストレチックス本部著書「70歳からのゆる~い筋トレ&ストレッチ」
執筆者が、本で書いたことの要点や、書ききれなかったことを、お伝えしていきます。
今回のテーマは「怒りがあるときに脳で起こること」です。
皆さんの周りにはいつもイライラしているような方はいますか?
もしかしたら周りからは自分自身がいつも怒っているような人に見られているかもしれません。
喜怒哀楽という言葉があるように、喜びも怒りも生き物の持ち合わせた感情です。
人間だけでなく犬も猫も怒りを見せることがあります。
一生恨んでやるといったことが大きな事件や事故につながることもあります。
感情をコントロールできない人だ、大人気ないといえばそれまでですが、本人は怒りが治まらずどうにかして行動に移したい欲求が起こっています。
大事件でなくてもちょっとしたことが怒りにつながりますが、そのときその人には何が起こっているのでしょうか。
怒りを科学的にみていることが多く出ています。
人の怒り、自分の怒りの仕組みを紹介してみたいと思います。
●怒りは闘うための本能
▼筋肉に働くアドレナリン
怒りを感じるとき、他人に怒りをぶつけることは攻撃をする状態です。
そのためには筋肉への血流を促し体が動くようにすることが必要です。
そこで分泌される物質が、アドレナリンとノルアドレナリンというものです。
怒るという行動を起こすとき、生物は戦闘モードになっている状態です。
興奮状態のときにアドレナリンが出ていると表されることがありますが、この物質には覚醒作用があります。
アドレナリンは副腎髄質という部分から分泌されるホルモンです。
主な作用は心拍、血圧をあげて血流をよくすること、血糖値をあげて筋肉の動き、筋力、持久力を高めることです。
アドレナリンは脳に入っていけないため筋肉に対して作用するものです。
アドレナリンは闘うための闘争ホルモン、一方、逃げるための逃走ホルモンという両面を持っています。
かつて人類はいつ猛獣に襲われるかわからないような環境で暮らしていたと想像できます。
何かをしているときに目の前に肉食獣があらわれたらどうするか、それは闘うか逃げるかの二択になります。
そのようなときに体を動かすようにするためにアドレナリンが作用し闘うパワーを発揮させるものだったのです。
そして運動機能を高める効果は高いが持続効果は低いといわれており自分は弱ければ逃げるパワーになるものです。
▼脳に働くノルアドレナリン
ノルアドレナリンは自律神経の交感神経を刺激して興奮させる働きを持ち覚醒させる作用と環境、対人などのストレスに反応する神経伝達物質です。
主な作用には心拍数、血圧、血糖値の上昇、注意力を上げる、痛覚を鈍らせる、やる気を高める、記憶力を高める、筋肉に酸素、栄養を送るようになるといったことがあげられます。
覚醒作用がある反面、不安や恐怖、緊張など感情や精神状態に関連のあるホルモンです。
アドレナリンは脳へ作用しませんが、ノルアドレナリンは脳に作用します。
このノルアドレナリンの過剰分泌が次のような症状が表れやすいといわれます。
・怒りっぽくなる
・キレやすくなる
・イライラする
・不安症
・パニック障害
・不眠症
など。
過剰分泌される原因は長時間のストレスといわれます。
ストレスによりノルアドレナリンが分泌される、イライラする、それがまたストレスになるといったことの悪循環も注意しなければなりません。
一方、ノルアドレナリンが不足するとやる気や集中力が低下するなどがあげられています。
自分自身が集中できている、体調がよく物事がこなせている時が適切な分泌量ということになるといえるのかもしれません。
人類には戦いの歴史があります。
狩猟が行われているときには獲物との闘いがあります。
領地の占拠、権力を築くときには怒りを強く表した者がのし上がり闘うことが出来ます。
王様を怒らせたら首を切られるようなことがあったかないかはわかりませんが、怒りという感情、表現があり多くの人を服従させることがあったのではないかと推測もされます。
●怒る人の脳内
▼本能をコントロールする前頭前野
自分自身でもそんなことで怒りたくないと思っているのかもしれません。
(怒る理由を他人のせいにするのは考え方や性格が関連していると思いますが・・・)
怒りに対して抑制が効かない場合、脳内で怒りの感情のコントロールをするブレーキの領域である前頭前野がしっかり働いていないということが考えられます。
前頭前野は理性、感情、意欲、思考を司る働きをする部分です。
相手を攻撃するなどの衝動を抑える役割があります。
★前頭前野が怒りという感情をコントロールしている
前頭前野の主な機能
・思考をする
・行動を抑制する
・意思決定をする
・情動を制御する
・記憶のコントロール
前頭前野は知能が高い動物で発達をした部分です。
危険な目にあった際に冷静に、パニックにならずに行動ができるなどは前頭前野の働きがあるからと考えられています。
感情的な状態から冷静さを取り戻すことができるということです。
脳には大脳辺縁系という本能、情動に関連する部分がありますが怒りはそこで生じます。
それを前頭前野でコントロールする、抑えるといった仕組みになっています。
闘争または逃走で生き残ることを続けてきた人類には怒りの感情はなくてはならないものでした。
ものもと本能に近い感情であるにも関わらず、仕事や人間関係で我慢が必要であったりトラブルが起こったりする際には本能を抑えるようにコントロールが必要になっていきました。
しかし突発的に生じる怒りの感情にはすぐに対応できない、怒りの発生と理性の調整には時間差があるとされています。
理性を抑制するための動き出しには3~5秒程度かかるのではないかというのが脳のメカニズムとされています。
すでに意識されている方もいるかもしれませんが、突発的な怒りを鎮めるには6秒待つという方法が提案されています。
この6秒の間には舌打ちや怒りを表すような独り言も控えることが有効ということです。
▼前頭前野が衰えると・・・
前頭前野の機能の低下は年齢とともに進行するとされています。
全ての人に当てはまることではないかもしれませんが、60代ではそれ以前とあまり変化はなく70代になると萎縮の始まりが見える傾向があります。
自分の親が以前よりも頑固になったり、気を配ったつもりでいったことに対して怒ったりすることがあればこの前頭前野の影響があるのかもしれません。
それ以外でも睡眠不足、飲酒によって機能が低下して適切な判断ができなくなる、意思の制御が効かなくなるといったこともあります。
睡眠不足で疲れがたまっている時には相手も自分もイライラしやすくなっていることがあるので少し休んだほうがよいかなと間をとってみるのもよいかもしれません。
●攻撃を快楽と感じるドーパミン
やっかいなのは怒ることによる相手の反応、自分自身の感情に対して快楽を感じるという場合があるということです。
自分自身の正義、正当な怒る理由があるというが思考が強く、怒りのスイッチが一気に入り加速することがあります。
そして自分が正しいことをしているという正義感による制裁行動が起こることがあります。
これには再び脳内物質の影響が関係します。
その物質はドーパミンという脳にとっての快楽物質です。
快楽からその行動がやめられなくなり、アルコールや麻薬などの依存症の発症にも関連するものです。
正しいことをしているという承認欲求が快楽となって、それを得るために理性が働かなくなる、攻撃への中毒症状といえます。
「いつも的確に指導をしている○○さん」がいても、本人にとっては怒りをぶつけることで相手に服従させる、今日は○○の気になったところに対して説教をするといった計画を立て自身の権威を強調するようなことが目的になっていることもあるということです。
●怒りを鎮める脳内物質
▼セロトニンで感情のバランスをとる
怒っても相手に対し感じない人もいるのでしょうが、自分自身が怒りっぽくなったなと感じるようであればそれに対抗する脳内物質を味方につけるようにしましょう。
その物質がセロトニンです。
幸せホルモンという呼ばれ方をされているのをご存じの方もいるのではと思います。
セロトニンが低下するとノルアドレナリン、ドーパミンのコントロールが不安定になり、バランスが崩れてしまうことで攻撃性が高まるとされています。
この脳内物質が幸福感に影響を与えることが研究でわかってきました。
セロトニンは自律神経を整えたり、精神を安定させたりする役割があります
そのためこれらの分泌量を増やすことがイライラの解消、ストレスの軽減につながるということが期待できるのです。
★脳内物質のバランスが大切
▼運動でセロトニンを増やそう
ではどのようなことでこれらを増やしていくかです。
セロトニンは規則正しい生活、朝日を浴びて夜更かしを控えて休むといった、健康を維持することの基本となるようなことがひとつです。
そして適度な運動です。
これは他人と競うような運動よりもマイペースでウォーキングすることがよいとされます。
また腹式呼吸が有効です。
呼吸とともにぜひストレッチも運動の一つとしてとりいれてみましょう。
イタ気持ちよい感覚が心身をリラックスさせて緊張感を軽減させてくれる効果が期待できます。
たとえば仕事に行き詰まってイライラしてきたら席を外し、許されるなら別のフロアを一回りしたりや外の空気を吸いにいってみるのはいかがでしょうか。
大きく背伸びでもすれば頭と体を使って固まった筋肉の血流がよくなって一旦リセットすることができるかもしれません。
●まとめ
周りにちょっとしたことで怒るような人がいれば、疲れや睡眠不足でノルアドレナリンが過剰なのか、前頭前野が衰えてきているのか、プライベートでストレスがありセロトニンが不足しているのかなど、その人の脳内の様子を想像してみるのも人間の性質がわかる機会なのかもしれません。
・怒りは動物の本能から生じるもの
・前頭前野が本能をコントロールしている
・セロトニンにより怒りの物質とのバランスが保てる
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ストレッチ専門店ストレチックス
https://stretchex.jp/
本部著書&公式ブログ 監修・執筆
本部研修トレーナー 渡辺 久進
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