胸の筋肉、大胸筋と小胸筋
このブログでは、ストレチックス本部著書「70歳からのゆる~い筋トレ&ストレッチ」執筆者が、本で書いたことの要点や、書ききれなかったことを、お伝えしていきます。
今回のテーマは「胸の筋肉、大胸筋と小胸筋」です。
●大胸筋はどんなときに使われているのか?
▼大胸筋の全体像
大胸筋は名称のとおり、胸の部分につく筋肉です。
胸板、バストアップ、ベンチプレス、身体に厚みがでる、水泳選手は大胸筋が大きいなど、見えた目でわかりやすく、トレーニングジムでも上半身のトレーニングマシンがあるコーナーに大胸筋を鍛えるマシンが設置されています。
この胸にある筋肉がどんなときに使われているのか、特徴や役割をみていきます。
胸の表層の扇状の大きな筋肉で、上側、下側というように2つの部分(3つの場合もある)に分けられます。
大胸筋
起始:鎖骨の内側1/2
胸骨前面、第1~7肋軟骨
腹直筋鞘の前葉
停止:上腕骨の大結節稜
主な機能:肩関節の内転、内旋、屈曲、水平屈曲
呼吸の吸気を助ける
大胸筋は全体の動きとして前方へ腕を伸ばす、押し出す方向への筋力を発揮します。
日常で大胸筋を使っている意識はあまりないかもしれませんが、肩の動きとして考えると様々な場面で機能しています。
ドアに「PUSH」という案内がついていることありますが、前方向に押し出して開ける際は腕が身体の前側に動き、その支点は肩関節です。
これは大胸筋のトレーニングでいうとベンチプレスやチェストプレスというものと近い関節運動になっています。
これらの種目は天井方向や前方に筋力を発揮しています。
脇が開いているなど角度は日常動作と違いがありますが肩関節が動いて上腕骨が身体の前側に移動するとうことは水平屈曲という動きと同様です。
道具がなくてもできる筋力トレーニングではプッシュアップ、腕立て伏せが大胸筋を使います。
足や腹筋への負荷などを考えると全身運動ともいえますが、肩関節は水平屈曲の動作で下から身体を押し上げる動きです。
続けていくと大胸筋のほか、肩の筋肉や腕の筋肉も鍛えることができます。
うつ伏せの体勢から起き上がる時や手をついて支えるときには床に対して身体を押し上げています。
これがプッシュアップで使う大胸筋、肩関節の動きの活用です。
大胸筋が付着している上腕骨は胸骨に向かって動かされます。
また胸の前で手のひらを合わせて合掌、それを押しあうと大胸筋が身体の中心に向かって収縮し力が入るのがわかると思います。
これは大胸筋が水平屈曲方向に力を発揮している状態です。
自分の肩幅くらいの大きな荷物を抱え込もうとすると両腕をしっかり中心側に固定しなければなりませんが、これも大胸筋の力が必要です。
▼同じ筋肉でも働きに違いがある、大胸筋上部による動き
前への力を発揮するほかに、腕を上方向に動かす機能を持っています。
その動きをするのが大胸筋上部としてわけられる部分です。
大胸筋の起始の一つが鎖骨の内側1/2、そこから上腕骨までなので上方向から下方向に付着していま。
停止が起始に向かって距離が近づくと腕が鎖骨方向に動きます。
大胸筋の上部は鎖骨の内側1/2の部分から上腕骨までをつないでいます。
身体の中心側の鎖骨から斜め下方向のラインで腕に向かっています。
大胸筋は肩関節の動きに機能しますが上側の部分は腕を上に持ち上げる働きがあり、これを肩関節の屈曲といいます。
鎖骨の下を触りながら腕を上に持ち上げると筋肉が動いて厚みが出る感じがわかると思います。
筋力トレーニングではインクラインベンチプレス、インクラインダンベルプレス、インクラインダンベルフライといったトレーニングが行われます。
インクラインというのはリクライニングのように身体が斜めに傾いた状態です。
角度をつけることで大胸筋の中央よりも上側の部分に負荷をかけることができます。
腕を持ち上げるのは大胸筋の上部や肩の三角筋も働いています。
▼同じ筋肉でも違いがある、大胸筋の下部はどう動く?
大胸筋の下部は胸骨の下半分、お腹の筋肉である腹直筋からつながり、上腕骨までの部分で、斜め下方向の筋肉の走行になっています。
そのため腕を斜め下、身体の中心側の向かって動かす役割があります。
この動作を内転といいます。
ボディビルで腕を身体の前側で締めるようなポーズがありますが、これは内転の動きを利用して大胸筋の厚みを見せるものです。
スポーツでも肩関節の内転が多く使われます。
いろいろなピッチングフォームがありますが、例えば後ろに腕を回したテイクバックという動作から、斜め下に向かって振り下ろすように投げる動き。
水泳のクロールで腕を前に伸ばし、水を後ろ方向に押す、プッシュを呼ばれる動作。
ゴルフでクラブをバックスイングしたのち、ダウンスイングで身体の回旋とともに下げる動き。
これらは腕が外側方向に開いたものを身体の中心方向に動かす運動です。
大胸筋のほか、背中の広背筋という部分も強力な肩関節の内転のための筋肉です。
そのほかの動きに関連する肩関節の筋肉、胴体を回旋させる筋肉や関節と連携しています。
筋力トレーニングではデクラインベンチプレス、デクラインダンベルフライ、ディップスといったトレーニングがよく行われます。
デクラインというのは仰向けで頭側が下に下がった状態、大胸筋下部が上方向の斜めになったポジションです。
上部は上方向への筋力、下部は下方向への筋力を有します。
腕を肩よりも少し高く上げていた場合、大胸筋が働くとさらに上に持ち上げる力を発揮するのか、下方向にいくのかは本人の意思次第です。
本人が腕を持ち上げようとすれば大胸筋としては肩関節よりも上にある筋繊維のみを短縮させ、本人が腕を下げようとすれば下側の筋繊維のみを働かせます。
▼猫背予防に、柔軟性も意識をしたい大胸筋
大胸筋の機能に肩関節の内旋があります。
これは肩が前側に寄ってしまうのでいわゆる巻き肩、前肩といわれるものになります。
また背中の肩甲骨も前側に動いてしまい、それにより背中が丸まっていきます。
背中が丸まることでバランスをとるために頭が前にも出やすくなります。
デスクワークなど上半身が丸まり腕や肩が前側にあると、筋肉は縮まった状態になりその形がインプットされやすくなります。
筋肉が縮まったりカタくなったりすることで伸びる機能が低下して肩が後に戻りくくなり猫背が定着しやすくなります。
日常で大胸筋を意識して生活しているわけではないと思いますが、腕が肩よりも前側にある状態で作業をします。
だからといって背中側に腕を回して何かをするといったことは身体の使い方として非効率です。
前方向に動くことの頻度が多い分、そこで短縮していく筋肉を伸ばし、広げるというのはアンバランスを防ぐことに大切なことです。
伸ばしてみるとカタくなっていたことがわかる部分だと思います。
大胸筋のストレッチは猫背予防、改善のために行ってみてください。
●小胸筋の機能と大胸筋とのつながり
▼小胸筋の全体像
大胸筋が小さくなったというわけでもなく、機能も大きくことなる筋肉です。
小胸筋は大胸筋と重なっている下の層にあります。
小胸筋
起始:第3~第5肋骨の前面
停止:肩甲骨の烏口突起
主な機能:肩甲骨の外転、下方回旋、下制、肩甲骨が固定されて行場合は肋骨を引き上げる
大胸筋とくらべるとマイナーな筋肉だと思います。
英語で表しても大胸筋は「pectralis majior(ペクトラリス メジャー)」、小胸筋は「pectralis minor(ペクトラリス マイナー)」です。
機能での大きな違いは大胸筋は肩関節の動作に関連し、小胸筋は肩甲骨の動きに関連するということです。
肩甲骨の外転というのは背骨から遠ざかるように、身体の前側に向かって動くことです。
下方回旋、下制というのは肩甲骨が骨盤側に向かって下がるという動きです。
大胸筋の下部が働くと腕が下側に下がっていきますが、その際には肩甲骨と連携してその方向に動きます。
肩甲骨の動きを介して上腕骨の動きにも関連をしています。
付着部からみた機能という面では別々ですが、肩や腕を動かす動作としてはどちらもセットになって動いているということです。
▼小胸筋、カタくなることでの姿勢や肩の不具合に注意
さて、大胸筋はカタくなると巻き肩や猫背への影響がありましが小胸筋はどうでしょうか。
答えとしてはある、もしかしたら大胸筋よりも重視されることもあるかもしれません。
小胸筋は肩甲骨を下制、下方回旋といった下方向への筋力を発揮します。
反対に考えるとこの方向へのカタさが生じると肩甲骨の上方向への動きを制限するということです。
腕を上に持ち上げるときは肩甲骨と肩関節が適切な割合で動き、頭の上まで到達することができます。
これは「肩甲骨上腕リズム」と呼ばれます。
肩甲骨が動きにくくなってしまっても腕を何とか上げようとするので、それを補うのが肩関節です。
肩関節が過剰に働き、そこに関連する筋肉や関節組織が傷んでしまうことがあります。
そして大胸筋でもあった猫背、円背という姿勢への影響です。
小胸筋は肋骨と肩甲骨の烏口突起をつないでいますが、どちらとも身体の前方向にある部分です。
烏口突起が肋骨側に引っ張られると肩甲骨は前側に向かって傾き、肩に覆いかぶさるようになります。
本来、肩甲骨は床に対してほぼ垂直に位置していますが、上から覆いかぶさるようになると首は短くなったように見え、同時に背中も丸みが生じます。
これにより不良姿勢と肩の動きの悪さが伴うことが考えられます。
なかなか小胸筋が伸びているというのは感じにくいですが、大胸筋とともにストレッチをして、動きの制限が強くならないようにしていきましょう。
●まとめ
肩を動かす筋肉として働く大胸筋と小胸筋。
鍛えていけばしっかりとした胸板になりますが、ただカタくなっただけでは肩の動きや不良姿勢になりやすいところでもあります。
これらの筋肉に限ったことでないですがトレーニングもストレッチもバランスよく行いましょう。
・大胸筋は肩の動きに働く筋肉、上側、下側とわかれて機能をする。
・小胸筋は肩甲骨の動きに働く筋肉、肩関節がスムーズに動くためにも重要。
・大胸筋、小胸筋とも猫背や巻き肩などの姿勢にも影響する
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ストレッチ専門店ストレチックス
https://stretchex.jp/
本部著書&公式ブログ 監修・執筆
本部研修トレーナー 渡辺 久進
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